医療の安全に関する研究会
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「医療の安全に関する研究会」ニュース
Newsletter No.32
20111125 発行
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巻頭言
医療の安全に関する研究会
理事長 島田康弘

 皆様にはますますお元気で活躍中のことと存じます。第17回研究大会に際して巻頭言を申し上げます。
 第17回研究大会の大会長は愛知県医師会総合政策研究機構の主任研究員をなさっておられる加藤憲さんです。加藤さんは愛知県医師会で医療政策に携わってこられました。今回は在宅医療と介護の連携を、安全の面からどのように情報を共有していくかについて考えることを中心に計画されました。場所は愛知淑徳大学星が丘キャンパスです。
 大会のテーマは「安全安心のための在宅医療と介護の連携-情報共有のあり方を考える-」です。大会長講演としてテーマと一緒の「安全安心のための在宅医療と介護の連携-情報共有のあり方を考える-」を語られます。次に特別企画として、愛知県医師会総合政策研究機構の主任研究員で元愛知新城大谷大学の教授であられた天野寛さんの座長による「在宅医療・介護における専門職種の役割-連携のプレーヤーを知ろう-」が、愛知県医師会 地域医療再生に関する多職種連携協議会の皆様から語られます。初めての試みなので楽しみにしております。
 午前中の終わりには第9回本大会から実施しております医療の安全に関する川柳募集の優秀作品の紹介と表彰が行われます。今年は「お産に関する安全」を取り上げました。川柳についてはじめからずっとみていただいているNHK学園の大木俊秀さんに、優秀作品のご紹介と楽しいご講評をお聞かせいただきます。
 昼の時間を使って「学生ポスターセッション」が行われます。ご期待ください。
 午後はまず教育講演として山内一信さんによる「安全安心のための診療記録のあり方と活用」が語られます。山内さんは名古屋大学の名誉教授で現在医療法人康誠会東員病院認知症疾患医療センター院長をなさっておられます。
 続いて基調講演「連携におけるファシリテーションの意義-父を介護した経験から思うこと-」を鈴木まり子さんに語っていただきます。鈴木さんは日本ファシリテーション協会フェローをなさっておられます。
 それから総合討論に入りますがそれに先立って理事の堤寛さんから「医学教育の立場から」、加藤良夫さんから「法律の立場から」、そして愛知県医師会総合政策研究機構プロジェクト室長の宮治眞さんから「まちづくりの立場から」を語ってもらいます。何か提言できるものができないかと期待しております。どうかフロアーの皆様の積極的なご意見をお聞かせください。
 皆様と12月15日に会場でお会いできるのを楽しみにしております。
 


 
医療の安全に関する研究会
第17回研究大会
安全安心のための在宅医療と介護の連携
-情報共有のあり方を考える-

大会長
加藤 憲(愛知県医師会総合政策研究機構 主任研究員)


 
 9:30  受付
       総合司会 齋藤 悦子(中京学院大学看護学部 教授)
10:00  開会の挨拶 
       理事長 島田 康弘(日本聴能言語福祉学院 学科長、名古屋大学 名誉教授)
10:05  大会長講演「安全安心のための在宅医療と介護の連携 -情報共有のあり方を考える-」
       加藤 憲(愛知県医師会総合政策研究機構 主任研究員)
       司会 北野 達也(星城大学大学院健康支援学研究科 医療安全管理学講座 教授)
10:30  特別企画「在宅医療・介護における専門職種の役割-連携のプレーヤーを知ろう-」
       座長 天野 寛(愛知県医師会総合政策研究機構 主任研究員、元愛知新城大谷大学 教授)
       愛知県医師会 地域医療再生に関する多職種連携協議会
12:00  「医療の安全に関する川柳」講評と表彰
       大木 俊秀(NHK学園 川柳講座編集主幹)
12:20  昼食休憩
13:20  学生ポスターセッション
       座長 小林 三太郎(愛知淑徳大学 准教授)
           酒井 俊彰(愛知医科大学事務局 医事管理部)
14:00  教育講演「安全安心のための診療記録のあり方と活用」
       山内 一信(医療法人康誠会 東員病院 認知症疾患医療センター院長
              名古屋大学 名誉教授)
       司会 酒井 順哉(名城大学大学院都市情報学研究科 保健医療情報学 主任教授)
14:30  基調講演「連携におけるファシリテーションの意義
            -父を介護した経験から思うこと-」
       鈴木 まり子(日本ファシリテーション協会 フェロー)
       司会 加藤 憲(愛知県医師会総合政策研究機構 主任研究員)
15:30  休憩
15:45  指定発言・総合討論
       座長 松葉 和久(愛知きわみ看護短期大学 客員教授)
           増田 聖子(増田・横山法律事務所 弁護士)
       「医学教育の立場から」
           堤 寛(藤田保健衛生大学医学部 第一病理学 教授)
       「法律の立場から」
           加藤 良夫(南山大学法科大学院 教授、弁護士)
       「まちづくりの立場から」
           宮治 眞(愛知県医師会総合政策研究機構 プロジェクト室長)
17:00  次期大会長挨拶
       酒井 順哉(名城大学大学院都市情報学研究科 保健医療情報学 主任教授)
17:05  閉会の挨拶
       大会長 加藤 憲(愛知県医師会総合政策研究機構 主任研究員)
18:00  懇親会


 
大会長講演 抄録
安全安心のための在宅医療と介護の連携
-情報共有のあり方を考える-

愛知県医師会総合政策研究機構 主任研究員
加藤 憲

地域包括ケアへ
 高齢者(65歳以上)が増えています。1960年には540万人でしたが、2012年では3,074万人となりました。また、全人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)も増加しています。1960年の5.7%から2012年には24.1%となりました。平均寿命は、1960年の男性65.32歳と女性70.19歳から2010年の男性79.64歳と女性86.39歳に延びています。厚生労働省より発表された2010年の健康寿命は、男性70.42歳と女性73.62歳でした。平均寿命と健康寿命の差は自立生活が難しい期間と考えられ、2010年におけるその期間は男性が約9年、女性が約13年でした。高齢化率とともに高齢者数も増加する中、自立生活が難しい期間をどのように過ごすのかを、今こそ考える必要があります。なぜならば、団塊の世代が介護の必要度が増す80歳代となる2030年には、80歳以上の人口は1,571万人になることが予測され、介護保険施設(特別養護老人ホームなど)にてケアを受けることがさらに難しくなることが考えられるからです。
 このような状況を踏まえ、地域包括ケアシステムという考えが提示されました。地域包括ケア研究会報告書(2010年)において、「2025年の高齢社会を踏まえると、高齢者ケアのニーズの増大、単独世帯の増大、認知症を有する者の増加などを背景として、介護保険サービス、医療保険サービスのみならず、見守りなどの様々な生活支援や成年後見等の権利擁護、住居の保障、低所得者への支援など様々な支援が切れ目なく提供されなければならないが、各々の提供システムは分断され、有機的な連携がみられない。地域において包括的、継続的につないでいく仕組み『地域包括ケアシステム』が必要となる。これは、地域医療から介護さらには生活全般への支援の一体化を目指したものである」と述べられています。このように、医療職種や介護職種のみならず、人権擁護の観点から弁護士や、地域という観点からは民生委員や地域NPOの関与も求められています。

連携と安全安心
 地域包括ケアにおいては、多くの人々が関与することもあり、連携が鍵となります。連携と医療安全について見てみると、病院における医療事故やヒヤリハット事例の発生要因においては、「連携」の占める割合は10~15%存在すると報告されています(図1、図2)。技術というようなテクニカルスキルと、連携などのコミュニケーションを含むノンテクニカルスキルの両輪から医療安全を考える必要は、すでに指摘されています(山内桂子『医療安全とコミュニケーション』など)。具体的な対策としては、医療機関ではTeamSTEPPSやSBARという考えが取り入れられ、ノンテクニカルスキルの面から医療安全が考えられています。
 地域における医療と介護の連携に関する論文は、この10年で急増しています(図3)。しかし、病院における医療安全と連携の重要性が指摘され、地域包括ケアなど多数の医療や介護専門職種が関与するにもかかわらず、地域における連携のあり方と安全に関する議論が不足しているように思えます。また安全のみならず、安心という観点からも連携を考える必要があります。安全とは、行為やシステムの属性を問うており、つまり医療・介護サービスを提供する側の問題と換言できます。これは、病院という治療を「する」ことが一義的なシステム、つまりは医療を提供する側が主体的なシステムにおいては最大の課題として考えられます。しかし、在宅医療・介護という利用者が主体的ともいえるシステムにおいては、提供者側の属性の問題のみならず、提供者側と利用者側の関係性の現れといえる安心がより問われることになります。つまり、安全安心のための連携ということを考えるには、安全という連携の行為者の「属性」の課題と、安心という連携における行為者間の「関係」の課題を考慮することが求められているのです。

安全安心のための連携に求められる情報共有のあり方
 安全という連携の行為者の「属性」の課題と、安心という連携における行為者間の「関係」の課題を考慮し、連携を考えるとはどのようなことでしょうか。それは、情報の共有という連携の基盤について、連携における人々の相互の役割認識、共有する情報の種類、そして情報共有の方法について検討することと考えます。なぜならば、いずれも行為者の属性を明らかにしたうえで他者と関係を結ぶ作業を要求し、それが安全安心のための連携となるからです。
 まずは、相手が誰か、何をする人かが分からないと情報の共有ができません。野球でも、相手が球を打つ人だと分からなければ、ボールを投げる意味もわかりませんし、何をすればよいのか分からない状況になります。在宅医療と介護の連携における情報共有においても、同じことと言えます。
 つぎに、共有する相手が分かっても、何を共有するのか、その情報の内容や共有のための記録の形式の検討も必要となります。「正しく他者から理解される」記録が連携には必要ですが、くわえて、患者の客観的情報たとえば血圧などの意味を同じく共有するためにも、患者の背景的情報を共有することが必要になります。なぜならその理解により、客観的情報の意味を同じく理解できるからです。
 さらに、誰とどんな情報を共有するかがわかっても、どう共有するのかという方法論についても議論が必要です。医療と介護の連携においては、介護の人から見ると医療の人に物を言うのはハードルが高いという声があります。そのようなことにならないような、方法があるのではないでしょうか。その一つが、ファシリテーションではないかと思います。

さいごに
 地域包括ケアにおいては、専門職種を含めた様々な人々の連携が求められています。その連携のためには、情報の共有が基盤として求められます。人々の相互役割認識、共有される情報の種類、そして共有の方法について検討することが、安全安心のための連携に求められていることではないでしょうか。

謝辞
 第17回研究大会開催にあたり、医療の安全に関する研究会の皆様のご支援、ならびに演者の皆様のご協力に感謝申し上げます。さらに、過去の研究大会の参加者のご意見も参考にさせていただきました。また、運営委員として、小林三太郎(愛知淑徳大学)、酒井俊彰(愛知医科大学)、伊藤美智予(日本福祉大学)の各氏にご尽力いただきました。ここに記して感謝いたします。
 

    
 
   



 
特別企画 抄録
在宅医療・介護における専門職種の役割
-連携のプレーヤーを知ろう-
 
愛知県医師会総合政策研究機構 主任研究員、元愛知新城大谷大学 教授
座長 天野 寛
愛知県医師会 地域医療再生に関する多職種連携協議会
 .
 在宅医療の推進において、医療と介護の連携が求められている。連携のためには、互いの役割が認識されている必要がある。しかし、実際の在宅医療においては、関与している専門職種の多さのためか、互いの役割が正確に認識されているとは言い難い。その結果、必要な職種と連携がとれないという状況が生まれ、安全安心に在宅医療が提供できないという状況も危惧される。そこでこの特別企画においては、在宅医療に関与する専門職種が、どのような事ができるのかということを明らかにしたいと考えている。
 まずは、演者である愛知県医師会地域医療再生に関する多職種連携協議会(以下、連携協議会)について、その設立経緯を述べたいと思う。2010年度より愛知県医師会は地域医療再生基金(愛知県地域医療再生調査研究事業)の委託を受け、在宅医療の愛知県モデルを作成するために必要な調査を実施することとなった。愛知県医師会総合政策研究機構(愛医総研)はその調査業務を担うこととなり、在宅医療の継続の阻害因子を明らかにする追跡調査を開始するとともに、専門職種間の連携をより促進させる取り組みも行うこととなった。そのため、2010年6月、地域医療再生に関する三師会ワーキンググループ発足のための事前打ち合わせを行い、同年7月、地域医療再生に関する三師会ワーキンググループが開催された。それにさきがけ、愛知県歯科医師会と愛知県薬剤師会をはじめ、在宅医療に関連する団体を愛医総研研究員らが訪問し参加を呼びかけた。現在(2012年10月現在)では、愛知県医師会、愛知県歯科医師会、愛知県薬剤師会の三師会に加え、愛知県栄養士会、愛知県歯科衛生士会、愛知県理学療法士会、愛知県作業療法士会、愛知県看護協会、さらに愛知県居宅介護支援事業者連絡協議会(介護支援専門員の職能団体)の計9団体が参加している。
 つぎに、連携協議会の活動内容について述べる。現在までに2地区での住民を対象とした在宅医療に関する相談会と、多職種が連携するにあたり介入が必要な医療的ニーズを把握するための連携票(通称イエローカード)を作成している。このような活動のなかで、そもそも在宅医療を提供している専門職間で在宅医療においてお互いが何をできるのか分かっていないのではないか、という問題提起が連携協議会メンバーのなかから提起された。このような経緯から、多職種間においてお互いの職能を明らかにし、役割認識を向上させる必要が示唆された。
 最後に、この特別企画の実施方法について述べる。各専門職種からそれぞれ在宅医療において何ができるのかを、実例とともに説明していただく予定である。過日、愛知県医師会と愛知県居宅介護支援事業者連絡協議会を除く7団体より、職能について介護支援専門員(ケアマネジャー)に対して各10分ずつ説明していただいた。参加した介護支援専門員からはおおむね好評であったと聞いているが、7団体すべてが一度に説明すると消化不良になりかねないのではという意見も出た。このような反省を踏まえ、この特別企画では愛知県歯科医師会、同薬剤師会、同看護協会、同居宅介護支援事業者連絡協議会から10分ずつ在宅医療・介護における役割について説明いただき、討論時に他の団体より役割について簡単に説明していただこうと考えている。このような職能について説明をし理解を深めるという取り組みは、現在試行錯誤の段階である。聴衆は医療に詳しくない人を想定している。ゆえに、この研究会の参加者の方で、話の内容が理解ができないという事態があれば、説明したつもりでも説明になっていないと言える。参加者から様々な意見を伺い、積極的に改善の材料としたいと考えている。

                在宅医療・介護における職能の紹介

愛知県歯科医師会
通院が困難な在宅療養者に対して、むし歯、歯周病の治療、入れ歯の修理、作製の基本的な歯科治療が可能です。要介護者は、食べる・飲み込む・しゃべる口腔機能の維持・管理と口腔ケアが重要です。口から味わい食べることはまさに生きることです。

愛知県薬剤師会
薬局薬剤師が在宅医療・介護の現場でできることは、薬の飲み方の説明、残薬の管理、飲み合わせチェック、薬の効果・副作用の確認、そして衛生材料、医療材料等の提供があります。医師、歯科医師やケアマネジャーへ報告を行い、多職種との連携に努めています。

愛知県看護協会
訪問看護は、在宅療養生活に安心を届けます。24時間対応体制は、「来てくれて安心、帰ってからも安心」です。看護ケアの他、家族への介護相談や介護技術指導。子供からお年寄りの、介護予防からターミナル期まで幅広く対応できます。それが訪問看護です。

愛知県居宅介護支援事業者連絡協議会
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護保険の創設と共に、介護保険制度の要としてできた新しい専門職です。介護を要する方々の「望む生活の実現」に向けて社会資源を有効に活用し、調整する仕事(役割)を担っています。

愛知県理学療法士会
理学療法士とは一言で言うなら動作の専門家であり、寝返り・起き上がり・立ち上がり・歩行など日常生活を行う基本となる動作の改善を目指します。また、そのために必要な呼吸・循環障害をも視野に入れ指導をします。在宅の場面では住環境整備・福祉機器利用の提案も含め、生活の場面で利用者・ご家族にあわせ社会参加・生活サポートの指導を実施します。

愛知県作業療法士会
作業療法士は、その人が住み慣れた地域で活き活きとした生活を送れるよう、仕事、遊び、日常的な生活行為などのさまざまな「作業」を、適切な身体の動き・支援や道具・やり方を検討し出来るようにすることで、心と身体を元気にするリハビリの専門職です。

愛知県歯科衛生士会
在宅や施設で療養する方々を訪問して、口腔ケアの方法の提案や専門的口腔ケアで口腔の清潔を保ちます。また「食べる」「話す」機能を高めるための訓練をします。

愛知県栄養士会
栄養状態に関するリスクを抽出し栄養状態の程度を評価し、反映します。具体的には、栄養状態の不良の原因となる食事摂取量の過不足、咀嚼・嚥下障害、食欲不振、低(過)体重、咀嚼機能の低下等の原因を評価し、解決すべき課題を優先順に設定して対応します。
 

 
教育講演 抄録
安全安心のための診療記録のあり方と活用
 
医療法人康誠会東員病院 認知症疾患医療センター 院長、名古屋大学名誉教授
山内 一信

 現代の医療はチーム医療あるいは連携医療なしではほとんど成立ちえない。それほど各医療職の専門化が進み、質・技術の高度化と医療の効率化が進められている。このチーム医療、連携医療を成り立たせているのが診療情報の共有である。共有のための記録の条件は、1)診療記録の内容は誰でも理解できるように論理的、かつ正確に記載されていること、2)標準的な用語を用いること、3)記載様式が整えられていることである(POMRが推奨される)。そして何よりも記載者が記録の重要性を認識していることが根本のように思う。そのためには記録をする医療者の意識改革が必要である。その内容は、1)よい記録を残すという気概をもつ(よく言われることであるが、「良い臨床医は良い記録を残す」JW Hurst)。2)記述の構文は多くの場合パターン化されておりそれに慣れればそんなに難しいことではない(記載することに臆することはない)。3)医師法第24条「医師は、診療したときには、診療に関する事項を遅滞なく診療録に記載しなければならない」の意味は診療そのものは記録が完成してはじめて完結するということである。4)公的文書であることを認識する。5)記録は患者のみならず医療者にとっても安全性に役立つ。6)記録の共有はチーム医療、連携医療の基盤であり、医療という協働作業のための関係者全員のものであって、情報は一人だけのものでないということ、これらのことを診療情報を記録する職種は念頭に入れておく必要がある。
 この共有化を実際に意味あるものにするには、前述の意識改革も重要であるが、これらの要件を満たす診療情報システム(著者は大局的に考えて電子カルテシステムがよいと考える)を構築する必要がある。しかもその記載は項目ごとに整理しておかねばならない。そのためにはPOSシステムがよい。さらに連携の正確性と診療効率を上げるにはクリティカルパスの導入も重要である。ただこれは連携とプロセス管理を重視したシステムであってこれをもって診療記録に充てることはできない。連携を確かなものにするには勿論、電子カルテシステムの導入は必須ではないが、情報の発信、受信、実施、その確認のチェック作業(プロセスのチェック)が必要である。いわゆる「もれ」が生じることはこの確認作業がおろそかになっていることが大きな理由であろう。
 記録・情報の共有システムとして電子カルテシステムを推奨したが、それがすべてではない。これを完璧で意味あるものにするにはレビュー、つまり評価の必要性がある。これらのことを考究、実施してはじめて良質で安全な医療提供が行える記録システムになろう。
 
 
基調講演 抄録
連携におけるファシリテーションの意義
-父を介護した経験から思うこと-
 
特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会 フェロー
鈴木 まり子
 
 現在、医療や介護の分野では、受益者に提供するサービスが高度化している。それに伴い、知識やスキルを専門化せざるをえず、職種の壁ができあがって、互いの連携や統合的なサービスをすることが難しくなっている。そのような中、複数の専門職種が連携・協働して問題解決にあたる「多職種連携」が求められている。多職種連携のメリットは、①多面的な視点から問題を検討することで、複雑な問題の本質を見つけ出し、統合的な視点を軸にした合理性の高い問題解決を行うことができる(問題解決の質の向上)②問題解決のプロセスに参加することで、結論に対する納得性を高め、互いに協力し合いながら主体的に問題解決に取り組む意識を育むことができる(協働・連携の強化)ことである。しかしながら、専門知識や価値観が違う人々が集まって話し合うことには多大な困難が伴い、予定調和の形式化した話し合いになり、本当の意味での多職種連携が行われなくなってしまうため、ファシリテーション技術の早急な導入が求められている。
 ファシリテーションとは、「ことを容易にする、楽にする、促進する(助長)する」という意味の動詞、ファシリテート(facilitate)の名詞形。ファシリテーションは、誰かが何かをするのを容易にしたり、促進したりするために使われる協働コミュニケーションスキルである。ファシリテーションが使われる目的や用途は様々だ。具体的な成果や合意を生み出すためにも、学習や理解を促進するためにも使われる。短い打ち合わせ、会議や研修、ワークショップなど数時間から数日程度の場合や、プロジェクトや組織変革など長い期間に及ぶものもある。医療においても、多職種の人と人とがお互いを活かしながら建設的な方向へ紡ぎ促進する技法である「ファシリテーション」が注目されはじめている。
 特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会(FAJ)の「多職種連携ファシリテーション」(略称:IPF)プロジェクトでは、複数の専門職種が連携・協働して問題解決にあたる「多職種連携」(インター・プロフェッショナル:IP)におけるファシリテーションの活用を調査・研究することを目的に、2010年9月に発足した。IPFプロジェクトでは、地域包括ケアにおける多職種連携をモデルケースとして、①現在、どのような会議運営がなされているのか?②何が重要な課題となっているのか?③ファシリテーションがどのように適用できるのか?④法人としてどのように支援ができるのか?の4点を中心に検討を行った。
 調査・研究の方法としては、厚生労働省主催「地域包括ケア推進指導者養成研修」(2010年10月~2011年2月、全国17会場で実施)において、IPFプロジェクトメンバーが「ファシリテーション技術の修得~ファシリテーターの役割と課題解決のための会議のあり方~」と題した約4時間の講義・演習を担当した。この研修には、全国の地域包括支援センターから1,600名を超えるセンター長(またはそれに準ずる方)が参加しており、この参加者を対象にアンケート調査を実施した。
 調査の結果、多職種連携の会議を成功させる3つの提言として、①会議の内容を整理し、目的に合った会議運営をする②職種の壁を打ち破るチームづくりが必要である③誰もが簡単に会議運営できるツールの開発をまとめた。講演では、プロジェクトの取り組みの報告を通して、多職種連携におけるファシリテーションの意義と方法について、在宅で18年、特別養護老人ホームで7年父を介護した際、家族として参加した多職種による会議の体験も含めてお伝えしたい。
 
 
学生ポスターセッション
 
1)手術器具における医療事故防止のための個体識別管理のあり方研究 ⇒ 抄録1
  ~鋼製器具2次元シンボル表示標準ガイドラインの見直し~
 
2)注射薬における誤薬防止のための新バーコード表示普及は万全か ⇒抄録2
  ~アンプル・バイアルの GS1 DataBar表示実態の調査~
 
3)ペースメーカから携帯電話を22cm離す指針を緩和すべきではないか ⇒抄録3
 
4)歯科インプラント手術の情報提供は万全か
  ~歯科診療所におけるホームページの現状と問題点~ ⇒抄録4
 
5)若年層献血の増加には附帯サービスの見直しが必要ではないか ⇒抄録5
  ~大学生アンケートによるサービス期待の意識調査~
 
6)万引防止装置設置管理者の利用者安全に関する意識調査研究 ⇒抄録6
 
7)AEDステッカーはAED使用範囲拡大に役立っているか ⇒抄録7
  ~AED設置管理者とAED製造販売業者の意識比較~
 
 医療の安全に関する「川柳」公募 入賞作品決定
第九回テーマ「お産に関する安全」
 
医療の安全に関する研究会では、医療の安全に関する関心を高め、会の広報などに使用することを目的に医療の安全に関する川柳を一般から広く募集することを企画しました。
第九回の今回は「お産に関する安全」をテーマとして募集したところ全国から一四〇〇通を超える応募があり、NHK学園の大木俊秀先生に選考を依頼して、三〇作品を選出していただきました。
 この候補作品の中から常任理事会において最優秀作品を決定しました。一二月一五日の研究大会で選者の大木俊秀先生から選考の経過や作品の選評発表をいただきます。

●最優秀賞句
産まれる日勝手に医師に決められる  大阪府藤井寺市  中野真理子

●ノミネート作品
超音波胎児元気に大欠伸       東京都 中村克也
産科医のタクトでベビーシンフォニー 広島県 石崎勝子
先端の医学と母と岩田帯       徳島県 大釜洋志
経験が分娩室を守ってる       広島県 藤井きょう子
予定日に合わせ逆子の向き直る    奈良県 田村靖彦
助産師の眉間が今日も晴れている   鳥取県 門脇かずお
帝切が適切だった母子は無事     愛知県 前田祥子
母さんと同じ産院もう安心      長野県 山崎雅子
もう二人産む気初産無事に済み    岐阜県 三浦一郎
生かすため女子も立派に腹を切り   山形県 梅津康治
助産師と医師に指示出す経産婦    岐阜県 岡田佳子
難産をのりこえクルリこんにちは   東京都 細山田美佳
産院を探して山の向こうまで     奈良県 水谷あづさ
産科医のナビで産道子が通過     新潟県 荒井千代子
最新の分娩室はNASAのよう    大阪府 山野大輔
医師の手を借りて安産乳滲む     宮城県 坂田美奈子
胎内の寝相も治す魔法の手      岡山県 今井貨預
切開をすれば良かった苦い過去    埼玉県 齋藤升八
逆子でも夢は飛行士宙返り      北海道 佐藤喜子
促進剤スーダラ節で飲む娘      千葉県 幸田芳明日
分娩の痛み分けあうナースの手    石川県 前田恭子
看護師の大丈夫よに気持ち晴れ    鳥取県 小林純子
ただ無事に産まれただけで金メダル  長崎県 福島洋子
助産師がいるだけでもう千人力    神奈川県 島田祥子
天地無用貼って逆子を戻したい    兵庫県 佐々木真由美
助産師がお産済むまで鬼に見え    滋賀県 満嶋かおり
ヒーヒーヒフーフーフーですっと出る 秋田県 菅原義昭
妻が産む慣れっこ医者が取り上げる  愛知県 志村紀昭
陣痛へ呼吸を合わせパパとなる    山梨県 風間なごみ

 
 
医療の安全に関する研究会 理事会議事録
 
日 時 2012年6月16日(土)午後1時30分~3時30分
場 所 名城大学名駅サテライト(MSAT)会議室
出席者 以下のとおり14名、他に委任状8名
    島田康弘、加藤良夫、北野達也、齋藤悦子、酒井順哉、堤寛、増田聖子、松葉和久、
    吉田嘉宏、稲垣克巳、江場康雄、加藤憲、品田知子、藤原奈佳子(敬称略)
議題
1.決算の承認の件
 齋藤常任理事より、別紙資料(平成23年度会計報告書等)にもとづき決算報告、別紙「監査報告書」を回覧し、決算案を承認した。
2.予算の承認の件
 増田常任理事より別紙「平成24年度予算案」提案。単年度赤字の点、予備費が少額の点等について指摘がなされた。意見交換の後、予算案を承認した。
3.役員改選の件
 島田理事長より別紙役員案が説明され、役員案が決定された。
4.研究大会の準備状況報告の件
 別紙チラシ案に基づき、本年12月15日(土)午前10時から愛知淑徳大学星が丘キャンパス(名古屋市)にて第17回研究大会が開かれること、大会のテーマは「安全安心のための在宅医療と介護の連携-情報共有のあり方を考える-」であること、ならびにその準備状況が報告された。参加費については意見交換の上、一般・会員とも2000円とし、事前申し込みの場合は200円引きとすることを決定した。
5.来年の研究大会(第18回)の件
 研究大会の持ち方について、従来どおり丸一日を充てる方法に変えて、軽めの講演会を年2回開催する案などが提案され、常任理事会に一任することとなった。
6.その他
 酒井常任理事より、当研究会の研究助成を受けて自動体外式除細動器(AED)誘導表示に関する研究を進めたいとの提案があり、当研究会として研究助成することを決定した。

 
医療の安全に関する研究会 総会議事録
 
日 時 2012年6月16日(土)午後3時30分~3時40分
場 所 名城大学名駅サテライト(MSAT)会議室
出席者 以下のとおり14名、他に委任状50名(会員160名、定足数はその4分の1以上)
    島田康弘、加藤良夫、北野達也、齋藤悦子、酒井順哉、堤寛、増田聖子、松葉和久、
    吉田嘉宏、稲垣克巳、江場康雄、加藤憲、品田知子、藤原奈佳子(敬称略)
議題 1~6 理事会に同じ


平成24年度 医療の安全に関する研究会 役員
 
理事長   島田 康弘  日本聴能言語福祉学院 学科長、名古屋大学名誉教授
常任理事・事務局長   加藤 良夫  南山大学法科大学院 教授、弁護士
常任理事 北野 達也  星城大学大学院健康支援学研究科 医療安全管理学講座 教授
       齋藤 悦子  中京学院大学看護学部 教授
       酒井 順哉  名城大学大学院都市情報学研究科 保健医療情報学 主任教授
       堤   寛   藤田保健衛生大学医学部 第一病理学 教授
       増田 聖子  増田・横山法律事務所 弁護士
       松葉 和久  愛知きわみ看護短期大学 客員教授
       吉田 嘉宏  医療を良くする会 代表世話人
理事    芦澤 直文  横浜逓信病院 嘱託、元横浜逓信病院 院長
       天野  寛   愛知県医師会総合政策研究機構 主任研究員、元愛知新城大谷大学 教授
       池田 卓也  医療法人淀井病院 顧問
       稲垣 克巳  「克彦の青春を返して」著者
       江場 康雄  株式会社エバ 代表取締役会長
       加藤  憲   愛知県医師会総合政策研究機構 主任研究員
       品田 知子  元富士通名古屋支店健康相談室 保健師
       篠崎 良勝  八戸大学人間健康学部 講師
       鈴木 俊夫  鈴木歯科医院 院長
       出元 明美  陣痛促進剤による被害を考える会 代表
       藤原 奈佳子 愛知県立大学看護学部 教授
       山内 桂子  東京海上日動メディカルサービス株式会社 主席研究員

監事    多田  元   多田法律事務所 弁護士
        寺町 教詞  元東海医療科学専門学校非常勤講師





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