名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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ブログ「天白で有機化学やってます。」 ブログ「天白で有機化学やってます。」

学生フリーライダーといかに闘うか2022/07/20(水)

大学生のみなさん、「ノート見せて」「課題見せて」とタダ乗りしてくる同級生にイラっとしてませんか?

まあ、記事元になったツイート主の「お菓子持ってきてくれるとかでも喜ぶのに」というのもどうかと思います。そこちゃうやろ! いやまあ、学生の感覚としては「そこ」なのかもしれないけど。お互いに課題を分担しあえば、win-winの関係って感覚があるのかもしれない。

私はもちろん教員ですし、大学生の子を持つ親でもあるので、下のような「怒りのコメント」に全面的に共感します。君たち大学に何しに来てるんだよ、という話です。

私はどんな対価があっても見せないかもです…授業受けれなかった理由は色々あるかと思いますが、大した理由もなく授業でないで人の課題写すくらいならお金払って何しに来てんの?大学辞めれば?って言っちゃうかもしれない

そもそも「課題をやる」というのが何のためなのか、ちゃんと認識する必要があります。「課題をやる」のは、大学生にふさわしい知的能力を獲得するための作業です。運動選手がトレーニングをするのと同じです。「トレーニングを他の人に代わりにやってもらって、自分はさぼる」運動選手なんて、想像できませんよね。それ運動選手って言わんやろ。大学生だって同じですよ。「お金払って何しに来てんの?」は本当にその通りです。学費負担者が聞いたらどう思うんでしょうか。

「お互いに課題を分担すればwin-win」というのも、見当違いです。仮に、全部の課題を2人で等分に分担したとしたら、同じ学費を払っているのに、獲得する知的能力は2人とも半分になります。学生本人も負け、学費負担者も負け、コピペレポートを読まされてうんざりする大学教員も負け、誰も勝っていません。

今回この件でネット検索してみると、「学校の『ノート見せて』は有料化にするルールを学校が作りませんか」という主張も見かけました。それはちょっと無理ですが、少なくとも学校側の姿勢として、「『課題見せて』『ノート見せて』はダメです。頼まれてもきっぱり断ってください。」というメッセージを出すことはあってもいいかなと思っています。「本当は嫌だけど、気が弱くて断りきれない」人が、少しでも断りやすくなるかもしれませんからね。

「えー名城大学ってそんなレベルの大学なの?」と思われてしまうかもしれません。いやいや、こういうフリーライダーって、どんなレベルの大学にも一定の割合でいるものです。そして、そういういわゆる「要領のいい人」が、社会に出てもやたら大きな顔をしていたりもします。でも、私はそういう風潮には全力で抵抗していかないといけないと思っています。だって、今の社会でやたら大きな顔をしていて、「大学では何も学ばなかった」ことをまるで手柄話のように語るような人で、自分の所属組織やこの国の将来を真剣に案じて、少しでも良い方向に変えようともがいている人が一人でもいますか? 自分の目先の利益しか考えない人ばかりじゃありませんか? そういう人にデカイ顔をさせちゃいけないと思いませんか?

この国と自分たちの将来のために、学生は「今やるべきことに全力で取り組む」ことを徹底しないといけないのです。しょうもない「学生フリーライダー」とはきっぱりと縁を切るべきです。私たち大学教員はそれを応援します。

「タイパ」と大学での学び2022/06/08(水)

現代の若者は「タイパ」(タイムパフォーマンス)重視だ、とされています。「最短時間で目的にたどり着きたい」ということですね。若者をターゲットとしたビジネスなどでは、「タイパ」重視の行動を前提として、戦略を立てることが主流になってきているそうです(「タイパ時代のマーケティング」日経ビジネス 2022年1月4日〜6日)。「映画を早送りで観る人たち」(稲田豊史著、光文社新書)という本も話題になっています(未読です)。理由についてもいろいろ分析されています。

ここでは、タイパ重視の要因や、その善悪については論じません。大学での学びと「タイパ重視」という考え方は、極めて相性が悪いのだよ、ということを指摘しておきたいと思います。

大学というのは、学問を通して、物事の「普遍性」を追求する場所です。「普遍性」とは、ある主張(自然科学の場合は「法則」と言い換えてもよい)が、どういう適用範囲を持つかを明らかにすることです。どんな主張も、無限に拡大解釈することはできません。必ず、「ここまでは有効だが、ここから先は有効ではない」という範囲が存在します。明確に線引きができない場合であっても、できるだけ客観的な観点から、その線引きを試みるのが、学問を定式化することです。大学の存在意義はそこにあります。

うちのような工学系の学科を選択した人の中には、「専門知識を効率よく学ぶ」ことを目指して入学した人もいるかも知れません。むしろそういう人が大多数かもしれない。また、大学教員の中にも、そういう指導や意識づけをしている人もいるかも知れません。でも、大学というのは、たとえ工学系の学科であっても、それが本質ではない、と私は考えます。専門知識を効率よく学びたいのであれば、専門学校に通うべきです。大学と専門学校は違います。

大学で学ぶというのは、「普遍性」につながる物事の考え方を身につけることです。これがなぜ、「タイパ重視」という考え方と相性が悪いのか。それは、普遍性を獲得するためには、「主張が成り立たない」場合をできるだけ多く知る必要があるからです。これは、「本来の目的と合っていない」現象をあえて探し回る必要がある、ということを意味します。つまり、「無駄な努力」を許容しないといけないのです。「無駄な努力をする時間」に耐え抜く粘り強さを身につけて初めて、学問の入り口に立つことができます。

大学での学びが「タイパ重視」とは対極にあることがわかっていただけたでしょうか。

大学で学ぶ学生のみなさんに、「テストで効率よく点をとろうなんて考えるな」と伝えたいと思います。そんな勉強の仕方では、1年生の前期ぐらいまではごまかせるかもしれませんが、すぐに行き詰まります。ヤマを張るのでなく、「全部をまんべんなく学ぶ」ことを重視してください。どれも浅くて届かなかった場合は、いったん不合格になるかも知れません。けれども、そういう勉強をしていれば、再履修のときにつながります。大学で成長したいのであれば、「タイパ重視」は忘れてください。

新学期始まっています2022/04/29(金)

本学の新学期は4/6スタートだったのですが、最初の2週間は一部を除いてオンライン。まだコロナが完全に収束しない中、履修登録が完了してから教室を割り振るため、このようなシステムになっています。昨年度はオンライン3週間だったのですが、今年度は学務センターの担当者が頑張ってくれて、1週短縮されました。大奮闘の事務方には感謝するほかありません。

最近、作家(社会学者?タレント?)の古市憲寿さんが「大学教員には『緊急事態宣言を出してもらえば講義がリモートになる。その方が楽でいい』という気持ちがあったのではないか」という発言をされていました。これはとんでもない誤解です。突然降って湧いたリモート講義で、多くの大学教員はめちゃくちゃ疲弊しました。学生から見たら「ひどく手抜き」に見えたかもしれませんが、何の準備もなしに、90分×15回の講義を「全く新しい形式で」提供するのは、とてつもなく困難なことです。ものすごい努力をして何とか形にしたのですが、結果として不十分な教育しか提供できなかったことは、無念の極みです。古市さんの周囲には「コロナさまさまです」と発言する方もいらっしゃったそうですが、私はそんな大学教員は見たことがありません。大多数の大学教員は、もっと責任感を持って教育に当たっているということを、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

最初の2回分のオンライン授業については、だいぶこなれてきました。基本的には PowerPoint で作成したスライドにナレーションをつける方式で、動画資料を作成しています。動画が視聴できない人のために、ナレーションを「メモ」でつけた PDF も同時提供しています。動画の再生状況を見ると、1年生(有機化学基礎)はかなり再生回数が多いのですが、2年生(有機化学2)は再生回数が少なくて、受講者の半分ぐらいです。2年生はこのオンライン授業の形式にある程度慣れているので、PDF を読むので十分、と感じている人が多いのかもしれません。

内容の定着率については、先日対面で行った小テストを見る限り、今ひとつかなあという印象です。対面授業が始まると、「定着できてない内容」についての補足が伝えやすくなります。オンラインの時にも文書で伝えてはいるのですが、あまり届いてない感じがするんだよね……文の書き方にもっと工夫が必要なのかもしれません。

日本化学会第102春季年会2022/03/24(木)

日本化学会第102春季年会にオンライン参加しています。毎年恒例の春の学会ですが、3年続けてコロナ感染症の影響を受けています。一昨年は中止、昨年は最初からオンライン開催、そして今年は、当初は通常開催の予定だったのが、1月になってオンライン開催に変更されました。「オンラインもあり得るかな」とみなさん予想していたでしょうから、比較的スムーズに対応できたと思います。

昨日は人工光合成関連の特別シンポジウムを聴講しました。三菱ケミカル(株)の瀬戸山氏の基調講演が非常に迫力ありました。設定されている目標は、太陽エネルギーを使って「グリーン水素」(=再生可能エネルギーのみを用いて製造した水素)を「安価に」製造することです。現在は、水素は化石燃料を原料として作られている(ブルー水素)。これを、まずは「太陽電池+電気分解」で製造した「グリーン水素」に置き換えていく。そして、いずれは直接光分解による「グリーン水素」を目指すというお話でした。水を分解して製造した水素と酸素をどうやって分離するのか、目標とするコストはどの程度なのか、設備は国内がいいのか海外展開が必要なのか、など、様々な視点から具体的な説明がありました。あまり一般向けのメディアで取り上げられているのを見ないのですが、ぜひ取材して広く紹介していただきたいなと思います。

お話の中で、アンモニアのことも出てきました。少し前に一般メディアで「船舶の燃料としてのアンモニア」が話題になっていて、私は「アンモニアなんてエネルギー源として実用性あるんか?」と懐疑的だったのですが、今回のお話を聞いて、どこを目指しているのかがよくわかりました。ただ、アンモニア製造の活性化エネルギーを下げる技術において、大きなブレイクスルーが達成されることが必須かな、という印象も持ちましたが。

私も「人工光合成」を研究テーマとして掲げているのですが、こういう実用化を目指したステージに参加することは現状ではちょっとできそうもありません。学術的な観点から、地道にタネをまく仕事をしていきたいなと思っています。

今日は一転して、化学教育の講演会場を主に聴講しています。中学・高校の先生方や、化学教育を専攻している学生さんたちが、新しい教材開発に取り組んでいる姿は刺激的です。本当は「科学教育学会」(かな?)という専門の学会があるようですが、化学会の一部としてこのセッションが存在していることにも意味はあると思うんですね。今回は、一番聞きたかった(議論もしたかった)講演が、ちょうどヤボ用と重なってしまって、そこだけ退席せざるを得なかったのが残念です。

ネット授業の同時視聴が失格にされた件2022/02/22(火)

早稲田大学の商学部で、複数の講義のネット授業を同時に視聴していた学生が失格になった、として話題になっています。同じ時間に複数の講義を受講することは、どのような大学でも一切認められていませんから、これは当然の措置でしょう。担当教員からの通知文として報道されている通り、大学での単位認定は、「講義の受講と自習をそれぞれ定められた時間以上行う」ことが前提になっていますから、この前提を満たしていない学生は当然失格になります。これは、履修登録の際に学生に周知されているはずです。

失格は当然という立場に立った上で、教員側がこの件から受け取る教訓はあるのか?という話をしたいと思います。

当該学生は、この講義については「2つ同時に流して見る程度で十分」と認識していたわけです。大学の講義がそのような内容で良いのか?という問題があります。私立大学文系の学費は年間120万円ぐらいです。1年間に受講できる単位数は多くて50単位程度で、講義科目はたいてい1科目2単位ですから、1科目4.8万円の計算になります。1科目は15回の講義を含むので、講義1回分が3.2千円。それだけの価値のあるものを、提供できているのか?ということになります。「2つ同時に流して見る程度で十分」な動画の価値って、どれぐらいでしょう。500円もないんじゃないでしょうか。(自分で特大のブーメランを投げていることは承知で書いています。)

もちろん、「豚に真珠」ということわざがある通り、受け取る側に価値がわからない、という場合もあります。学ぶ内容なんかどうでもよくて、単に「○○大学に通っている」というステータスだけがほしい人だっているでしょう。そういう人は、1科目2単位5万円を124単位分払うだけで、それ以上のことはなるべく省いて、要領よく「大卒」のラベルを得ることを目指しているのでしょう。

しかし、大学は本来そういう場所であってはいけないはずです。「大卒」のラベル、より正確には「学士号」を授与することを国から許可された機関として(国立大学はもちろん、公立・私立大学も文部科学省の認可を受けています)、大学は「価値ある学び」を提供する責任があります。コロナ禍のオンライン講義で「価値ある学び」を提供するのは、非常に難しいことです。だけども、それはやっていかないといけないことです。「ながら視聴」や「早送り視聴」をされるような教材じゃなくて、「わかるまで繰り返し再生してもらえる」教材を目指さないといけません。学生がそれを活用するかどうかは、また別の問題です。

現状、自分の講義はその域には遠く及んでいません。将来そこに到達できるかというと、あまり自信は持てません。でもやっぱり努力はしないといけないし、少しずつでも進んでいきたいと思います。

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