【医療提供者と医療の受け手の関係】
医療における信頼関係について、医療法の第一条の二に「医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに、その内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。」とある。
医師と患者との関係について、脊柱靱帯骨化症に関する調査研究班(厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業)の質問紙調査の研究成果を以下に紹介する。対象は医療機関に受診の頸椎疾患患者306名(男性212名、女性94名)およびこれらの患者の主治医であった。なお、頸椎疾患患者の診断病名は、後縦靱帯骨化症184名、頸椎症性脊髄症122名であった。患者の回答である<医師との関係>と医師の回答である<患者との関係>ともに回答があった231名について、医師が回答した<患者との関係>が「大変良好」と回答した116名のうち、患者が回答した<医師との関係>が「大変良好」が53名、「まあ良好」が38名、「普通」が22名、「あまり良くない」が2名、「悪い」が1名であった。医師が患者との関係を「大変良好」と考えている患者116名のうち、25名(21.6%)が<医師との関係>を「普通~悪い」と回答していた。特に医師が<患者との関係>が良好と思っているが、その患者は<医師との関係>をむしろ悪いと思っている場合の患者の特徴として、患者自身による日常生活評価で支障の程度が大きいこと、緊張・不安の状態であることなどが抽出された1)。
この研究結果から、医療提供者と医療の受け手の互いの関係の感じ取り方に相違がないか常に医療提供者は気を配ることが必要であり、良質な医療を担保するためには、患者の日常生活での状況把握などが重要であることが示唆された。各医療職種のさらなる患者へのかかわりが必要となるであろう。
医療提供者の医療の受け手への接近の様相は、その状況により、関わりの程度や方法は様々である。Virginia Avenel Henderson(1897-1996)は著述『看護の基本となるもの(Basic Principles Of Nursing Care)初版1961年』の中で<看護をする>ということは看護の対象となる人が何を欲しているかを知るために「その人の皮膚の内側に入る(to get inside the patient’ skin)」ことであると述べている。対象となる人の立場を考える、その人の身になるという一般的な表現よりさらに奥深く、強く印象に残る表現であり、医療提供者が医療の受け手に関わる際の心構えとなる名言である。
In the Nature of Nursing Nurse role is,” to get inside the patient’ skin and supplement his strength will or knowledge according to his needs.”(Virginia Avenel Henderson)