医療の安全に関する研究会
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「医療の安全に関する研究会」ニュース
Newsletter No.27
(2007.11.1発行)
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巻頭言
医療の安全に関する研究会
理事長島田康弘
今年はいつまでも暑さが続くような気がしますが、皆様にはますますお元気でご活躍中のことと存じます。第12回研究大会のご案内と巻頭言を申し上げます。
第12回研究大会は大会長が加藤良夫事務局長です。加藤氏は、第10回の記念大会を担当していただきましたので皆さんよくご存じだとは思いますが、医療事故と患者の人権問題を専門とする弁護士で、南山大学法科大学院教授です。場所は南山大学のキャンパス内で行われます。
この大会では第7回大会で行った以来の研究発表会(ポスターセッション)が冒頭に行われます。
このセッションでは医療の安全に関することをテーマにしていただければどなたでも発表できます。
限られた時間ですが、皆様のご参集をお待ちします。詳細はチラシの後面をお読み下さい。
大会のテーマは「医療事故と刑事罰」です。医療者は医師法21条があるにもかかわらず医療だけが刑事罰を免れると思ってきただけに、医療が刑事罰の対象となることでパニックに陥っていると思いますが、一般の人たちからみるとこれは当たり前のことです。このあたりのことに対して大会長講演「被害者の『5つの願い』を踏まえたシステムの構築を!」、特別講演の佐伯仁志氏の「医療過誤と刑事責任」がカバーし、シンポジウム「医療事故と刑事罰を考える」で皆さんとじっくりと考えていきたいと思っております。また助成研究報告として酒井順哉氏の「医療機関における医療事故調査のあり方に関する研究」がなされます。まさに医療事故と刑事罰一色の研究大会になりそうです。
午前中には第9回本大会から実施しております医療の安全に関する川柳募集の優秀作品の紹介と表彰が行われます。今年は4069通ものご応募がありました。第9回からずっとみていただいているNHK学園の大木俊秀氏に、楽しいご講評をお聞かせいただきます。
本大会は医療者にとっては少し頭の痛い問題が多いと思います。また一般の人たちにとっては何かすっきりとした会になるかもしれません。しかし要は一般の人たちと医療者がいかに対等に話し合い自分たちの医療をよくしていくかにかかっていると思います。いろいろと議論するところは多いと思われます。できればその議論を通して何か社会に提言するものができればと考えています。


 
医療の安全に関する研究会
第12回研究大会


大会長講演 加藤良夫(南山大学法科大学院教授 弁護士)

テーマ 「医療事故と刑事罰」
〜刑事罰を問わないのはどういう場合だろうか
医療事故の要因を分析し、医療の安全につないでいくためには
どういう考え方と仕組みが必要だろうか〜」
 

日 時:2007年12月1日(土) 10:00-17:00
 
場 所:南山大学名古屋キャンパスB棟3階B31教室
     (名古屋市昭和区山里町)
 
参加費:一般 2,000円 会員 1,500円 学生 1,000円
 
 どなたでも参加できます。郵便振替(口座番号:00870‐7‐104540 名義:医療の安全に関する研究会)で参加費をお払い込みください。「参加証」をお送りします。当日参加も可能ですが、できるだけ事前申し込みをお願いします。
※振込用紙の通信欄に、「研究大会参加費」、「一般・会員・学生の種別」、「人数」をお書き添えください。参加証の発送は11月以降の予定です。」

                 <<< プログラム >>>
9:30      受付
      (総合司会) 齋藤悦子(学校法人名古屋医専(仮称) 副校長・教授)
10:00-11:00 研究・実践報告 → ポスターで10演題が発表されました
      (座長) 松葉和久(名城大学薬学部教授)
            天野 寛(新城大谷大学准教授)
            宮治 眞(名古屋市立大学 客員教授)
      (演題) ポスター詳細は下のページをご覧ください
11:00-11:10 理事長挨拶   島田康弘理事長(名古屋大学大学院医学系研究科教授)
11:10-11:35 「医療の安全に関する川柳募集」  講評と表彰
            大木俊秀(NHK学園)
11:35-12:00 助成研究報告「医療機関における医療事故調査のあり方に関する研究」
            酒井順哉(名城大学大学院) → 特別研究成果報告書あり方ガイド
12:00-12:30 大会長講演「被害者の『5つの願い』を踏まえたシステムの構築を!」
            加藤良夫(南山大学法科大学院教授 弁護士)
<昼食休憩>
13:30-14:15 特別講演「医療過誤と刑事責任」
            佐伯仁志(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
14:15-16:50 シンポジウム「医療事故と刑事罰を考える」
      (コーディネータ) 増田聖子(弁護士)
      (シンポジスト)  上田裕一(名古屋大学大学院医学系研究科教授)
                 豊田郁子(医療被害者)
                 吉越清人(警察庁刑事局刑事企画課長補佐)
16:50-17:00 次期大会長挨拶 江場康雄(潟Gバ代表取締役)

 
大会長講演 要旨
被害者の「5つの願い」を踏まえたシステムの構築を!
南山大学法科大学院教授 弁護士>
加藤良夫
1.医療事故の被害者の『5つの願いJ
死亡又は重篤な後遺症を負った被害者は「5つの願い」を持っている。第1は、死んだ人を返して欲しい、もとの身体にもどして欲しいという「原状回復の願い」であり、第2は、本当のことが知りたいという「真相究明の願い」であり、第3は、反省点があれば率直に謝って欲しいという「反省謝罪の願い」であり、第4は、三度と同じ過ちは繰り返して欲しくないという「再発防止の願い」であり、第5は、きちんと償いをし、支援をして欲しいという「損害賠償の願い」である。
 
2.医療事故に取り組む『基本姿勢J
医療によって思いがけず患者の生命・健康を害したときには、医療の提供者は、『隠さない、逃げない、ごまかさない』という「基本姿勢」に立って事故に至る経過とその原因、背景を検討し、被害者に対し誠実に説明責任を尽くすことが求められる。
 
3.院内医療事故調査委員会
一定規模以上(300床以上)の医療機関で死亡等の重大な事故が発生した場合には、被害者の上記「5つの願い」を踏まえ、前記「基本姿勢」のもと、院内において、公正で客観的な事故調査を速やかに実施する必要がある。そのためには、内部の委員と外部の委員の割合を1対1(実際は原則として3名対3名)の割合で構成し、外部委員には、臨床台ヒカの高い医師のほか、日頃より患者側でカルテ等の検討をしてきて調査能力のある弁護士が参画することが望まれる。このような弁護士が事故調査に加わることによって被害者側には公平感・安心感が広がり、事故調査についての信頼性も増すものと考えられるからである。
院内医療事故調査委員会の設置の趣旨は、再発防止のための教訓を引き出すことにある。したがって事故調査を遂げた上で、改善のための提言をまとめることが重要である。改善点としては、システム上の問題点にまで及ぶことが求められる。なぜなら、一見個人的なミスのように見られるケースであっても、背景事情にさかのぼってよく検討すると、チームのあり方や人員の配置、 トレーニングシステム、情報の伝達等に関連することがらが浮かび上がってくるからである。さらには、医療行政上の施策の不備等が関連していると考えられるならば、それらのことについても言及がなされてしかるべきである。
 
4.民事責任、刑事責任、行政責任
医療事故に伴う民事、刑事、行政上の各責任問題の処理のあり方を検討することなく医療界の自浄作用を期待することも困難である。正直に進んで真実を述べ、謝罪し、再発防止に向けた努力を重ね、賠償問題にも誠実に対応しようとしている限り、被害者はいきなり民事裁判を提起したり、刑事告訴したり、行政上の処分を求めたりすることは通常考えられない。民事、刑事、行政上の各責任問題の顕在化は、被害者がどのように感じ、どのように行動するかにかかっている。しかも被害者の行動は、事案の内容とその後の医療側の対応によって決せられる。よって、医療機関、医師は患者の思い、被害者の「5つの願い」を十分踏まえて誠実な対応をすべきである。
 
5.厚生労働省等の動きから
厚生労働省は、以下のとおり、諸施策をすすめてきた。
@医療安全支援センターの設置(H15.4)
A診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業(H17.9)
http://www.med―model.jp/index.html
B産科医療における無過失補償制度創設への取り組み(H19.2)
産科医療補償制度運営組織準備室 http://jcqhc.or.jp/htm1/Obstetric.htm
C診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会(H19.4)
「これまでの議論の整理」2007/8/24厚労省医政局公表:
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/08/s0824-4.html
そして、国会においても医療の安全に関しては決議がなされている。
すなわち、参議院厚生労働委員会において、平成18年6月13日に、「政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。医療事故対策については、事故の背景等について人員配置や組織・機構などの観点から調査分析を進めるとともに、医師法第21条に基づく届出制度の取扱いを含め、第二者機関による調査、紛争解決の仕組み等について必要な検討を行うこと。」
又、衆議院厚生労働委員会において、平成18年6月16日に、『「安全で質の高い医療の確保・充実に関する件」について』として「特に、志の高い医療従事者が患者の生命を救い健康を守るために、自らの技量を十分に発揮し、安心して本来の医療業務に専念できるようにしていくことが重要である。こうした観点から、地域の実情に応じた医師確保対策を講じていくことなどにより、小児救急医療・周産期医療に係る勤務医、看護職員等の労働環境の向上や医療安全の推進を図っていくとともに、医療事故等の問題が生じた際に、医療行為について第二者的な立場による調査に基づく公正な判断と問題解決がいつでも得られるような仕組み等環境を整備する必要がある。」旨の決議がなされた。
 
6.被害者の「5つの願い」を踏まえた制度設計とは
患者の「適正な医療を受けたい」という願いと医療者の「適正な医療を提供したい」という願いは、基本的に一致しており、協働が可能である。その確信のもと、被害者の「5つの願い」を踏まえた制度案としては種々考えられると思われるが、大会長講演の中では、@ 「医療被害防止・救済センター」構想とA医療安全委員会構想について、図を用いて解説することとしたい。
 
 

 
特別講演 要旨
医療過誤と刑事責任
東京大学大学院法学政治学研究科教授
佐伯仁志
1 最近の動き
近年、医療過誤に対する刑事責任の追及が増加している。その原因としては、@被害者(遺族)の処罰感情の増大、A警察に対する届出件数の増加、B医療関係者に対する不信の増大などが考えられる。もっとも、現在でも、民事訴訟で過失が認められた事件で刑事責任が追及されたものはごく一部にすぎない。それは、刑事過失は民事過失よりも重大なものでなければならないと解されていることに起因するのかもしれないが、どのような意味で刑事過失が民事過失よりも重大なのかは明らかではなく、今後の検討が必要である。医療過誤に対する刑事責任の追及において、医療機関などの組織自体の責任を追及する規定は、現在の刑法には存在していない。しかし、最近では、直接医療に携わっていた者だけでなく、病院の管理監督責任者の刑事責任を追及する傾向が出てきている。
 
2 刑事責任追及の評価
医療過誤に対する刑事責任の追及は、適切ではなく、やめるべきである、という意見が聞かれる。その理由としてよく挙げられているのは、@刑罰は医療事故の防止に効果がない、A萎縮医療に陥る、B個人責任を追及する刑罰は、組織的な医療行為に対する責任のあり方に適応していない、Cアメリカでは医療過誤は刑事処罰の対象とされていない、D医療関係者が自己保身に走るため、事故原因の解明が困難になる、E専門的知識を持たない捜査機関ではなく、医療事故専門の調査機関が調査すべきである、といったものである。これらの指摘には、それぞれ傾聴に値する点があるが、刑事責任の追及を断念する理由としては、十分なものとはいえないと思われる。
 
3 今後の課題
医療事故の処理において必要なことは、@原因の究明と再発防止策の実施、A被害回復、B責任追及の3つであるが、責任追及は、必ず刑罰によって行わなければならないということではない。
従来の日本の法制度の問題点は、刑罰以外の責任追及の手段が存在しなかったことにある。よリー般的に重要なことは、医療の現場における透明性の確保である。従来、医療現場の不透明さが、被害者や一般国民の不信感を招き、また、事案解明のために刑事手続が利用される傾向を生じさせてきた。透明性の確保は、医療過誤に限らず、終末期医療などの分野においても重要な課題である。
現在行われている「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」や厚生労働省で開催されている「診療行為に関連した死亡にかかる死因究明等の在り方に関する検討会」の成果が期待される。


  
シンポジウム
「医療事故と刑事罰を考える」
コーディネーター 弁護士
増田聖子
医師ら(看護師、薬剤師などの医療従事者を含めて、ここでは医師らといいます)が、医療過誤を起こしたときには、次の3つの法的責任の有無が問われることになります。
民事上の責任(被害者に損害賠償金を支払うこと)
刑事上の責任(業務上過失致死傷罪に問われること)
行政上の責任(免許剥奪や業務停止などの処分を受けること)
この3つの責任は、それぞれ、医師らがその責任を負うべき理由、根拠となる法や、有無0内容を定める法的手続きを異にしています。
医師らに、刑事上の責任が問われた最近の裁判例としては
横浜市大の患者取り違え事件
  教授、医師2名、看護師2名(各罰金50万円)
  医師(罰金25万円)
都立広尾病院の消毒薬誤点滴事件
  看護師(禁固1年、執行猶予3年)
  看護師(禁固8月、執行猶予3年)
  院長(懲役1年、執行猶予3年、罰金2万円)
  但し、医師法違反、虚偽有印公文書作成、同行使
埼玉医大総合医療センターの抗ガン剤過量投与事件
  教授(禁固1年、執行猶予3年)
  大学助手(禁固1年6月、執行猶予3年)
  大学助手(禁固2年、執行猶予3年)
京都大病院の消毒用エタノール誤吸入事件
  看護師(禁固10月、執行猶予3年)
慈恵医大青戸病院の腹腔鏡下手術事件
  医師(禁固2年6月、執行猶予5年)
  医師2名(禁固2年、執行猶予4年)
などが注目をあつめました。
そのようななか、いわゆる福島県立大野病院事件(医療過誤による業務上過失致死と医師法21条違反を理由に、産婦人科医が逮捕、起訴されて、現在公判中の事件)を契機に、医療過誤における刑事責任の在り方が、最近、とくに、医療界を中心に、問われるようになっています。
そこで、このシンポジウムでは、刑事法の研究者である佐伯仁志教授、医療界から上田裕一医師、被害者の立場から豊田郁子さん、警察の立場から吉越清人さんを、パネリストとしてお迎えし、それぞれから、特別講演、基調報告をいただいたあとで、当研究会の主眼である「医療の安全」の切り口から、会場のみなさまとともに、医療過誤において刑事責任がどうあるべきかという問題を議論したいと考えております。
議論いただきたい骨組みはおおよそ次のような点です。
医療過誤において
・刑事上の責任を問う必要はあるのか、ないのか
  刑事上の責任を問わなければいけないのはどういうときか
  刑事上の責任を問わなくてもいいのはどういうときか
・刑事上の責任を追及することは医療の安全につながるか
・刑事上の責任を追及することによる利点と欠点はなにか
・刑事上の責任に相当する自律的処分制度はどういうものか など
みなさまの積極的なご参加をお待ちしております。
 
<参考資料>
・業務上過失致死傷罪 (刑法211条1項前段):「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁固又は百万円以下の罰金に処する。」
・医師法21条:「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」
・ジュリスト N o1339 60頁以下 弁護士飯田秀男 「刑事司法と医療」から引用

立件送致数:届出を受理した件数のうち、平成17年末までに立件送致した件数
年別立件送致数:届出の年に関係なくその年に立件送致した件数
平成H年から平成16年4月までに飯田弁護士が収集した裁判例79件 年平均15件程度

  
シンポジウム 要旨1
医療の質・医療過誤をどのように評価するのか?
名古屋大学医学部附属病院 前副病院長・前医療安全管理部長
上田裕一
「医療崩壊」の著者の小松秀樹氏が提唱されているように、「医療とはどういうものか?」、医療事故の場面では患者・家族と医療側の考えに隔たり(饂齢)が存在することが明らかになる。医師は医療には限界があるだけではなく、危険(侵襲的)であり、適切な医療が施されても、結果として患者に傷害を招く恐れがあり、稀には死は不可避であり、さらにそれを予測できないと認識している。その一方で、患者や家族は、現代医学は高度には発達しており、医療行為が適切であれば、病気は確実に診断されて治癒するものと思いがちである。ちなみに専門医は十分な力量を有していると期待しており、手術は専門医が執刀すれば成功するものと思い込んでいる。さらに、医療においては有害なことは起こらないように徹底するものであり、もしも有害事象が発生すれば、過誤、過失によると判断しがちである。医師や看護師は、労働条件がいかに過酷であろうと、診療・手術では絶対に誤ってはならないと考えている。診療過程で生じた医療事故(過誤の有無を問わない)は、人員配置や長時間連続勤務などや診療システム上の問題ではなく、個人の資質や不注意によるものであり、その医師に責任があると思って追及する。したがって、診療に関連した予期しない家族の死亡については、民事訴訟だけではなくt刑事告訴することも稀ではなくなってきたのが現状である。こうした現状では、医療に関して刑事処分を受けやすい診療を引き受けている臨床医(外科医や産科医)が悲鳴を上げ始めた。医師は、患者の無理な(?)要求を支持するマスメディアや、警察・司法から不当に攻撃されていると感じるようにもなり、士気を失い病院から離れはじめた。昨今のような医療過誤にたいして刑事訴追が今後も行われれば、さらに崩壊の構図が明瞭になってくることは間違いない。また、萎縮医療が氾濫する事態に陥ることは明らかである。
私は、医療行為において、医師(看護師やほかの医療従事者も対象となるが、ここでは医師に限って進める)が業務上過失致死(あるいは傷害)で刑事訴追されることには反対である。医師の医療行為に過誤があったとされる場合には、医師による自律的処分制度が望ましいと考えている。それには、医師会でも学会でも良いが(現状の日本医師会や各学会に限らず、医師免許を有するものが専門職能集団として新たな組織を作ることも必要かも知れない)、同僚を/Ak正に評価できる体制を構築しなければならない。まずは専門医療の標準的な質を把握できていなければ、個別の医療の問題を評価はできない。この仕組みは、医師会や単独の専門医学会だけではなく、学際的組織であることが望まれる。医療従事者以外の第3者も含めた医療事故調査委員会(いわゆる第3者機関が設置されれば、さらによい)が、事実認定と医療事故の原因究明、再発防止策を提言すること、それを受けて前述の医師による自律的処分制度に基づき審査委員会を構成して、当該の医師の診療に問題があると判定された場合には、医師免許や専門医資格に関する処分、研修プログラムを科するという仕組みが現実的ではなかろうか。航空。鉄道事故調査委員会の様な形態も望ましいが、死亡例だけではなく有害事象の発生数を考えると、はるかに多数の陣容を要することは容易に想像でき、実現は困難であろう。やはり、専門医の職能集団が、医療の質を公正な観点からpeer reviewを行うことが現実的である。いうまでもなく透明性と説明責任を果たせる組織であり、公正な結果を出さねばならない。
(なお、犯罪的な医療行為については刑事訴追は当然であり、全く異論はない。)

 
 
シンポジウム 要旨2
医療事故と刑事罰を考える
医療被害者遺族
豊田郁子
―事故の概要―
2003年3月9日の明け方(午前3時30分頃)、長男理貴(りき)が祖父の家で強い腹痛を訴えたため、小児救急外来を受診。受診直後に浣腸が施行され、その際便はほとんど出なかったが、当直医師から「大丈夫でしょう、帰ってもいいですよ。」と言われ、帰宅:帰宅後すぐに寝かしつけようとしたが、苦しそうな様子で寝返りが多く、肩呼吸のようなしぐさを見せ始めたため心配になり、再度受診(午前7時30分頃)。腹部レントゲン、腹部CT、浣腸、採血、点滴が施行され、検査結果を2時間待った後、家族の希望にて入院。(午前H時頃)入院時の病名は、「急性胃腸炎と麻痺性イレウスの疑」。その後、病室に医師が一度も訪室することもないまま、(午後1時30分頃)大量吐血、ショック状態になり、心肺が停止。人工呼吸、気管と胃にチュープを挿管、ボスミン投与、心臓マッサージなどの蘇生が行われ一度心拍が回復したが、その直後に再度の心肺停止。午後4時03分永眠。病院により警察に届出が行われ、警察は事件性がないと判断したが、そのとき警察から「事件性がなくても死因を知りたいという希望があれば解割ができます。」と説明され、不信に思っていた私は、解剖を希望。行政解剖の結果、死因は「絞樋性イレウス」と判明。
2004年1月、地元警察に被害届けを提出.2005年9月、和解交渉の末、病院としての責任は認め、担当医の謝罪がないまま、病院とは和解。事故から4年後の今年3月、当該病院内での医療安全研修会(理貴の命日)で講演。遺族と職員との間で、この時初めて対話が成立した。2006年10月、不起訴が確定。
 
<マスコミ報道に至るまで>
息子の死からlヶ月が過ぎても何の連絡もない病院に、私はカルテ開示で説明を求めようとしました。そう考えていた矢先、ある日突然、新聞社数社から「内部告発文書」が新聞社に届いているという事実を知らされました。それでも病院が事実を明らかにし、きちんと対応してくれることを一番に望んでいた私は、騒ぎ立てたくない思いでカルテ開示の申し出をしました。ところが、実際に受けたカルテ開示の説明は、遺族に対して事実を隠そうとしているようにしかみえない、とても冷たい対応でした。
そのままにしてしまおうとする病院に、私はこの時初めて許せない気持ちでいっぱいになり、取材を受けることを決心、新聞報道となりました。
 
<息子に起きた医療事故の問題点>
。チーム医療体制の不備(コミュニケーションエラー)
救急外来の当直看護師が危機感を感じ、当直医師に外科のコンサルトや大学病院の転科などを勧めたにもかかわらず、当直医師はそれを無視し、緊急性がないと判断したことで、日勤医師にきちんとした申し送りが行われていませんでした。看護師にも同様のことが起こり、救急外来の日勤看護師、病棟の日勤看護師へと引き継がれていく間に、いつの間にか経過観察が緩慢になっていき、息子は病状の悪化を誰にも気付いてもらえることなく、亡くなりました。医師間だけでなく、看護師
の申し送りや経過観察においても適切な引継ぎが行われず、チーム医療がなされていませんでした。
 
シンポジウム 要旨3
診療関連死に係る死因究明制度と
警察捜査の在り方について
警察庁刑事局刑事企画課課長補佐
吉越清人
警察庁は、厚生労働省主催の「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」(平成19年4月〜 7月)へのオブザーバー参加等を始め、関係省庁等と診療関連死の死因究明制度について意見交換を実施してきているところである。診療関連死に係る死因究明制度と警察捜査の在り方について、警察は以下のように考えている。
警察は、現行法上、第一次捜査機関として、犯罪があると思料するときは、所要の捜査を行い、事案の真相を明らかにする責務を負っている。これは、医療過誤事案が業務上過失致死傷事件としての疑いがある場合も例外ではなく、警察は事故原因を究明して、事故関係者の刑事責任の有無を明らかにするため、捜査を行うこととなる。
平成9年以降の医療事故関係届出等件数の推移をみると、平成12年に急増(124件。対前年比83件増)して以降、平成16年まで増加(255件)し、その後若干減少傾向にある。その内訳を見ると、被害関係者等からの届出等にさほど増減がないのに対し、医療関係者等からの届出数が増加しており、社会的反響の大きい事件の検挙や警察への届出の在り方に関する医療団体の見解、最高裁判決(広尾病院事件)が影響しているものと思われる。一方、年別立件送致(付)数の推移をみると、届出等件数の増加に伴って漸次増加しているものの、医師の逮捕事件や医師法第21条違反を立件した例は決して多くはなく(平成9年以降、逮捕事件は3件、医師法第21条違反を立件したのは7件)、「警察は医療現場に過度に介入している」等との指摘があるが、警察としては、そのように認識していない。
診療関連死の死因究明等のための調査機関の設立については、捜査機関に原因究明に対する過度の期待が寄せられているきらいがあること、医療過誤事件の捜査は高度の専門性が必要とされ専門医等に鑑定を嘱託する必要があるが、そうした鑑定嘱託先等の確保が困難となっていることなどの捜査現場の実情を踏まえると、中立・公平で信頼性のある調査機関が設置されれば、警察捜査にとっても大変有用であると認識している。
調査機関の設置後は、過去の判例の基準に照らして、明らかに医師に過失が認められ刑事事件として立件すべき事案については警察が捜査を行うが、そうではない多くの診療関連死事案については、中立・公平な調査機関により、適切に調査・解決されていくものと考えている。
また、事故の原因究明及び再発防止の観点からの死因究明制度と、関係者の刑事責任追及の観点からの刑事手続は、それぞれの目的に照らして併存すべきものであり、両者の役割・目的や専門性を相互に尊重し、必要な協力や活動の調整を行っていくことが重要である。具体的な制度検討に当たっては、刑事事件として立件すべき事案の警察への迅速な届出や刑事訴追の可能性がある場合の警察捜査と調査機関による調査の調整の在り方について、十分に整理することが必要である。いずれにしても、警察と調査機関との信頼関係が醸成されることが前提となるものと思われる。
警察庁としては、調査機関設置の趣旨0目的を十分に尊重した上、捜査上の支障が生じないような制度構築に向けて、関係省庁等との意見交換を積極的かつ継続的に実施していきたい。

 
医療の安全に関する研究会 理事会議事録
日 時 平成19年6月9日土曜日 13時30分から
場 所 名城大学
出席者 島田康弘 加藤良夫 齋藤悦子 酒井順哉 増田聖子 松葉和久
宮治員 吉田嘉宏 天野寛 稲垣克巳 藤原奈佳子 寺町教詞
委任状出席 堤寛 芦澤直文 品川信良 篠崎良勝 鈴木俊夫 出元明美
森島昭夫 山内桂子
定足数を充足していることを確認
 
1 平成18年度決算報告
齋藤常任理事から別紙のとおり決算報告
寺町監事から会計監査報告
承認
 
2 平成19年度予算案
増田常任理事から別紙のとおり予算案提示
稲垣理事から200万円の寄付があったことが紹介された
承認
 
3 役員の追加選任
江場康雄氏(株式会社エバ代表取締役)、加藤憲(愛知県医師会主任研究員)
を理事として追加選任
 
4 研究大会の準備状況について
別紙のようなプログラムについて議論
川柳の応募者数は現在のところ2108通
 
研究・実践報告について
医療の安全に関する研究・実践報告について、ポスターセッションとして公募する
次回の大会長は、江場理事、医療ガスの安全をテーマにして、場所は東京
 
医療の安全に関する研究会 総会議事録
日 時 平成19年6月9日土曜日 15時から
場 所 名城大学
出席者 島田康弘 加藤良夫 齋藤悦子 酒井順哉 増田聖子 松葉和久
宮治員 吉田嘉宏 天野寛 稲垣克巳 藤原奈佳子 寺町教詞
江場康雄 品田友子 酒井俊彰
委任状出席 堤寛 芦澤直文 品川信良 篠崎良勝 鈴木俊夫 出元明美
森島昭夫 山内桂子 ほか68名
定足数を充足していることを確認
1〜 4 理事会に同じ





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