名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
トップ 教育 研究 プロフィール アクセス リンク キャラクター ブログ
トップ  >  ブログ  >  「タイパ」と大学での学び

 

ブログ「天白で有機化学やってます。」 ブログ「天白で有機化学やってます。」
< 新学期始まっています | ブログトップ | 学生フリーライダーといかに闘うか >

「タイパ」と大学での学び2022/06/08(水)

現代の若者は「タイパ」(タイムパフォーマンス)重視だ、とされています。「最短時間で目的にたどり着きたい」ということですね。若者をターゲットとしたビジネスなどでは、「タイパ」重視の行動を前提として、戦略を立てることが主流になってきているそうです(「タイパ時代のマーケティング」日経ビジネス 2022年1月4日〜6日)。「映画を早送りで観る人たち」(稲田豊史著、光文社新書)という本も話題になっています(未読です)。理由についてもいろいろ分析されています。

ここでは、タイパ重視の要因や、その善悪については論じません。大学での学びと「タイパ重視」という考え方は、極めて相性が悪いのだよ、ということを指摘しておきたいと思います。

大学というのは、学問を通して、物事の「普遍性」を追求する場所です。「普遍性」とは、ある主張(自然科学の場合は「法則」と言い換えてもよい)が、どういう適用範囲を持つかを明らかにすることです。どんな主張も、無限に拡大解釈することはできません。必ず、「ここまでは有効だが、ここから先は有効ではない」という範囲が存在します。明確に線引きができない場合であっても、できるだけ客観的な観点から、その線引きを試みるのが、学問を定式化することです。大学の存在意義はそこにあります。

うちのような工学系の学科を選択した人の中には、「専門知識を効率よく学ぶ」ことを目指して入学した人もいるかも知れません。むしろそういう人が大多数かもしれない。また、大学教員の中にも、そういう指導や意識づけをしている人もいるかも知れません。でも、大学というのは、たとえ工学系の学科であっても、それが本質ではない、と私は考えます。専門知識を効率よく学びたいのであれば、専門学校に通うべきです。大学と専門学校は違います。

大学で学ぶというのは、「普遍性」につながる物事の考え方を身につけることです。これがなぜ、「タイパ重視」という考え方と相性が悪いのか。それは、普遍性を獲得するためには、「主張が成り立たない」場合をできるだけ多く知る必要があるからです。これは、「本来の目的と合っていない」現象をあえて探し回る必要がある、ということを意味します。つまり、「無駄な努力」を許容しないといけないのです。「無駄な努力をする時間」に耐え抜く粘り強さを身につけて初めて、学問の入り口に立つことができます。

大学での学びが「タイパ重視」とは対極にあることがわかっていただけたでしょうか。

大学で学ぶ学生のみなさんに、「テストで効率よく点をとろうなんて考えるな」と伝えたいと思います。そんな勉強の仕方では、1年生の前期ぐらいまではごまかせるかもしれませんが、すぐに行き詰まります。ヤマを張るのでなく、「全部をまんべんなく学ぶ」ことを重視してください。どれも浅くて届かなかった場合は、いったん不合格になるかも知れません。けれども、そういう勉強をしていれば、再履修のときにつながります。大学で成長したいのであれば、「タイパ重視」は忘れてください。

< 新学期始まっています | ブログトップ | 学生フリーライダーといかに闘うか >