名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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ピロールの合成2015/10/20(火)

以前にポルフィリンのことを書きました。ポルフィリンを合成する時は、ピロールを原料として使います。

上の反応式では、ピロールには置換基が何もついていませんが、置換基がついたポルフィリンが欲しいこともあります。その場合は、置換基がついたピロールを使うことになります。

さて、無置換のピロールは市販されています。ところが、置換基がついたピロールは、市販されていたとしても、非常に高価なのです。そこで、昔のポルフィリン系研究室では、新人はとにかくピロール合成から入る、というのが普通のスタイルでした。私が卒業研究で入った研究室でもそうで、最初の課題はピロールをバケツ一杯作ることでした。ちなみに最近は、無置換ピロールを使って研究するテーマが多いので、このスタイルは一般的ではないと思います。

「バケツ一杯作る」という実験は、下の図のような具合です。だいたいどの実験室にも「ピロール合成用のタオル」というのがあって、還元に使った亜鉛粉末をろ過するのに使っていました。バケツの中で固化したピロールを、直径 20 cm ぐらいのブフナーろうとでろ過するのです。反応溶媒は酢酸なので、バケルに注ぐ時は部屋中に酢酸の臭いが充満して、まあ大変でしたね。みんなあんまり気にせずやってましたが。

さて、私がもう新人ではなくなった頃に、新しく助教授の先生が着任して来られました。この先生はニトロ化合物がご専門だったこともあって、別の方法で置換ピロールを合成する実験が始まりました。それが「バートン・ザードのピロール合成」です。ニトロアルケンと活性メチレンを持つイソニトリルの環化付加反応でピロールを合成します。この合成法は、いろいろな置換基を持ったピロールが合成できる、優れた方法です。

問題は、この「イソシアノ酢酸エチル」という化合物です。これがとんでもなく臭い。私が今まで扱った中ではダントツで一番臭い化合物でした。これも買うとかなり高価なので、自分で合成します。反応自体は難しくはありません。イソニトリル合成の常法で、ホルムアミドをオキシ塩化リンと塩基で脱水します。

まあしかし、実際やってみるとなかなか大変です。まず、反応の途中で、リン酸のかさ高い塩がもこもことフラスコの中で盛り上がってきます。かなり強く発熱するのですが、イソシアノ酢酸エチルは塩基性条件で加熱すると分解するので、ちゃんと氷冷しておかないといけません。氷冷が甘いと、リン酸塩のもこもこがフラスコからこぼれ出して、そこら中に悪臭をまき散らし始めます。また、後処理でも大量のもこもこを水にとかしながら大きな分液ろうとを振る、という大変な作業が待っています。さらに、最後に蒸留までしないといけません。

あるとき、昼過ぎに合成を始めて、夜中の3時までかかってしまったことがありました。

有機合成の研究室だったらそんなの普通だろ、という人もいるかも知れませんが、私の指導教員は、「あまり遅くまで実験するな」という方針だったので、たぶんこれは私の学生時代の最長不倒記録だと思います。あまり自慢できることではないので、実験はちゃんと朝からやりましょう。

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