医療の安全に関する研究会
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「医療の安全に関する研究会」ニュース
Newsletter No.33
2013.11.1 発行
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巻頭言
医療の安全に関する研究会
理事長 島田康弘

皆様にはますますお元気で活躍中のこととお喜び申し上げます。第18回研究大会に際して巻頭言を申し上げます。
 第18回研究大会の大会長は名城大学大学院都市情報学研究科 保健医療情報学の主任教授をなさっておられる酒井順哉さんです。酒井さんは医学医療の安全に携わってこられました。今回は自動体外式除細動器(AED)にしぼってこれを安全の面からどのように活用していくかについて考えることを中心に計画されました。場所は名城大学天白キャンパスにある名城ホールです。
 大会のテーマは「AEDは有効に活用できているか」で副題を「安全利用のために必要な普及啓発活動」とされています。AEDは一般の方々が利用できるようになって久しいのですが問題点が多いようです。大会長講演として「AED案内表示の現状とその問題点」を語られます。そして講演としてまず名古屋市消防局の金子洋さんに「名古屋市の心停止の現状と医療経済からみた AEDの効果」を話していただき、次に市立伊丹病院事業管理者で、大阪府医療機器安全性確保対策検討委員会会長でおられる中田精三さんに「大阪府におけるAED使用における現状と課題」について話していただきます。
 昼食をはさんで天白消防署の井上幸司さんらによる「胸骨圧迫(心臓マッサージ)およびAED利用の体験講習」が行われます。聴衆の皆様の積極的な参加をお願いします。続いて第9回大会から実施しております医療の安全に関する川柳募集の優秀作品の紹介と表彰が行われます。今年は「歯科医療の安全」を取り上げました。川柳についてはじめからずっとみていただいているNHK学園の大木俊秀さんに、優秀作品のご紹介と楽しいご講評をお聞かせいただきます。
 それからパネルディスカッション「AEDは有効に活用できているか」が3時間にわたって行われます。まず6つの演題について9人の演者による発表が行われます。医療を良くする会代表世話人の吉田嘉宏さんからは、「一般の市民の立場で」発表していただきます。愛知県武道館の小出克介さんには「公共施設を管理する立場から」発表していただきます。名古屋市交通局の半田匠さんからは「駅構内AED設置の考え方」を発表していただきます。AEDを作っておられる業者の方々からは3社が代表としてでられ「弊社のAED利用の考え方」について発表していただきます。愛知県防災局消防保安課の小野坂潔さんからは「あいち AED マップを導入して」について発表していただきます。そして最後には藤田保健衛生大学の学生2人、森川慶一さんと加古寿志さんに「学生の立場から」を発表していただきます。その後、総合討論を行います。何か提言できるものができないかと期待しております。どうかフロアーの皆様の積極的なご意見をお聞かせください。
 皆様と11月30日に会場でお会いできるのを楽しみにしております。
 


 
医療の安全に関する研究会
第18回研究大会
 
AEDは有効に活用できているか
~安全利用のために必要な普及啓発活動~


大会長 酒井順哉
(名城大学大学院都市情報学研究科保健医療情報学 主任教授)

 
09:30 受付
     総合司会 増田聖子(増田・横山法律事務所 弁護士)
 
10:00 開会の挨拶>
     島田康弘(医療の安全に関する研究会 理事長、名古屋大学 名誉教授)
 
10:05 講演1:「名古屋市の心停止の現状と医療経済からみたAEDの効果」
     金子 洋(厚生労働科学研究 丸川研究班研究協力者、名古屋市消防局)
     座長 松葉和久(愛知きわみ看護短期大学 客員教授)
10:50 講演2:「大阪府におけるAED使用における現状と課題」
      中田精三(市立伊丹病院 事業管理者、
          大阪府医療機器安全性確保対策検討委員会 会長)
     座長 池田卓也(医療法人淀井病院 顧問)
 
11:35 大会長講演「AED案内表示の現状とその問題点」
      酒井順哉(名城大学大学院都市情報学研究科 保健医療情報学 主任教授
      座長 北野達也(星城大学大学院健康支援学研究科 医療安全管理学講座 教授)
 
12:20 昼食休憩 (大学構内の3つの食堂がご利用できます
 
13:00 胸骨圧迫(心臓マッサージ)およびAED利用の体験講習
     講習協力:井上幸司(天白消防署 消防第二課 救急係長)
     アシスタント:藤田保健衛生大学 学生 BLSインストラクター 15名
 
13:40 「医療の安全に関する川柳」 講評と表彰
      大木俊秀(NHK学園・川柳講座 編集主幹)
 
14:00 パネルディスカッション 「AEDは有効に活用できているか」
     司会 加藤良夫(南山大学法科大学院 教授、弁護士)
        齋藤悦子(中京学院大学看護学部 教授)
    1)「一般市民の立場で」
        吉田嘉宏(医療を良くする会 代表世話人)
    2)「公共施設を管理する立場から」
        加藤仁也(愛知県武道館 副館長)
    3)「駅構内AED設置の考え方」
        半田 匠(名古屋市交通局 営業本部 電車部 運輸課主査)
    4)「弊社のAED利用の考え方」
        松尾英樹(フィジオコントロールジャパン)
        松田比呂志(日本光電工業)
        小川樹美(フィリップスエレクトロニクスジャパン)
     5)「あいちAEDマップを導入して」
        小野坂潔(愛知県防災局消防保安課主幹救急・救助・防災航空)
     6)「学生の立場から」
        森川慶一、加古寿志(藤田保健衛生大学 学生)
 
16:00 総合討論 (パネリストに講演1・講演2の講師を加えて)
 
17:00 次期大会長挨拶 堤 寛(藤田保健衛生大学医学部 第一病理学 教授)
 
17:10 閉会の挨拶 大会長 酒井順哉

 

講演1
名古屋市の心停止の現状と医療経済からみた AED の効果

厚生労働科学研究 丸川研究班研究協力者 名古屋市消防局
金子  洋

 
【はじめに】
 市中に設置された AED の総数は平成23年末の時点で累計約30万台に達し、心停止患者に対して市民が電気ショック(public access defibrillation : PAD)を行った症例は累計で5,387件となった。空港やホテルなどの施設には AED の設置とともに119番通報、心肺蘇生法の実施や AED を用いた除細動を組織的に行う AED プログラムが必要とされている。これらの施設で AED 設置を決定する場合には、当該施設の心停止の発生確率を考慮する必要がある。また経済的価値から施設の AED 導入の効果を評価することは新たに AED を導入する施設にとって参考になると考えた。
 本発表では名古屋市での施設分類別の心停止の発生確率と経済的価値からみた AED の効果を検証
した結果を報告する。
 
【方法】
 名古屋市は、人口226万人で年間約2,000例の院外心停止傷病者が医療機関へ搬送される。平成15年から平成22年の間、名古屋市消防局が医療機関へ搬送した院外心停止傷病者のデータ(名古屋市蘇生統計)を用い、心停止発生場所を36の施設カテゴリーに区分した。名古屋市統計年鑑、企業決算資料、厚生労働省生活衛生関係営業実態調査報告などから施設分類別の従業員数、来訪者数、居住者数を集計し、施設分類別に1億人あたりの心停止発生数を算出した。
 経済的価値からみた施設の AED 導入の評価は、AED を設置するに足る施設規模の目安として、AED を設置することによって獲得される経済的価値が、AED の維持・管理等に要する費用を上回るために必要な施設利用者数(number needed to visit: NNV)を施設分類ごとに算出した。電気ショック適応心停止傷病者の期待余命と効用値から質調整生存年(quality-adjusted life year: QALY)を施設分類別に算出した。電気ショック適応心停止患者が PAD を受けたと仮定した場合に得られる QALY を推定するため、全国の救急蘇生統計(総務省消防庁)に登録された3,942名の PAD 症例から、電気ショック適応心停止患者と背景因子が完全一致する症例を抽出し、その QALY を施設分類別に算出した。実際の QALY と、PAD が受けられたと仮定した場合の推定QALY との差を PAD による増分 QALY とした。
 
【結果】
 12,063症例のうち3,164症例が公共施設における心停止であった。1億人あたりの電気ショック適応傷病者の多かった施設は、高齢者施設(693)、競輪場・競馬場(404)、パチンコ店(175)、スポーツ施設(152)であった。駅(4)では電気ショック適応傷病者は少なかった。
 当研究班が算出した増分 QALY の経済効果を約968万円 /QALY で換算した場合、AED がその維持・管理等に要する費用以上の経済的価値を生み出すために必要な施設利用者数(1日当たり)は、駅:3,275人、スポーツセンター:40人、パチンコ店:100人、工場:657人、飲食店5,370人、高齢者施設:22人、であった。
 
【考察】
 ショック適応心停止の発生確率は施設分類によって大きく異なった。高齢者施設での発生確率が群を抜いて高いのは、利用者が高齢者に偏っていることと平均滞在時間(事実上24時間)が長いことによると思われる。パチンコ店での発生確率が高いのは喫煙者が多いなどの利用者属性の他に、平均滞在時間が比較的長い、精神的な緊張あるいは興奮を伴うなどの影響があるのかもしれない。スポーツセンターの発生確率が比較的高いのは、身体的活動度の高さを反映しているのであろう。駅での発生確率が最も低かったのは、利用者の平均滞在時間が他の施設分類と比較して短いためであると思われる。
 PAD が行われることによって期待される増分 QALY にも施設分類ごとの差が認められた。スポーツセンターにおける増分 QALY が比較的大きかったのは、PAD の有無によって1ヵ月後の転帰が大きく異なることが直接的な要因と思われるが、その原因は不明である。スポーツセンターではショック適応心停止の発生確率が高いことと相俟って、NNV としては高齢者施設の22に次いで低い値となった。利用者が高齢者に限定される高齢者施設では PAD によって期待される増分 QALYが小さかった。しかし、高齢者施設ではショック適応心停止の発生確率がきわめて高いため、そのNNV は6施設分類中で最小であった。工場や飲食店での増分 QALY が小さいのは、PAD が行われなかった場合でも1ヵ月後の転帰が CPC-1であった患者が比較的多いことが直接の要因であると思われるが、その原因は不明である。
 本研究は平成24年度厚生労働科学研究「循環器疾患等の救命率向上に資する効果的な救急蘇生
法の普及啓発に関する研究」の一部である。
 


 
講演2
大阪府における AED 使用における現状と課題
 
中田精三*)、1) 、八重津智彦*、2) 、木野昌也*、3)
増本忠次*、4) 、高岡由美*、2) 、寒川裕士*)、2)
 
*)大阪府医療機器安全性確保対策検討委員会、
1)市立伊丹病院、2) 大阪府健康医療部薬務課、
3)大阪府病院協会、4)大阪医療機器協会
 
 平成17年4月施行の薬事法改正により医療機器に係る安全対策の抜本的な見直しが図られたことを受け、大阪府では、行政として医療機器の安全性確保に取り組むべく、医療関係者、医療機器製造販売業者等で構成する医療機器安全性確保検討委員会を設置した。本委員会では医療機器の取り扱いを把握するため、病院等の医療関係機関や医療機器製造販売業者等の協力を得て、各種アンケート調査を実施し、事故の原因となり得る問題点の整理・分析を行ってきた。
 
【背景】
 急速な自動体外式除細動器 (AED) の普及により、一般人によりAEDが使用されるケースも増えてきており、総務省消防庁の「救急蘇生統計(2008年)」によると、一般人による使用が可能となってすぐの平成17年の『心原性の心肺停止症例に対する一般市民による除細動実施件数』は「46件」であったのに対し、平成20年では「429件」と着実に増加している。また、同統計によると、『一般市民による除細動を受けた場合の社会復帰率』は『除細動を受けていない場合(適応でない症例を含む)』の4.5倍となっており、AEDの高い有用性が示されている。
 このように高い有用性がある AED ではあるが、その取扱いは保守点検等、その管理に専門的な知識及び技能が必要とされている「特定保守管理医療機器」(薬事法)であり、救急時の使用において有用性を発揮するためには、日常点検、消耗品の適正な管理が必要となる。その適正な保守管理方法としては、平成21年4月16日付厚生労働省医政局長、医薬食品局長通知『自動体外式除細動器 (AED) の適正な管理等の実施について』(以下、「厚生労働省通知」という。)の通知の中で、行政機関、AED製造販売業者、AED設置者それぞれに対して、取組むべき事項が示された。
 また、平成19年3月の大阪府薬事審議会において、「自動体外式除細動器 (AED)」の安全性確保対策として、「 賃貸業者あるいは購入者などの設置者は、取り扱っている機器の定期的な保守点検など適正な管理が求められる。」 との答申がだされた。
 
【目的】
 平成16年7月より、一般の非医療従事者による AED の使用が可能となったことから、近年は大阪府内の様々な公共機関、企業等の施設でその設置が進んでいる。その一方、AED は、薬事法にて『特定保守管理医療機器』と定義され、保守点検等、その管理に専門的な知識及び技能が必要とされている。このような状況を踏まえ、今回は平成21年に大阪府内 AED 設置場所での AED 保守管理の現状についての把握を目的としてアンケート調査を行い、その調査結果を医療関係者等に周知するために講習会を実施することにした。
 
【方法】
 公共の場所に設置されているAEDについて、保守・管理状況等の把握を目的としてアンケート調査を行った。同調査の実施にあたっては「厚生労働省通知」において示された保守・管理方法について「同通知の周知状況」、「設置者に求められている保守、管理事項の実施状況」についても、併せて調査することとした。
 調査対象施設の抽出については、『大阪府 AED マップ』、『財団法人日本救急医療財団・AED設置場所検索』の二つのAEDマップにより、調査対象施設を16設置種別に分類し、1,000件を抽出し、無記名方式の郵送によるアンケート調査を行い、回収率は61.9%であった。この調査結果から、AED使用における現状と課題、問題点の整理・分析を行い、そこから導き出された問題点を報告書にまとめ、医療関係者間で共有化するため、講習会を実施した。
 
【結果と考察】
 厚生労働省通知の中で、AED設置者に求められている事項には、
①AEDのインジケータの表示の確認、
②消耗品の交換時期を『表示ラベル』により確認し適切に交換、
③AEDの保守契約による管理等の委託、
④AEDの設置情報の登録について、
がある。
 AED製造販売業者に求められている事項には、
①消耗品の有効期限を記載する『表示ラベル』の作成、
②適切な管理のための情報の提供、
③AED設置場所登録の推進、
④添付文書の改訂の実施について、
がある。
 関係各省庁に求められている事項には、
①各庁舎等で管理しているAEDの適正な管理等の徹底、
②所管する関連団体等が設置しているAEDの適正な管理がされるよう通知を周知、
③AEDの使用に関する講習会において、保守管理の重要性について周知すること、
があげられている。
 上記事項の各項目の取組みについては、実施率がまだ低いものが見受けられた。そのため行政側より本調査結果の公表を通じて、各設置者に対してAEDの保守管理の必要性を、より一層訴えていくことが必要であると考えられた。
 また、今回の調査では、厚生労働省通知の中で求められている前記事項以外で、AEDの安全使用に関する取組みについても併せて調査したが、その結果では AED使用経験に関して、「職員・従業員、全員が一度は受講したことがある」の割合が『AED使用無し』の施設と比較して『AED使用有り』の方が高くなっていた。「AED 使用に関する講習会」の重要性を認識した結果となっているが、適正な使用が行われ、救命と言う AEDの持つ本来の役割をより一層発揮するためには、事前の使用講習を受講する重要性を継続して設置者等に伝えていく必要があると考えられた。
 なお、回答の得られた全619施設のうち6.5%の施設でAEDの使用経験があると報告しており、そのうち1回使用が26施設、複数回使用が14施設に認められ、公共交通や介護・福祉施設での使用頻度が高くなっていた。
 

 
大会長講演
AED案内表示の現状とその問題点
 
酒井 順哉
名城大学大学院都市情報学研究科保健医療情報学 主任教授
 
1.はじめに
 アメリカ心臓協会(AHA)と国際蘇生連絡協議会(ILCOR)が心肺蘇生法の標準的方法に関して十分な統計手法を使い科学的な根拠をもって作成された「心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガイドライン2000」により、市民レベルでの自動体外式除細動器(AED)使用の正当性が認められたことを受け、我が国でも2004年7月に厚生労働省が「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会報告書」を策定し、救命の現場に居合わせた一般市民によるAEDの使用を容認したことから、公共施設や民間企業でのAED設置が急速に進展した。
 この報告書の「第4章:国民の理解の促進と広く社会に普及するための対応」には、自動体外式除細動器への国民のアクセスの向上のための関係者の対応方法として、「不特定多数が利用する施設等で、設置者が、非医療従事者が活用できるよう自動体外式除細動器を備え付けている場合には、当該施設等に自動体外式除細動器が配備されていること及びその使用方法を明示することが期待される」との記載とともに、施設の入口にAEDマークを表示したり、地図や標識によって自動体外式除細動器の存在場所を明示することや、AEDの使用方法を掲示することが示されたが、具体的な表示の仕様について提示されておらず、AEDが設置されているのに、AEDを探せず十分に活用できない状況が懸念された。
 
2.AED案内表示の実態調査
 このような中、酒井らは愛知県から Web で公開している「あいちAEDマップ」に掲載されている名古屋市内の公共施設等373施設のAED設置管理者を対象に、AED案内表示の設置場所やAEDボックスまでの距離とともに AED設置管理者の意識と AED 使用の有無について2010年にアンケート調査を実施した。その結果、257施設(回収率:69%)から有効回答があり、案内表示には AEDが施設にあることを示す「AED設置表示」と、AEDボックスの死角や遠方から AEDボックスの距離や方向がわかる「AED誘導表示」や施設平面図に AEDの位置が示された「AEDマップ」の3種類に大別された。
 そして、AEDの案内表示の8割は AEDの製造販売業者が提供する「ピクトグラム」と「AED文字表記」の組み合わせによる「AED設置表示(いわゆるAEDステッカー)」であり、その大部分が AEDボックスから10m 未満の距離に集中していた。一方、AEDボックスから10m 以上離れた案内表示の6割は AEDボックスを目視できないことから「AED 誘導表示」にあたるため、「ピクトグラム」と「AED文字表記」に加え、「距離」、「方向」または「誘導地図」が付加されるべきであるが、その条件を満たす「AED誘導表示」は1割にも満たなかったことがわかった1)2) 。
 また、2008年~2010年までの3年間に名古屋市内(住宅などの居住施設は除く)で発生した心停止症例367件を対象に、2011年に名古屋市消防局へ心停止発生場所(住所)と発生年の情報公開を求め、前回アンケート調査をAEDが使われた施設の住所と位置関係を分析したところ、心停止発生が一致したのは16施設36件(9.8%)、心停止発生場所がアンケート調査施設と200m以内であったのは70施設87件(23.7%)であったが、近くに AED が設置されていても施設周辺からのAED使用はほとんどなく、119番通報で駆け付けた消防隊の救命救急士が持参した AEDを使用するケースがほとんどで、心停止から使用までに多くの時間が過ぎているものと推測された3) 。
 このことから、AED設置施設では従業員等があらかじめ AEDボックスの設置位置を把握しており、施設内での顧客の心停止には従業員対応で有用であるが、施設外周辺での利用には適切なAED誘導表示がないと近くに AEDがあっても役立たないことが明らかとなった。
 
3.AED 誘導表示ガイドの策定にむけた研究会活動
 以上、調査結果から、公共施設や民間施設内はもちろんその施設周辺でも AED ボックスを迅速かつ容易に見つけ出し、できるだけ多く心停止に対応するためには、「自動体外式除細動器(AED)誘導表示ガイド」(以下、「AED 誘導表示ガイド」と略す)を策定し、広く AED 製造販売業者や公共施設や民間施設の AED 設置管理者にガイド内容を公表することが必要と考え、医療の安全に関する研究会・AED 誘導設置のあり方ガイド研究班で2012年にその原案を作成した。
 このガイドの詳細は医療の安全に関する研究会ホームページ(以下の URL)で公開されている。
 URL:http://www.urban.meijo-u.ac.jp/zsakai/iryou-anzen/book/AED_Guide2012.pdf
 以下に、AED 誘導設置のあり方ガイド研究班が提案する AED 誘導表示ガイドのあり方や業種別 AED 誘導表示における特記すべき補足概要を示す。
 
4.AED 誘導表示のあり方
 ガイドでは AED案内表示の使われ方から、「AED設置表示」、「AED誘導表示」、「案内Map」に大別し、従来の多くの施設で用いられている「AED設置表示」よりも「AED誘導表示」や「案内Map」で表示することを推奨する。
 
(1)AED設置表示
 AEDボックスが施設内に存在することを示すため、「AEDピクトグラム」と「AED文字」に限定した表示方法であり、施設内の壁や入口ドアに貼付する「AEDステッカー」や、施設廊下などで視界が限定される個所に用いられる「AEDパネル」が該当する。
 現在、AEDの製造販売業者が製品に添付して提供する AED ステッカーの多くがこれに該当し、AEDボックスに貼付するには十分であるが、AED ボックスから離れた施設入口や廊下に表示すると、設置していることしかわからずAED使用には役立たない。
 このガイドでは、従来の「AED設置表示」は誘導目的には不十分と考え、以下の説明では、「AED誘導表示」、「案内Map」に言及する。なお、すでに製造販売業者から提供されている「AED設置表示」であっても、「矢印」、「距離」、「設置施設名称」の追加貼付で、「AED誘導表示」として活用することも期待できる。なお、AEDボックスに近接した表示方法については従来の「AED設置表示」の仕様で構わない。
 
(2)AED誘導表示
 AEDボックスを施設内はもちろん施設外周辺からも AEDボックスの設置位置を顧客や通行人に明確にわかるようにするためのものであり、「AEDピクトグラム」と「AED文字」に加えて、方向を示す「矢印」、「距離」、「設置施設名称」の表記、AED利用が時間的に限定される場合には「曜日・利用時間」の表記を指す必要がある。これにより、施設従業員が見つからない場合や施設周辺で発生した心停止に対しても迅速に AEDボックスを探し出し、早期対応を可能にするものである。(3)案内MAP表示 広いエリアを持つ施設に有用な方法であり、従来の案内MAPパネルに「AEDピクトグラム」を表示する方法を指す。既に「案内MAPパネル」や「避難誘導パネル」が設置されている施設においては、簡単に誘導表示の効果を期待できるものであるが、AED ボックスまでの距離が長い場合、その動線ルートの途中に「AED誘導表示」の併用表示が望ましい。
 
5.AED誘導表示の方法
(1)「AED誘導表示」の場合、「AED設置表示」にある「AEDピクトグラム」、「AED文字」に加えて、「矢印」、「距離」、「設置施設名称」を追加する必要がある。なお、AED利用が時間的に限定される場合には「曜日・利用時間」の表記も必要である(図1)。
(2)「案内MAP表示」の場合、「AEDピクトグラム」のシールをMAPに貼付し、施設平面全体におけるAEDボックスの位置関係を明確にする(図2)。
 
 
6.「AED誘導表示」の設置場所(AEDボックスとの距離を含め)
 心停止が発生する場所は、施設内だけでなく、施設周辺でも発生するため、心肺蘇生の時間制約から AEDボックスから最大150m以内の範囲に「AED誘導表示」ステッカーやパネルを設置することを推奨する。その根拠は、心肺蘇生(CPR:Cardio Pulmonary Resuscitation)未実施の75%救命率の限界時間(近くに心肺蘇生を手助けするスタッフがおらず、施設利用者や一般通行人などが単独でAEDを探し、使用するまでに許される時間)は、ドリンカーの生存曲線から3分以内であることから、心停止の発生した現場にAEDボックスを持ち帰えられる片道有効距離限界を150m(早歩き6km/h で3分)と算定した。
 この推奨は、施設周辺での対応だけでなく、施設内でも同様のことを推奨し、AEDボックスまでの動線に死角が発生する場合は、複数の「AED誘導表示」の設置と視認性を上げる工夫が求められる。もちろん、AEDボックスの視認性を明瞭にするためには、AEDボックスには「AED設置表示」ステッカーを貼付し、設置場所がすぐにわかるように表示することも必要である。
 
7.「AED 誘導表示」設置の高さ、大きさ、向き
 「AED 誘導表示」の表示項目が十分でも、設置場所に応じて、遠方や混雑時の視認性に対応した工夫が必要である。ステッカーやパネルの大きさは視認性を考慮し、少なくとも横300mm ×縦200mm(A4版サイズ)以上の大きさで、ステッカーやパネルの表面は色褪せ、防水処理が施されていることを推奨する。



 
8.「AED 誘導表示」の死角改善の配慮
 施設周辺はもちろん施設内においても、AEDボックスが直視できない場所を設置されていると、AEDボックスを短時間に探し出すことが困難になる。そのため、施設周辺においては直視できる範囲毎に「AED誘導表示」を設置することを推奨する。一方、施設内の入口付近にしかAEDボックスがない施設では施設内のいずれの場所からでも利用できるような工夫が必要である。
 具体例として、「トイレ」などの案内表示と同じ位置に「AED誘導表示」を追加することは、顧客・通行人にとってわかりやすく、有効な方法である。
 
9.複数ビル階を所有する施設での階段・エスカレータでの配慮
 同一施設が複数のビル階を所有する施設でAEDボックスがすべてのビル階に設置されていない場合は、階段またはエスカレータを利用した動線ルートを「AED誘導表示」によって示す必要がある。その立ち位置から最も短時間で確保できるAEDまでの「AED誘導表示」を階段およびエスカレータの昇降付近に設置するとともに、到着階での「AED誘導表示」の追加を推奨する。なお、エレベータでの動線ルート利用は、乗降に要する待ち時間が予想できないため、「AED誘導表示」を推奨しないが、エレベータ内の各階案内にAEDの設置階を表示することは事前に顧客に知らせるには役立つ。
 
10.施設従業員の教育
 AEDを設置している施設においては従業員(正社員だけでなく、派遣社員、パート、アルバイトを含む)に顧客や通行人が心停止を起こした際には、心肺蘇生(CPR)をおこなうとともに施設内のAEDを迅速に利用できるよう社内教育をされていることが大原則である。その上で心停止がおこった場所からの最も近くにある AEDボックスまでの動線ルートを確認しておくことを推奨する。また、施設内電話を使って AEDボックスに最も近い従業員に搬入させる運用もよい。もし、AEDの使用までに3分以上を要する場合には、AEDの追加や動線ルートの見直しが必要である。
 
11.AEDの日常点検と設置登録
 AEDはバッテリで動作する高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器である。AEDを設置した施設においては AED点検担当者を配置し、日常の点検や消耗品(電極パッド及びバッテリ)の交換時期の管理を適切におこなうとともに、「AED日常点検タグ」をよく見えるところに取り付けることが厚生労働省通知「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について」(医政発第0416001号、薬食発第0416001号、2009年)で周知されている。
 
12.業種別AED誘導表示における特記すべき補足概要
 「AED誘導表示」の基本的表示方法については、「AED誘導表示のあり方基本概要」で記述したが、各施設でAEDを設置する場所に対する利用範囲を考えると、業種毎に施設の広さやビル階などによって、様々な対応が求められる。そこで、業種別にAED を設置する場合の「AED誘導表示」のあり方として特記すべき事項を補足した。
 
(1)鉄道・地下鉄の駅構内におけるAED誘導表示
 乗客の乗降数が多い鉄道・地下鉄の駅構内には AEDが設置されており、その多くは駅員によるAED 使用を想定したと思われるが、改札口近くであり、AEDボックス周辺に「AED設置表示」があるのが一般的となっている。しかし、鉄道会社によっては、AEDの設置が駅数の1割にも満たないところもあり、各駅にAEDを少なくとも1台設置することを推奨する。
 その上で、「AED誘導表示」を有効に活用する工夫が必要であるが、心停止の発生は改札口よりも、駅構内の広い区域を占めるプラットホームでの発生が多いと考えられ、すべてのプラットホームへの「AED誘導表示」の追加を推奨する。
 また、経費的に余裕があれば改札口だけでなく、プラットホームへのAEDボックスの設置が有用であり、これはプラットホームでの心停止だけでなく、車内で発生した心停止に対する停車駅での迅速対応にも活用できる。
 
(2)商業施設におけるAED誘導表示
 商業施設には、ショッピングモール、百貨店、スーパーマーケット、家電量販店、ホームセンター、映画館などのように比較的に施設面積が広く、複数のビル階を有する施設と、銀行、飲食店、コンビニエンスストア、ブックストア、ビデオショップなどのように施設面積が比較的狭い施設に大別できる。
 商業施設における「AED誘導表示」の設置位置をAEDの使用までに3分以上を要しない広さに規定すると、売り場面積が100m×100m以上の施設(大規模商業施設)と、それ未満の施設(小規模商業施設)に分けることができる。
 なお、ショッピングモールや百貨店などにおいては、複数のテナントが出店している場合もあり、AEDボックスの設置場所とともに「AED誘導表示」について、ショッピングモールや百貨店における施設全体の経営者・管理者が各店舗の意見を考慮して決定することが望ましい。
 
(3)公共施設におけるAED誘導表示
 公共施設として、各種公的手続き・申請のための出向する県庁、市役所、保健所、警察、消防署などと、住民の教養・文化のための市民ホール、美術館、博物館、水族館、図書館などがある。公共施設において住民が利用するエリアは限られるため、小規模商用施設の「AED誘導設置」と同様の扱いでよい。
 なお、公共施設における住民サービスの立場と従業員がAEDを迅速に利用できるようにするためには AEDの設置は必然のものであり、必要に応じて「AED 誘導表示」の設置も必要である。
 
(4)公園・スポーツ関連施設におけるAED誘導表示
 ここでは、公園、動物園、植物園、野球場、サッカー場、テニス施設などにおける「AED誘導表示」の設置ガイドについて記述する。すべての施設に共通する点は極めて広い面積を有することであり、「案内MAP」への AED設置位置を示すことが最低限必要である。その上、「案内 MAP」と AEDボックスが離れている場合には「AED誘導表示」との併用を推奨する。なお、「AED誘導表示」の設置場所、高さ、大きさ、向きについて他の施設と異なるが、景観を損なわないことも配慮する必要がある。
 
(5)教育施設におけるAED誘導表示
 小学校、中学校、高校、大学、専門学校などの教育施設で生徒・学生が心停止を起こした際の対応として、AED の設置が不可欠である。既に大部分の教育施設に AED が設置されているが、施設規模に対して設置場所も明確でなく、AEDの設置台数が少ない傾向にある。このような問題点を改善し、AEDを迅速に利用するためには、施設複数個所にAED誘導表示の設置を推奨する。
また、教職員の勤務時間外で対応できない場合を想定し、学生にもCPRやAED操作の研修も入学時にオリエンテーションの中で実施することを推奨する。
 
(6)病院・介護施設におけるAED誘導表示
 病院・介護施設においては心停止の患者に対して心肺蘇生(CPR)に対処できる医療スタッフが常勤していれば、「AED誘導表示」の必要性はさほどない。一方、職員の入れ替えの多い病院では、どの場所からでも AEDの所在位置を把握できるように、「AED誘導表示」や「案内 Map」をつけることを推奨する。
 
(7)新幹線・特急列車、長距離バス、旅客機におけるAED誘導表示
 新幹線・特急列車など停車駅間隔が長い客車、高速道路を運行する長距離バス、旅客機内などで乗客に心停止が発生した際、運行の途中で緊急停車(着陸)することが不可能であり、客車(客室)内での対応が必要となるため、AEDの設置は不可欠である。
 特に、新幹線や特急列車など長距離を運行する列車内では、各車両にどの車両にAEDがあるのかAED誘導表示などでわかるようにし、AEDがある場合にはその位置がわかるように各列車内に「AED誘導表示」の設置が必要である。一方、通常の乗合バスや旅客機は乗務員が近くにおり、室内が限られているため、「AED誘導表示」の表示は不要である。
 
13.まとめ
 AED誘導表示ガイドは、現状の「AED設置表示」だけでなく、「AED誘導表示」の必要性を広く公共施設や民間施設やもちろん AED製造販売業者においても理解してもらうことを目的に医療の安全に関する研究会で策定した。
 AED設置管理者102施設(回収率:59.3%)に対するAED誘導表示ガイドの必要性に関するアンケート調査において、約8割の設置管理者は、ガイド策定の目的に全面的に賛同し、また、約6割の設置管理者が、「矢印」、「距離」、「設置施設名称」、「時間的に限定される場合の曜日・利用時間」の記載の必要性を感じていた。
 今後、本ガイドは、施設内だけでなく施設周辺においてAEDボックスを誰でも迅速かつ容易に見つけ出し迅速に利用するために有効に活用してほしいと考えている。
 また、厚生労働省が2004年に策定した「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会報告書」を見直し、AED誘導表示ガイドで提言している「AED誘導表示」に示した指針提示を期待したい。
 
【参考文献】
1)酒井順哉、酒井俊彰、國定賢一朗、山田哲矢(2010):公共施設における AED 設置場所の表示案内のあり方の研究、医療機器学、80(5)、pp.524-525.
2)Junya Sakai, Kenichiro Kunisada, Tetsuya YamadaandToshiakiSakai(2010): A Study on the Ideal Way of AED Induction Display Guide in Public Facility、 21st Congress of International Federation of Hospital Engineering、Session-G3,p.1-6.
3)山田哲矢、橋爪勝也、藤井清孝、酒井順哉(2011):公共施設に設置した AED 有効利用に必
要な誘導表示に関する研究、病院設備、Vol.53,No.6,pp.111-112.

 
パネルディスカッション「AEDは有効に活用できているか」
AED設置場所の周知徹底が肝心
~一般市民の立場で~

 
吉田 嘉宏
「医療を良くする会」世話人
 
 病院外での心臓突然死の死者数は毎年5万人を超えると言われています。サッカーの著名選手の心臓突然死ニュースやマラソン大会でAEDによる救命ニュース等で、AEDについての認識は市民の間にもかなり広がって来たように思われます。地域の様々な活動の場で講習会が開催され、実際にAEDの器械に触れ体験した方も増えて来ているようです。しかし、身近な人々の間で具体的な事例が発生した時、有効に活用するに必要な要件が整っているかと言えば、決して充分とは思えないのが現状です。
 AEDの設置箇所が少ないこと。そしてどこに設置されているのかが周知されていないこと。更に設置場所に到達しても設置位置が分かりづらい表示の問題等があります。
 最近私の住むマンションでは飲料水販売の会社から敷地内に自動販売機の設置を条件にAEDの無料設置をするという営業の話がありましたし、警備保障会社から同様なAED設置の勧誘があり1階ホールに設置され住民への講習会も行われました。こうした方法での普及拡大も図られていますが、未だに空白地帯が多数有ります。
 1分単位で救命率が低下するので、1分以内に到達出来るよう300m毎に設置場所が配置されることを日本心臓財団では目標に掲げています。咄嗟の場面で誰もがすぐ思い浮かべることのできる施設には必ず設置されていれば周知されやすいと考えます。既に多くの人が集まる駅、空港、スポーツ施設、公共施設、学校等には普及されていますが、例えばコンビニ、スーパー、銀行、郵便局、診療所、歯科医院、薬局、マンションなどには設置を義務づけても良いのではと思います。
 設置場所の周知には「日本全国AEDマップ」のアプリがスマホやiPadに提供されていますが、日頃からこうした情報に関心を持ってもらえるような啓発活動が必要だと思います。
 そこでこの活動にはどうしても若い人達の協力が大切で、中学校から大学まで、AED 取扱の実技も含め、保健・体育の教科に採り入れて訓練し、課題として学区や地域のAED設置マップを調査作成し、AED普及の関心を高めさせ、児童・学生を通じ一般家庭に配布して周知を図ることを期待したいと思います。
 

パネルディスカッション「AEDは有効に活用できているか」
駅構内AED設置の考え方

名古屋市交通局 営業本部 電車部 運輸課主査
半田  匠
 
 名古屋市交通局では地下鉄駅において、お客さまが突然、心停止状態に陥った場合に備え、AED導入についての検討を始めていましたが、平成16年7月1日付の厚生労働省医政局長通達「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用について」の中で、非医療従事者による使用について医師法違反には当たらないとの見解が示されたことを受け、平成16年12月28日付で健康福祉局から各局に対し、AEDの設置検討依頼がなされ、更に17年7月14日付で健康福祉局が示した名古屋市の設置方針により、地下鉄駅が対象施設として位置付けられることとなりました。
 しかし、AEDは、市場価格で1台約40万円相当と高額であるとともに、導入以降に多額の消耗品購入(パッド・バッテリー)などの維持費が必要であり、経営健全化計画を進める交通局においては、一括して全駅の AED を局の負担で導入することが困難でした。このような状況の中で、平成17年12月より病院やライオンズクラブ・ロータリークラブ等からのAED 寄贈を受け、設置駅を順次18駅まで拡大することができました。なお、寄贈 AED の維持費等は交通局で管理しています。
 平成18年度には大阪市・京都市において広告付AEDの導入があり、交通局内で検討を重ねた結果、AEDを広告付きBOXと一体にすることで、局の設置する費用及び維持管理費用を一切負担せずに、AEDの導入を図れることや、AEDが地下鉄駅に備えられることにより、利用されているお客さまに万が一のときの安心を与え、救命救急として、その命を救うことができるという利点が見込まれるため、平成19年8月から広告付 AEDの導入を始めました。その後、平成22年度には全駅の85駅(名鉄管理駅:上小田井・上飯田を除く)で配備を完了することができました。
 広告付AED BOXで壁面に設置するものは、高さ1.8~2メートル、幅83センチ、奥行き20センチ。丸い柱に設置するものは、高さは同じで、幅77センチ、奥行き13センチ。広告スペースはともに高さ約1メートル、横約73センチのB1サイズとなっており、耐風、耐震強度に関する施工基準のほか、道路占用に係わる諸規制の対象になっています。
 AED使用に関する講習については、助役・駅務員の職員養成研修カリキュラムの中へ取り入れるとともに、現場管理職へ応急手当普及員の資格を取得させ、駅職員に対し、毎年、普通救命講習が開催できる体制を確保しています。今後も普段から適切なAEDの取扱いが行えるよう救命意識を高め、より効果的な知識・技能の修得及び維持に努めていきます。
 また、平成21年12月より安全意識の向上を目的として毎日、確認表へ無事故の日は日付部分に緑十字でチェックを入れるとともに、AEDのバッテリー残量と消耗品を確認し、AED欄へ、レ点によるチェックを実施しています。 駅構内AED設置場所について、当初は AED を携行して現場へ駆けつけることを想定し、駅助役が使いやすいように、駅長室付近の設置を考えていましたが、現在では基本的に職員が近くにおり、どなたの目にもつきやすい、改札口付近の通路に設置しています。また、お客さまにも使用しやすいように駅構内案内標示板へ AED設置場所を表示しています。
 地下鉄駅におけるAED 設置場所の詳細について、交通局では次のように考えています。
1 既設のAEDがある場合は、広告付AEDを離して設置する。
2 既設のAEDを移設する場合は、マップ等にて場所の位置が周知されているため、新設AEDは既設に近い場所に設置する。
3 改札が1ヶ所の駅は、ラッチ内とラッチ外の設置という位置付けで場所の選定をする。
4 改札が2ヶ所で離れている駅は、現在設置の無い側の改札に設置をする。
5 現在の設置場所付近に設置する場合は、設置の無い有人改札側に移設する。
6 現在の設置場所付近に設置する場合は、業務により活用できるよう、駅長室に近い場所に移設する。


広告付AED

駅構内案内標示板


パネルディスカッション「AEDは有効に活用できているか」
弊社のAED利用の考え方

フィジオコントロールジャパン株式会社 ビジネスマネージャー
松尾 英樹
AEDの本質とは一体なんでしょうか ?
電気ショックによる VF/VT の停止は勿論ですが、そのような装置は昔からあります。
AEDと言う限りは、これに加えて別の要素が無ければなりません。
我々は、「時間を買う事」では無いか、と考えています。
重篤な不整脈による心臓突然死は、何時、誰に、どのような状況で発生するか判りません。
判っているのは、これを認識したら一刻も早く適切な処置をすれば助かる可能性が高くなると言う事、又、VFや脈無しVTを「停止」させる最も有効な手段は電気的除細動だ、と言う事だけです。
だからこそ、AEDは誰でも何時でも「使える」ように、と言う事を前提にこれまで開発が進められてきました。「使える」と言う事はどういう事なのか、という点についても深く考える必要があります。
 
私共フィジオコントロール社が、今日市場で見られるような AEDの原型を作り出し、世の中に送り出したのは1985年の事です。「治療可能な急性疾患によって、突然、人々が命を落とすことのない世界」というビジョンと、「救命医療に携わるすべての人に救命ツールをお届けする事」を使命とする私共にとって、心臓突然死に取り組む先生方と共に新たなツールを世の中に送り出すのは当然のことでした。以来、実に40年近くの時間が過ぎ、AEDはさまざまな発展・進化を遂げてきました。
 
AEDの利用には、心臓突然死に関するその時点での臨床的な理解や、治療に関わる国際的なガイドライン、AEDを使うための社会的な認知やコンセンサス、さらにこれが用いられる国や地域に於ける各種の法規制など、様々な要素が複雑に関わります。AEDという製品も少しずつそれらを取り入れてすこしずつ進化してきました。
AED の利用についても同じです。対応する疾患は同じで、治療の本質は変わらないとしても、それに誰がどう向き合うか、何処で使われるのか、誰がAED使用後に必要とされる処置を支えるのか、等々の要素によって装置の仕様も利用方法も変わってきます。我々AEDのメーカーは、市場の要求に従った製品とそのサービスを提供し、又、場合によってはより有効と思われる方法をご提供していく事になります。
 
今回のパネルディスカッションでは、このような考え方を元に
1.誰が AEDを「使う事」による受益者なのか?
2.AEDを「使う事」に関わる「どのような」責任が誰にあると考えられるのか?
3.AEDの利用には今後どのような発展が考えられるのか ?
4.上記を踏まえ、AEDの利用にはどのような問題を考慮すべきなのか?
などの点について、現時点での考えを述べさせていただきたい、と考えております。

パネルディスカッション「AEDは有効に活用できているか」
弊社のAED利用の考え方
日本光電工業株式会社 営業本部AED営業部 事業推進課
松田 比呂志
 2004年7月に一般市民による除細動が可能となり、年々設置台数が増加しています。平成23年には全国に約38万台の AEDが設置されており救命事例も増えてきている反面、AEDの維持管理が不十分である施設もあることから平成21年4月厚生労働省より「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について」が通知されました。しかしながら、平成25年3月総務省より「AEDの設置拡大、適切な管理等について(あっせん)」にてAEDの維持管理がいまだに不十分であることが公表されています。
 弊社では国産AEDメーカーとして、いざという時に使用できる環境を提供するため、AEDとサーバーで毎日通信を行い、電極パッド、バッテリーの状態を確認できる「リモート監視システム」を開発しました。また、実際にAEDを使って救命を行う場合に、音声ガイダンスのみでなく液晶画面によるイラストレーションで操作をガイダンスする機能を搭載したAEDを開発・発売しています。
 
リモート監視システム(AED Linkage)
 本システムは専用の通信端末を使いAEDとサーバーで1日1回通信を行い、AEDのセルフテスト結果をサーバーへ送り、AED の状態を Webで管理することができます。また、電極パッドの期限切れやバッテリー切れ、AED本体の故障時には登録されたメールアドレスへ自動的にメールが配信されます。さらに、電極パッド期限切れ1ヵ月前、バッテリー残量25% 以下になった場合もメールでお知らせします。メールアドレスの登録は複数人可能であるため、万が一AED設置管理担当者が変更になりAEDの管理を忘れてしまった場合でも複数の人に知らせることで使用できない状態を回避することができます。
 専用の通信端末は電池で駆動し、Bluetooth を使ってAEDと通信を行うため、100V 電源や専用の架台の必要がなく置き場所を選ばない設計となっています。通信端末からAED本体へ時刻を補正しているため、救命で使用した場合に正確な時刻の救助データが抽出できます。また、AED本体に電極パッドの期限を読み込む機能を搭載しているため、電極パッドの交換時に期限を入力する必要がなく、交換を行えば自動的に電極パッドの期限がサーバーへ送られる仕組みとなっています。
 
液晶画面によるイラストレーション搭載AED
 このAEDは音声ガイダンスだけではなく液晶画面によるイラストレーションとメッセージ(文字)を表示します。イラストレーションは10数種類の画面で構成され、操作手順をガイダンスします。これにより、講習を受けても自信がない方や騒音による音声ガイダンスが聞き取りにくい環境、聴覚に障害のある方でも操作できるようサポートします。液晶画面は半透過型液晶を採用しており、薄暗い環境ではバックライトで明るく表示し、直射日光などの強い光があたる屋外では外光を利用して画面を見やすく表示することができます。
 弊社のAED利用の考え方は、「設置している状態」から「救命で使用する」までの「安心」を目指しています。AEDは実際に使用されるケースは少なく、ほとんどの時間が設置しているだけの状況ですが、いざという時には必ず動く状態を維持しなければなりません。いつでも使用できるよう維持管理のサポートを充実させることと、万が一AEDを使用する場合には、できるだけ多くの人が使えるようにわかりやすいAEDを提供して、救命の機会を失わないようサポートをしております。

パネルディスカッション「AEDは有効に活用できているか」
弊社の AED利用の考え方

株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン
ヘルスケア事業部 マーケティング本部
小川 樹美
 AEDの利用の考え方として、Philips は、以下の2点について重要と考えており、弊社で取り組んでいる内容についてご説明します。
 
1.AED 設置管理者にAED消耗品の維持管理を適切に行っていただくための対策
 AED 消耗品の維持管理を適切に行っていただくために、弊社では納品時に登録いただきましたAED設置管理者の方宛に、納入月に年1回の割合で、ダイレクトメールを送付し、消耗品の期限確認及び適切なタイミングでの交換のお願い及び日々の点検についてのご案内をしております。
 併せて、弊社の販売店からも消耗品の交換期限前に電話連絡や営業担当者の訪問等により、交換のご案内をしております。主にリースやレンタルでAEDを導入いただきましたお客様で、消耗品の交換パッケージを同時にご契約いただいたお客様には、期限前に交換消耗品を郵送または訪問等で交換するサービスも提供させていただいております。
 AEDを適切な状態でご使用いただくため、弊社及び弊社販売店にて、AED設置管理者の方々に対し、適切にAEDの維持管理をしていただくための対応をしております。
 
2.AED の適正場所への配置についての Installation Consultant
 AED の適正場所への配置について、導入前にお客様のご要望に応じて、AEDの先進国である米国の推奨設置基準を元に、ご施設内の適正な設置場所の推奨をしております。
 米国では、適正推奨設置場所がマニュアル化されており、たとえば、オフィスであれば、心臓突然死(Sudden Cardiac Arrest)が発生した場所から、AEDを取りに行き、戻ってくるまでの時間を考慮し、エレベーターや階段の場所や、実際のアクセス導線を図面や実際の施設で確認しながら、最適な設置場所の推奨を行う仕組みがあります。
 弊社営業からもご提案できますが、より詳しいコンサルタントを専門家から受けたいとご要望のお客様には、産学共同研究として、国士舘大学と連携し、米国で実際の Installation Consultantを学んでいただいた専門家からアドバイスを受けていただくことも行っております。
 いざという時に、最短時間でAEDを使用できるように、施設の適正場所にAEDを設置することもAEDの利用に関しては重要と考えております。

パネルディスカッション「AED は有効に活用できているか」
あいち AED マップを導入して

愛知県防災局消防保安課主幹(救急・救助・防災航空)
小野坂 潔
1 運用開始年月日
 ホームページ、携帯サイトとも平成19年4月1日に運用を開始しています。
 
2 導入目的
 突然の心停止からの蘇生に重要な AED を含めた心肺蘇生法を、その場に居合わせた方に、より多く行っていただけるよう、県内に設置された AED の情報を収集し、広く県民の皆様に提供する目的で Web サイトを設置しています。
 ①県民が利用可能な AED の設置場所を普段から探すことができる。
 ②携帯サイトにより県内のどこからでも近くの AED を探すことができる。
③登録された AED 情報を消防本部の通信指令システムに反映し、119番通報時に近くの AEDを案内したり、使い方を教えることができる。
 
3 登録方法
 AED は施設への設置義務や設置後の報告義務がないため、設置者からの自主的な登録をお願いしています。
 実際の登録手続きは、あいち AED マップのホームページにアクセスいただき、AED 登録申請画面から、設置施設名、住所、施設内の設置場所、設置場所の写真、利用可能時間等を登録申請していただいています。
 登録申請に対しては消防保安課救急・救助グループで内容の確認を行い、承認後公開します。
 ・あいち AED マップホームページアドレス:http://aed.maps.pref.aichi.jp/
 ・あいち AED マップ携帯サイトアドレス:http://aed.maps.pref.aichi.jp/k/
 
4 実績等
(AED 登録件数)
 平成25年7月31日現在 3,878件
(活用例)
 高校のグランドで発生した心肺停止の119番通報時に通信司令員が、学校に AED が設置されていること及び心肺蘇生法を実施することを伝えたところ、その AED による除細動(電気ショック)が行われ、救急隊接触後には心拍が再開し、1ヶ月後には社会復帰を果たした。
 
5 ウツタイン様式(国際的な救急統計手法)に基づく心肺停止傷病者に対する蘇生状況(愛知県・平成24年速報値)
 ・愛知県全体の社会復帰率28.6%
 ・その場に居合わせた一般の方が AED を使用した場合の社会復帰率39.5%
 
 
 医療の安全に関する「川柳」公募 入賞作品決定
第10回テーマ「歯科医療の安全」
 
 
 医療の安全に関する研究会では、医療の安全に関する関心を高め、会の広報などに使用することを目的に医療の安全に関する川柳を一般から広く募集することを企画しました。第10回の今回は「歯科医療の安全」をテーマとして募集したところ全国から1677通の応募があり、NHK学園の大木俊秀先生に選考を依頼して、四十七作品を選出していただきました。この候補作品の中から常任理事会において最優秀作品を決定しました。12月30日の研究大会で選者の大木俊秀先生から選考の経過や作品の選評発表をいただきます。

最優秀作品
患者の目見ず歯だけしか診ない歯科   埼玉県入間市 星野のぶ子
 
ノミネート作品
入れ歯にも金属疲労ある怖さ       東京都 林 善隣
白い歯の裏側にある黒い罠        福井県 中川 潔
歯科医さんコップぐらいは取りかえて   千葉県 渡辺幸恵
できるだけ抜かずに治す歯科さがす   山口県 坂本加代
かなくてすんだセカンドオピニオン     宮城県 渋谷史恵
本当に抜歯するほど悪いのか       奈良県 田村靖彦
質問は止めて下さい抜歯中        千葉県 京増京介
抜けぬ歯に患者まっ青医師まっ赤    奈良県 皆木あき子
くやしさに耐える奥歯を維持したい    宮崎県 奧屋 平
歯に孝行したい時には総入れ歯     香川県 田岡 弘
 

 
医療の安全に関する研究会 理事会議事録
 
日 時 2013年6月29日(土) 午後1時30分~ 3時
場 所 名城大学名駅サテライト(MSAT)会議室
出席者 以下のとおり14名、他に委任状7名
島田康弘、加藤良夫、北野達也、齋藤悦子、酒井順哉、堤寛、増田聖子、松葉和久、吉田嘉宏、池田卓也、稲垣克巳、加藤憲、品田知子、藤原奈佳子(敬称略)
 
議題
1.決算の承認の件
 齋藤常任理事より、別紙資料(平成24年度会計報告書等)にもとづき決算報告、別紙「監査報告書」を回覧し、決算案を承認した。
 
2.予算の承認の件
 増田常任理事より別紙「平成25年度予算案」提案。単年度赤字の点、予備費が少額の点等について指摘がなされた。意見交換の後、別紙のとおり予算案を修正のうえ承認した。
 
3.研究大会の準備状況報告の件
 別紙チラシ案に基づき、本年11月30日(土)午前10時から名城大学天白キャンパス(名古屋市)にて第18回研究大会が開かれること、大会のテーマは「AED は有効に活用できているか~安全利用のために必要な普及啓発活動~」であること、ならびにその準備状況が報告された。参加費については意見交換の上、一般2000円、会員1500円、大学生500円、高校
生以下無料とすることを決定した。
 
4.来年の研究大会(第19回)の件
 大会長の堤寛常任理事を中心に、準備を進めていくこととなった。
 
医療の安全に関する研究会 総会議事録
 
日 時 2013年6月29日(土) 午後3時~ 3時30分
場 所 名城大学名駅サテライト(MSAT)会議室
出席者 以下のとおり14名、他に委任状54名(会員143名、定足数はその4分の1以上)
島田康弘、加藤良夫、北野達也、齋藤悦子、酒井順哉、堤寛、増田聖子、松葉和久、吉田嘉宏、池田卓也、稲垣克巳、加藤憲、品田知子、藤原奈佳子(敬称略)
 
議題
1~4 理事会に同じ





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