名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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分子軌道と Natural Bond Orbitals2014/09/18(木)

有機化学では、電子の流れを理解することがとても重要です。「電子の流れ」を支配しているのは、もちろん量子力学です。ですから、有機化学を学ぶにあたって、分子の中の電子の状態、つまり分子軌道を理解することは、重要な意味を持ちます。

ところが、分子軌道というのはどうも有機化学の考え方とは相性がよくないのですね。たとえば、メタンの分子軌道はこんな風になります。

sp3混成軌道はどこいったんだ? 4本の等価なC-H結合ができるんじゃなかったのか? と苦情の声が聞こえてきます。なぜこういうことになるかというと、エネルギーが等しい軌道同士の間では量子力学的な混合が起きるからです。混合が起きた結果、エネルギーが少し低い軌道1つと少し高い軌道3つに分かれ、そこに電子が2個ずつ入る、という状態に落ち着きます。実際、メタン分子の電子エネルギーを光電子分光法で測定するとこの通りの結果になるようです(原論文を見てないのでまた聞きですが)。

ですから、この図は確かにメタン分子の本当の姿を表してはいるのですが、やっぱり有機化学者としては、「このC–Hσ結合が切れて…」とかそういう議論がしたいわけです。有機化学では、普通の共有結合では電子が2つの原子(だけ)に共有されている、というのが基本的な認識で、そこから非局在化の効果などを加えて精密化していきます。量子化学でもそういうアプローチがとれないものでしょうか。いわゆる「原子価結合法」がそれなのですが、少し原子数が増えると式が急激に複雑化するし、そもそも数値計算をどうやったらいいのか見当もつきません。

そういうわけで、最近 Natural Bond Orbital の手法を導入してみました。この方法は、Wisconsin 大学の Weinhold 教授のグループが開発されたものです。普通の量子化学計算で得た波動関数を元にして、「簡約化一次密度行列」というものを作り、それを変形することで一原子上、あるいは二原子間に局在化した電子密度を求めます。

メタンの natural bond orbitals はこのようになります。sp3 混成軌道が元になっていることがよくわかります。また、図には示していませんが、「一原子上」の軌道を求めれば混成軌道そのものも見ることができます。

反結合性軌道もちゃんと見えます。

一応使えそうな感じなので、今期から有機化学の講義の図を作るのに使っています。初級の有機化学で出てくる電子構造や反応が全部これできれいに説明できるかどうかはまだ試せていません。また、natural bond orbital の理論的背景もあまりちゃんとは理解できてないので、独りよがりな納得をしているかも知れない。もう少し勉強が必要です。

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