医療の安全に関する研究会
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「医療の安全に関する研究会」ニュース
Newsletter No.25
(2005.12.1発行)
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巻頭言
医療の安全に関する研究会
理事長島田康弘
 今年も各地で異常気象が続きました。ことにアメリカ南部をおそったハリケーンカトリーナの被害は大きく、多くの被災者がでています。年々のご報告を見ていますと世界中がいかに異常気象で悩まされているかがわかります。個人的には私自身、2月の末に脳梗塞にかかり、やっとリハビリの効果も現れてきた今日このごろです。皆様にお会いする頃にはまだ車椅子がはなせない身分でしょうが、よろしくお願いします。
 さて、本年は記念すべき10回大会です。大会実行委員長は理事で事務局長の加藤良夫氏にお願いしました。加藤氏は弁護士でかつ南山大学教授をおつとめで皆さんよくご存じの方です。大会のテーマは彼が長年にわたり培っている「医療事故調査と被害救済」です。医療被害者の願いのうち大きなものの2つが再発防止と、医療被害者救済です。しかし医療事故から医療事故調査会がいかに簡単に立ち上げられ、被害者救済は民事裁判の結果と、いかに簡単に叫ばれていることでしょうか。
 プログラムでは午前中に大会長講演として「安全な医療を求めて」が行われ、続いて「安全性を高めるものの見方考え方」と題した記念特別講演が東京電力の河野龍太郎氏からなされます。午後からはシンポジウムとして「医療事故調査と被害救済を考える」という本大会のテーマに沿ったシンポジウムが催されます。シンポジストは各界を代表する方々で、それらをまとめていくのが理事の増田聖子氏と松葉和久氏です。また指定発言として日本大学小児科の住友直方氏と朝日新聞編集委員の出河雅彦氏を用意しています。シンポジウムでは途中に休憩を入れますが長丁場の3時間半を用意しています。市民の皆様からの積極的なご参加をお願いします。
 それからお昼前にこの度も川柳の応募に対する選出を行います。選者は今年もNHK学園の大木俊秀氏で、今回は手術の安全に関するものです。今回2000通あまりの中から選ばれました。どうか楽しみになさって下さい。
 来年は山内桂子氏のお世話で、北九州で開く予定にしています。各分科会の活動をもとにした発表も期待しています。
もくじ
      
巻頭言 島田 康弘 1
大会プログラム 2
大会長講演要旨 加藤 良夫 3
記念特別講演要旨 河野龍太郎 5
シンポジウム要旨 上田 裕一、後藤 克幸、勝村 久司 6
公募「川柳」入選作品発表 10
指定発言要旨 住友 直方、出河 雅彦 11
理事会・総会議事 13
会計報告 14

 

医療の安全に関する研究会 第10回記念研究大会

医療事故調査と被害救済

日 時:2005年12月10日(土)10:00〜17:00
場 所:名古屋市立大学病院 病棟・中央診療棟3階大ホール(350名)
    名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
参加費:一般 3,000円 会員 2,000円 学生 1,000円
どなたでも参加できます。
郵便振替(口座番号:00870−7−104540 名義:医療の安全に関する研究会)にて、事前に参加費をお払い込みください。追って「参加証」をお送りいたします。当日参加も可能ですが、なるべく事前申し込みでお願いいたします。

プログラム

9:30         受付
10:00〜10:10  開会の挨拶 島田康弘理事長(名古屋大学)
10:10〜10:40  大会長講演「安全な医療を求めて」
              加藤良夫(南山大学)
              座長 齋藤悦子(共立女子短期大学)吉田嘉宏(医療を良くする会)
10:40〜11:40  記念特別講演「安全性を高めるものの見方考え方」
              河野龍太郎(東京電力技術開発研究所 特別研究員)
              座長 宮治 眞(名古屋市立大学)酒井順哉(名城大学)
11:40〜12:10  医療の安全に関する川柳募集 優秀作品の紹介・表彰
              大木俊秀(NHK学園)
              座長 堤  寛(藤田保健衛生大学)
<昼食休憩>
13:10〜14:50  シンポジウム「医療事故調査と被害救済を考える」
              司会 増田聖子(弁護士) 松葉和久(名城大学)
       シンポジスト 河野龍太郎(東京電力技術開発研究所 特別研究員)
              上田裕一(名古屋大学医学部 心臓外科教授)
              後藤克幸(中部日本放送、医療ジャーナリスト)
              勝村久司(医療情報の公開・開示を求める市民の会)
         指定発言 住友直方(日本大学医学部 小児科講師)
              出河雅彦(朝日新聞編集委員)
<休憩>
15:10〜16:40  全体討論会
16:40〜16:50  次期大会長挨拶 山内桂子(東京海上日動メディカルサービス)
16:50〜17:00  閉会の挨拶
 
 
会長講演 要旨
安全な医療を求めて
南山大学法科大学院教授、弁護士
加藤  良夫

1、はじめに
 一つひとつの医療事故には、いくつかの原因や背景が存在している。事故を分析して事故の原因や背景を取り除く努力をしていかないと、同種の事故が繰り返されることになる。すなわち、事故に関する情報は再発防止のヒントを内包する「公的遺産」である。従って医療の安全を考え医療の質を高めていく第一歩は、サーベイランス体制を充実させ、どこでどのような医療事故が発生しているかを迅速かつ正確に把握し、それらを分析し、教訓を引き出し、それを速やかに医療現場に返して生かしていくことの大切さを認識することである。
 しかし、これまで医療界は、医療事故について「臭いものに蓋」式の対応をし、事故の事実を隠蔽することによって保身を図る傾向を示してきた。しかも残念ながら、我が国では医療事故に関する情報を網羅的に集約しそれらを的確に分析し教訓化して生かそうとする第三者機関が存在してこなかった。

2、医療被害者の「五つの願い」
 医療の安全・質の向上に役立つシステムを新たに設けようとする時には、まずもって医療被害者の「五つの願い」に思いを寄せるところからスタートすべきであろう。
 医療事故の被害者は、まず第一に、「死んだ子を返して欲しい」「元の歩ける状態にして欲しい」という「原状回復」の願いを持っている。第二に「どうしてこうなったのか本当のところを知りたい」という「真相究明」の願いがある。第三に「悪い点があったならば反省し、率直に謝罪して欲しい」という「反省謝罪」を求める。第四に「自分が受けた被害は自分だけでたくさんだ。二度と同じ失敗をしないで欲しい」という「再発防止」の願いがある。第五に「自分が受けた苦しみに対し償いをして欲しい」「生活上困っているので何とかして欲しい」という「損害賠償」である。
 以上五つの願いのうち「真相究明」「反省謝罪」「再発防止」は、安全な医療、質の高い医療の実現に直結している。このような医療被害者の心情を考えても、事故後の速やかな被害救済を可能とするシステムの確立と事故防止システムの確立は、同時に実現されなくてはならない。なぜならば、「被害救済は裁判で」という姿勢は、被害者救済の問題を置き去りにするものであり、医療事故防止の本質を見失っているばかりではなく、被害者の共感を得られないからである。真の医療事故防止の営みは、加害をしてしまった医療機関がその被害者を招いて研修会を開くなど被害者と協同して実践されることによってこそ魂が入ると言うべきである。このような協同の営みはすでにいくつかの医療機関で実践されるようになっている。

3、医療機関の説明責任と医療事故調査
重大な医療事故が発生した時に医療側が立脚すべき立場及び、貫くべき基本姿勢を要約すれば、「『隠さない、逃げない、ごまかさない』を基本軸に、患者はもとより社会に対しても説明責任を尽くすという姿勢を貫き、外部委員もメンバーに入れた公正な事故調査委員会により、真相究明のための客観的調査を行い、再発防止のための提言をまとめこれを実践する。被害者の視座も踏まえつつ、このような正直・誠実な態度をとることこそ、被害者や患者から信頼を得る唯一の方法である」ということになる。
 医療側に真相究明・反省謝罪・再発防止への真摯な態度が見られないと、被害者の心の苦痛はより増大する。その意味で真の医療事故調査は、被害者の心のケアの機能も有しているといえよう。
 私はこれまで患者側弁護士の立場から医療過誤事件に取り組んできた。その中で残念ながら、おざなりな、専ら責任回避のためとも思われる院内事故調査報告書も目にしてきた。医療機関が相変わらず医療事故から学ぼうとはせず、事故調査の過程で隠す姿勢、防禦的姿勢を優先させていく限り、医療界全体が自浄作用をうまく働かすことのできない世界として受け止められ、社会的批判を強く受けるばかりでなく、警察・検察の介入への道を大きく開いていくことにもつながることだろう。
 今後、重大な医療事故が発生した際には、どの医療機関であっても、従来の「隠す文化」から訣別し、「正直文化」に向け速やかに公正な事故調査を尽くし、制度改善のための諸活動を展開していくべきであり、そうすれば日本の医療の姿も大きく変えていくことができるであろう。その大きな契機となりうるのが、医療事故調査委員会の活動であると考えている(加藤良夫・後藤克幸編著「医療事故から学ぶ」(中央法規出版)参照) 。

4、「医療被害防止・救済センター」構想
 医療の安全・質の向上のために第三者機関が必要であることについては、ほぼ共通の認識となっているが、その具体的なイメージとなると一致しているわけではない。私は1997年に標記の構想を公表した。その特色としては、@「防止」と「救済」を一体的に取り扱うこと、A事故の教訓を制度改善につなげること、B著しく意外で大変気の毒な結果に対しては過失がなくても補償すること、C情報提供・判定・運営・監視に市民参加を図ること、Dメリットシステムを導入していることである。この構想の要点を記すと以下のとおりである。
 医療被害者はいつでも電話等自由な方法で相談申込ができることとし、救済すべき事案についてはセンターが被害者に対して補償をする。加害者側が事故を隠そうとする等の問題がある場合にはセンターは被害者に代わって加害者側に求償する。但し、速やかに被害者に謝罪し真相究明に協力し再発防止へむけた改善策を立案し実践したような場合には求償しないこともできることとする。センターの理事の過半数は患者・市民とし、医療を受ける側の人たちの声が反映されるような仕組みを作っておく。職員は一般公募方式で採用する。内部機構としては、相談に応ずる部門、講師を派遣する部門、より安全な医療政策を立案する部門等が必要である。また財源については、互助の精神から税金及び患者の一部負担金を充て、医療側・医療メーカーも利益の一部を被害救済のための基金に拠出する。
 この構想については、独立行政法人「総合機構」(旧「医薬品機構」)をさらに発展させ医療事故についても対応できるようにすることもひとつの選択肢であろう。補償対象・補償水準については、財源をにらみつつ、深刻なケースに限定するところからスタートすることも必要なことと考えられる。
 「医療被害防止・救済センター」構想についてはhttp://homepage2.nifty.com/pcmv/ をご覧戴きたい。

 
記念特別講演 要旨
安全性を高めるものの見方・考え方
東京電力株式会社 技術開発研究所
河野 龍太郎

 医療事故が連日のように報道されている。医師の知識不足、技量不足、看護師の不注意など、人間に関するさまざまな要因が指摘され、病院の責任者が「今後は二度とこのようなことのないように職員教育を行い、よりよい医療を提供していきたい」とコメントしていることが多い。確かに職員教育において事故を防止できる場合もある。しかし、これだけでは限界がある。特にヒューマンエラー対策としては全く不十分である。
 筆者は5年ほど前からであるが、医療安全の研究会や医療事故の検討会に参加したり医療事故調査を経験した。この経験から医療における安全性を向上させるためには、ヒューマンエラーに対する見方・考え方を変えることが極めて重要と考えるようになった。見方・考え方が間違っていると、原因として重要でないものやあまり効果の期待できない対策が引き出されてしまう。
 ヒューマンエラーは人間の生まれながらに持つ諸特性と人間を取り囲む広義の環境によりある行動が決定され、その行動がある決められた範囲から逸脱したものである。すなわち、事故の原因とされているヒューマンエラーは、環境により決定された行動が、ある基準に照らし合わせられて評価され、そこから逸脱した場合にエラーと判断される。したがってエラーの視座からみると、エラーは結果であると考えられる。エラーは環境との相互作用の結果だと考えると、人間だけの問題ではなく、広義の環境の問題でもあることが分かる。すなわち、エラーの原因と対策は人間を取り巻く広義の環境にも向けなければならない。
 医療事故が発生すると事故調査が行われる。この第一の目的は事故の再発防止である。事故調査で重要なことは、まず事実の把握と理解である。しかし、この段階で調査担当者が人間の知覚や認知などの基本特性やヒューマンエラーに対する理解が不足していると、不十分な調査で終わってしまう可能性がある。たとえば、警報が鳴れば、それは聞こえているはずだという前提で調査が進んでいきがちであるが、これは誤りである。重要なことは、本当にそれが聞こえたのかどうかという事実の把握がまずなされなければならない。そのとき、人間の知覚特性や認知特性を考慮して、要求されたタスクが当事者の能力の範囲内にあったかどうかを調べることが第一である。過誤の判断はその後である。
 ヒューマンファクター工学における安全なシステム構築では、人間の持っている諸特性を否定するのではなく、それを受け入れ、この人間の持つ諸特性がマイナスで現れないようにシステム全体で考えることを基本としている。医療従事者に人間の能力以上のことを求めても、能力を超えるタスクは実行できない。このことから考えると、「患者中心の医療」では安全は確保できない。医療従事者も人間であるという前提から、「人間中心の医療」でなければならない。そして、現在の医療システムを安全なものに変えるためには、医療システムに関係するすべての人がヒューマンエラーに対する見方や考え方を変えなければならない。ここでいう医療に関係する関係者には当然であるが患者も含まれる。患者も含めたすべての医療に関係する人が医療安全に貢献する義務があると考える。


  
シンポジウム 要旨1 「医療事故調査と被害救済を考える」
医療事故調査・名大病院の取り組み
名古屋大学医学部附属病院 副病院長・医療安全管理部長
上田 裕一

 大規模の医療機関での医療事故の報道は、依然として頻繁に目にすることが多く、特に大学病院での事例は注目されています。この現象は米国や英国でも同様であり、1999年に米国で発行された『人は誰でも間違える:より安全な医療システムを目指して』は大変おおきな反響を呼びました。わが国でも国民の医療事故への関心の高まりとともに、1990年代後半から医療界で医療事故防止へのさまざまな取組みが始まりました。
 名大病院でも、残念ながら医療事故(過誤、過失を問わず、いわゆる有害事象すべてを含んでいます)が発生しています。1000床を超える病床数、400名を超える医師、人事異動の激しい体制ですので、職員全員に安全管理や医療事故への取り組みを徹底するには時間を要しているのが現状です。しかしながら、インシデント報告の状況や事故発生後の対応についてみますと、この数年、安全への意識はかなり滲透してきたと考えております。大学病院には重症症例の紹介患者さんも多く、これらの症例の診療には高度な技術・先進的医療を駆使することも求められ、さらに術前より合併症を有する高齢者の割合も高いことから、合併症の頻度も高くなるリスクがあります。これらのいわゆる合併症の範疇のインシデントについても報告されるようになりました。
 さて、名大病院では 2002年の重大医療事故以来、「隠さない」「ごまかさない」「逃げない」を基本姿勢として医療事故調査を行って参りました。重大事故と判断したものについては、死亡例に限らず、名大病院では複数の外部委員を招請して、医療事故調査委員会を設置し、2ヶ月の限定で調査を行い、報告書をまとめてきました。この医療事故調査委員会では、根本原因分析 (root cause analysis)を徹底的に行い、外部委員からは多くの再発防止策の提言をいただきました。事故調査には、綿密な検証と分析が不可欠であり、外部委員の目から見た評価は、内部のみの委員会とは異なり大きな価値があります。単に、透明性を担保するに留まるものであってはならないと考えています。「事故調査から学ぶこと」、すなわち、具体的な事故の再発防止策を明確にして病院システムとして取り組むことが最も重要でありましょう。
 また、名大病院では死亡事例に限らず、合併症としてインシデント報告された事例のなかで、医療安全管理部が警鐘事例と判断したものについては、関係者(医師、看護師やコメディカル)の参加を求めて、適宜、Morbidity & Mortality Conference(合併症&死亡症例検討会)を開催しています。ただし、医師、診療科によって「合併症」に対する考え方は異なり、混迷している状態と言わざるを得ません。例えば、上記のように重症症例の手術では、術中の大量出血や術後の障害などに対して、「これは合併症だから問題とはならないのでは」「同意書、インフォ ームドコンセントにも合併症の項目には書いて同意をえている」という言葉はよく聞かれます。予見できるのであれば回避するための努力は徹底すべきであり、回避の手立てを尽くさなかった場合には医療事故として問題である、あるいは、何らかの手技で回避できた可能性があるのであれば、医療過誤とも取られかねない、との考え方にも一理あります。もちろん、「何が回避可能で、何が合併症か」「どこまで予期でき、回避は可能であるのか」これらの線引きは極めて難しいことは言うまでもありません。したがって、これらに該当すると思われる事例については、インシデント報告を受けて、医療安全管理部主導で Morbidity & Mortality Conferenceを開催して検討しますと、医療過誤かどうかの判断はともかく、合併症発生に至る過程での埋もれた問題点が明らかとなることもまれではありません。なお、検討内容については、患者さんやご家族に、発生した状況、原因の詳細な説明を医療安全管理部が行い、ご理解いただけるように努めています。
 今後、医療の安全性向上、医療事故の再発防止には、外部委員を含めた医療事故調査委員会とともに院内でのMorbidity & Mortality Conferenceによる多軸的な検討の充実が欠かせないと考えています。


   
シンポジウム 要旨2
医療事故から学ぶ〜事故調査の意義と具体的方法
医療ジャーナリスト(中部日本放送)
後藤 克幸
 
●医療事故 第一報の落とし穴
@事故原因=誰のミスか?というとらえ方
A医療事故の究明は警察の仕事?
B医療事故は個々の病院の問題?

●JCAHOの医療事故指針
@Sentinel Event Policy and Procedure →Root Cause Analysis を推奨
A事故の背景を掘り下げて、改善策(Action Plan)を講じ、
    再発の危険を減じる活動を!

●Root Causeとは?
   ヒューマンエラーや機器の不具合(Proximate Causes)は、
 医療事故の根本『原因』ではない。
   医療プロセスとシステムの欠陥(Root Causes)によって誘発された『結果』である。

●医療事故調査委員会(名大・愛知医大方式)
@おおむね半数は、外部の第3者をメンバーに
▼専門知識にもとづく 独立的 Peer Review
▼ 患者の視点 を反映できる法律家
      ▼ 医療事故分析の知識 を持ち、 医療情報を社会に還元できる人
A査問、処罰が目的ではなく、同じ被害の繰り返しを防ぎ、
    医療の安全・職場の環境を向上させるための活動
B調査報告書は、被害者・家族への報告書でもある

●医療事故分析の具体的な方法
   @事実の認定
   (A)診療録等、院内資料の誠実な開示 
   (B)学会、厚労省、メーカー等、院外関係資料の収集・検討 → 外部委員の役割
   (C)関係者のヒアリング → 外部委員が果たす役割大きい 
      ▼ヒアリングの留意点。
       1)医療事故調査委員会の趣旨と目的を的確に伝える
       2)調査委員会への資料提出やヒアリング発言をもとに処罰・処分しない
       3)ヒアリング出席者の心情に配慮する 
   (D)関係現場、機器等の検証
   A事実の評価
   (A)事故を誘発した根本原因の分析〜Root Cause Analysis
      ▼「誰が?」を問うのではなく「なぜ?」の問いかけを行う
      ▼事故に至ったプロセスと病院の医療システム全体を検証
      ▼再発の危険を減じるために改善すべき問題点を洗い出す
   (B)事故再発の危険を減少させるために必要な改善点を検討する
    ▼事故に至ったプロセスの検討
   ▼病院のシステムの検討
   B改善策(Action Plan)の立案・提言
   (A)具体的な行動計画としてまとめる      
   (B)FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)
   (C)PDSAサイクル
 
●今後の課題 
   @病院全体で取り組むリーダーシップ 
   A求められる医療情報データベース 
      ▼フェア・ルールのもとで医療の質向上をめざす
     ▼ベンチ・マーキングで医療の質向上 → 情報の力でよりよい社会を築く
   B外部の視点、院内文化に・・・ → Mortality & Morbidity Conference

※参考資料;「医療事故から学ぶ〜事故調査の意義と実践」
      編著・加藤良夫+後藤 克幸(中央法規出版)

 
シンポジウム 要旨3
医療事故調査と被害救済
医療情報の公開・開示を求める市民の会
勝村 久司

【司法の健全化が第一の課題】
 これまで被害救済や事故防止の対策が十分にとられてこなかったのは、対策や救済のやり方が悪いというよりはむしろ、事故が事故として、被害が被害として十分に認知されなかったことに原因があると思う。
 医療事故調査と被害救済は、本来は、司法の刑事と民事の役割だ。ところが、検察は富士見産婦人科病院を不起訴にしたことを始め、その役割を放棄してきた感があり、民事も全体としてカルテ改ざん等に甘い傾向があるなど、救済すべき被害の多くを放置してきた。
 まず、改革すべき第一は司法のあり方である、ということは確認しておきたい。司法をあきらめるのではなく、司法が医療事故防止と被害救済に意味のある形でスピーディにその機能を発揮するよう求めながら、他の方策も検討すべきである。

【被害から素直に学ぶために】
 医療の安全のためには、素直に「被害から学ぶ」ということを実践していくべきだ。被害者たちが自らの裁判を終えても医療を改革するための市民運動等を続けなければいけない理由は、現状のままでは同じような被害が繰り返されてしまう危惧を抱いているからに他ならない。ところが、医療界は、ようやくインシデントを収集するようにはなったが、アクシデントの情報を共有する発想にかけている。
 私たち夫婦が長女を陣痛促進剤被害で亡くした長年の医療裁判で勝訴確定した後、被告病院に要望書を持っていった際、病院の幹部らは「この事故を教訓に事故防止に努めていきたい」と発言したが、「それでは、皆さんは、私たちの子どもが亡くなった医療事故がどんな事故だったのかをご存じなんですね?」という質問には黙ってしまったのである。

【病院の中の初動が最も大切】
 事故原因を隠そうとしたり、事故が起こっても嘘をついて被害救済を拒否しようとしたりする医療側に対して、被害者が孤独に闘う構造を変えるためには、まず、医療機関側が主体的に事故調査や被害救済の健全なシステム作りに取り組むべきだし、そのような動きが医療機関や行政の側から出始めていることに期待を寄せている。参考までに、私が考える、「院内事故調査委員会」の目的と原則、更に厚労省検討会の報告書の柱を付しておく。

<院内事故調査委員会の4つの目的>
・事故の事実経過について正しく把握すること。
 (改ざん・偽証を防止するための証拠保全のあり方が大切)
・事故の原因や背景について正しく分析できること。
 (客観性を担保するための委員構成と情報公開が必要)
・事故防止の改革案が健全に提案され実行できること。
 (市民感覚に合った素直な対策をたてることの重要性を認識する)
・報告が情報公開され広く教育・研修に活かされること。
 (未来の被害者を生まないことと過去の被害者のケアに努力する)

<院内事故調査委員会の4つの原則>
・病院は定期的に外部委員を中心とする医療事故防止委員会を実施し、院内事故調査委員会の委員構成や議論の方法、報告書等は、防止委員会の承認を得る。
・医療事故防止委員会や院内事故調査委員会には、司法関係者を中心としてマスコミ関係者などの一般市民代表や医療被害者団体の代表等を委員に入れる。
・議論の内容の健全性を担保するために議論は公開で行い、当該事故の被害者や遺族への説明責任を果たす。また、報告書は必ず広く情報公開され事故再発防止につなげる。
・非公開で行われたり病院内部の委員だけで行われる院内事故調査委員会の報告書には社会的価値や評価を付与しない。

<厚生労働省「医療安全対策検討ワーキンググループ」報告書(2005年6月8日)>
T.医療の質と安全性の向上
U.医療事故等事例の原因究明・分析に基づく再発防止対策の徹底
V.患者、国民との情報共有と患者、国民の主体的参加の促進

  
第2回 医療の安全に関する川柳
手術の安全に関する「川柳」公募 最優秀作品決定!
 
 
全国からご応募いただいた2000通の中から最優秀作品が決まりました。
 12月10日の記念研究大会において、選者の大木俊秀先生(NHK学園)からご講評をいただきます。
最優秀賞句 説明が大船(おおぶね)にする手術台 静岡市 山下 修身
ノミネート作品 執刀医オペの準備はNASA並に             徳島市 桂  隆
人生を嫁にやるよう手術の日 横浜市 千田 朋子
執刀中「あっ」という声出さないで 東京都 加藤 碩一
手術後のハサミの数を確かめる 東京都 伊藤 裕司
清水の舞台の下の手術室 長野市 金井 秀保
こわいのは何でも切ると云う外科医 京都市 佐々木龍夫
手術経て一輪草がまた咲ける 足利市 山田 雅己
その手術あなたの子にも出来ますか? 神戸市 中津 正充
悪いとことってしまえばまた元気!! 沼津市 村岡 祐亮

指定発言 要旨1
医療事故調査委員会を通して事故原因の軽減についての考案
―医師の立場から―
日本大学医学部 小児科
住友 直方

 人間には様々な感違い、うっかりミスはつきものである。しかし、医療の現場においてはこのような間違いは人の死に結びつくことになる。医療現場で事故をなくすにはどのようなことを考えればよいかを、事故調査委員会の調査を通して考案した。医師は人の病を治療することを職とするものであり、種々の方法で病気の診断を行い、適切な薬物、非薬物、手術治療により回復するよう計画をたてる。多くの大学病院では、チーム医療が行われており、個々の判断だけでなく、経験を積んだ医師から、研修医までが意見を出し合い、最良の方法を検討していく。しかし、このような医療は24時間行われているわけではない。夜間や休日は多くの医療機関では研修医と若手の医師による当直体制で診療を行い、可能な検査の項目も限られている。検査を行うかどうかも当直医の判断にまかされることになる。病棟の看護体制も休日、夜間には平日の日中より手薄となる。判断する人数が少なければ、異常に気づくのも遅れ、判断を誤る確率も高くなる。このような現状は今の日本の医療体制では変更することは困難である。少しでも事故を減らすためには、1)研修医、若手医師、看護婦に対する教育、2)上席医師に対する相談体制の確立、3)医療スタッフ間でのコミニケーションを密接にするなどの工夫が必要と考えられた。

指定発言 要旨2
医療事故調査の現状と課題 
―メディアの立場から―
朝日新聞編集委員
出河 雅彦

 医療事故の調査は、被害者への説明責任を果たすとともに、他の医療機関を含めた再発防止の観点からも重要な意義を持つ。相次いで表面化する医療事故を減らし、国民の医療不信を払拭するための第一歩である。
国も事故調査の重要性をようやく認識し、2004年10月から大学病院、国立高度専門医療センター、国立病院機構傘下の病院・療養所に事故の報告を義務づけた。報告対象は、1.明らかに誤った医療行為や管理上の問題で患者が死亡もしくは患者に障害が残った事例 2.明らかに誤った行為は認められないが、医療行為や管理上の問題で予期しない形で患者が死亡もしくは患者に障害が残った事例 3.警鐘的意義が大きいと医療機関が考える事例――などで、発生から2週間以内に財団法人・日本医療機能評価機構に報告する。事故の発生状況に関するデータだけでなく、事故の原因や検証状況、改善策などについても順次報告が求められる。
この事業を他の医療機関での再発防止につなげるためには、何と言っても当事者である医療機関の適切な調査と報告が不可欠であるが、2005年7月29日に日本医療機能評価機構・医療事故防止センターが公表した第2回報告書によると、医療機関からの報告において事故の発生要因に関する記述のないものが全体の28%を占めるなど、病院側の取り組みに問題が多いことがうかがえる。
 朝日新聞では2004年8月、医療機関がどのような事故調査を実施しているか把握する目的で特定機能病院を対象とするアンケートを行った。
調査項目は、「事故発生に関する公表状況」「調査委員会の構成」「調査報告書の公表状況」「調査報告書の活用方法」「事故公表基準の有無」などで、2002、2003の両年度に特定機能病院で起きた医療事故のうち、病院が過誤を認めて公表するなどした結果新聞報道されたケース(33病院44事例)を対象とした。29病院から40事例について回答(回収率91%)があり、病院が調査委員会を設置した38事例について集計した。
 調査委員会のメンバー構成をみると、外部委員を起用したのは27事例(71%)あったが、そのうち14事例では全委員数に占める外部委員の割合が30%未満であった。調査委員長を務めたのは「病院長」が15事例、「副病院長」が13事例で、「外部委員」は3事例であった。事故発生から調査委員会の設置までの期間は、「10日以内」19事例▽「11〜20日後」8事例▽「21〜60日後」7事例▽「61日以上後」4事例で、委員会の開催回数は平均5・6回であった。
 調査報告書の公表(アンケート時点での予定を含む)は19事例(53%)にとどまった。公表する理由は「同様の事故の再発防止」「誠実な対応を示し、医療に対する信頼喪失を避ける」「社会に対する説明責任を果たす」などで、公表しない理由としては「プライバシー保護」「家族・遺族の承諾が得られない」「刑事事件捜査中のため」などが目立った。
このアンケートから、社会的責任の自覚や再発防止に取り組む姿勢に病院間で温度差がかなりあることがわかった。その後、国立大学附属病院長会議は医療事故の公表に関する指針をまとめ、「患者が死亡もしくは重篤で永続的な障害が残ったものは、発生後速やかに公表し、事故調査委員会等で事故原因を調査した後、その概要及び改善策をホームページに掲載する等により公表する」ことにした。

 
医療の安全に関する研究会 理事会議事録

 日時 平成17年6月18日(土)13時から
 場所 名古屋市立大学看護学部1階 会議室
出席者 加藤良夫 池田卓也 松葉和久 吉田嘉宏 酒井順哉 増田聖子 藤原奈佳子 天野寛
寺町教詞
 委任状出席 斉藤悦子 堤寛 宮地眞 芦沢直文 篠崎良勝 鈴木俊夫 出元明美 村松静子
定足数を充足していることを確認

1 島田理事長が病気療養中のため加藤事務局長が議長とする

2 会計報告
資料に基づいて増田常任理事から決算報告し承認
   寺町監事から監査報告(西監事からの監査報告を加藤事務局長代読)
資料に基づいて増田常任理事から予算案を提案し承認

3 研究大会について
次期研究大会 山内桂子常任理事が研究大会長
場所は九州大学
日にちは、12月2日あるいは9日を候補とする
 同窓会会館小ホール200名規模などを検討中
西岡和男教授(公衆衛生)・鮎澤純子教授を実行委員とする
今期研究大会 別紙プログラム案に基づいて研究大会長から提案
  表題は「第10回記念研究大会」とする
記念特別講演とする。10周年の総括を講演する
      
4 川柳プロジェクトについて
  現在700通ほど応募がある
10周年記念紙と併せて昨年の入賞作を掲載する

5 研究費助成について
   酒井常任理事から資料に基づいて、特別研究の申請
    事故調査委員会の在り方の実態の調査と指針つくりがねらい
   研究の方法は、研究会会員から研究班を作成する
以下の議論の上、助成については決定
指針は、特定機能病院だけでなくて、民間病院でも使えるものにしてほしい
   被害者の声を聞きながら研究を進めた方がよい 
規定集やマニュアルを集めてもあまりおもしろみがないのではないか
サンプル調査をしたほうがよいのではないか

6 HPについて
 現在名古屋大にサーバーがあるが、管理が難しいので、酒井常任理事に管理をお願いして、移行する。
   医療の安全に関する写真などがあれば、酒井常任理事に提供する
   
7 10周年記念冊子作成について
   研究大会長を担当した理事らから資料を収集する

8 監事について
  西監事が辞任されるという場合には、本人の了解のうえで、多田元弁護士に監事に選任することについて承諾を得た。

 
医療の安全に関する研究会 総会議事録

 日時 平成17年6月18日(土)14時から
 場所 名古屋市立大学看護学部1階 会議室
出席者 加藤良夫 池田卓也 松葉和久 吉田嘉宏 酒井順哉 増田聖子 藤原奈佳子 天野寛
寺町教詞 品田知子
 委任状出席 85名
定足数を充足していることを確認

1〜8 理事会議事録に同じ
 島田理事長が病気療養中のため加藤事務局長が議長とする

9 特別報告(研究助成)
  奈良大学大坪先生、山内理事から研究助成の中間報告
「看護師が指摘・質問をためらう原因としての医師の個人特性の検討」





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