医療の安全に関する研究会
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「医療の安全に関する研究会」ニュース
Newsletter No.22
(2003. 4.20発行)
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巻頭言
医療の安全に関する研究会・第7回研究大会を振り返って
第7回研究大会長・医療器具・ME機器」分科会担当理事「
名城大学大学院都市情報学研究科保健医療情報学教授
酒井順哉
 昨年11月30日(土)に名城大学薬学部八事キャンパス(名古屋市)メディア教室で開催されました第7回研究大会にご参加頂き誠に有難うございました。今回、研究会のプログラムは、午前中に新たな企画として公募によるポスター発表を実施し、発表者と参加者が時間を気にせず意見交換ができる機会を設けてみました。また午後からは恒例の特別講演、大会長講演、シンポジウムを組みました。
当初、大会テーマを「医療機器を安全に使うために」と絞り込んだため、参加者が少なくなるかと心配しましたが、会員各位や理事の諸先生方の絶大なるご協力を頂き、当方の予測を超え、研究会始まって以来の約250名の参加となりました。
 大会は、理事長の島田康弘(名古屋大学大学院医学研究科・教授)から開会の挨拶で病院で医師・看護師が日常の診断・治療に使っている医療機器、医療器材、医療材料により医療事故がどの程度起こっているかやどうしたら事故が防止できるかについて、一般の方、医療関係者、政策担当者、法律家などの皆さんで活発な意見交換ができる機会となることを期待している旨のご挨拶があり、その後、ポスター発表へ移った。(写真1)
 ポスター発表では8演題のエントリーがあり、発表者はそれぞれ発表方法に工夫されていたようです(写真2)。特に、愛知大学教授・弁護士の加藤良夫先生が熱弁を振るわれていた「医療被害防止・救済センター」の設立構想の発表には、多くの参加者を集めていました(写真3)。また、東海医療工学専門学校の寺町教授は簡単なポスターながら独特の話術で病気の人を支える医療の裏方である臨床工学技士の役割を説明されていました。
 今回、ポスター発表を行って感じたことは、従来の発表方法では得られなかった発表者と参加者が双方向のコミュニケーションが行えたことであり、参加者から大会終了後のアンケートからも是非継続してほしいとのご意見がありました。
 午後には、小生が特別講演やシンポジウムへの前座として、医療機関のアンケート調査に基づいた「医療機関の医療事故防止体制の現状と今後の課題」を発表し、医療機関で同じ原因と思われる医療事故が再発している原因が、医療スタッフの医療機器等の不適正使用や事故状況が公開されていないためであることを指摘させて頂きました。
特別講演には国立国際医療センター内科部長・情報システム部長の秋山昌範先生に「EBM(根拠にもとづく医療)が病院を変える」の講演をお願いしました。EBMは患者さんには聞きなれない言葉ですが、今後の医療の安全に不可欠な手法であり、医師の勘や経験による医療ではなく、誰からも安心・納得できる質の高い医療のあり方にバーコードや情報システムを導入し、医療行為の発生時点管理(POAS: Point of Act System)が必要であることが強調されました(写真4)。
 続いて、加藤良夫先生の司会でシンポジウム「医療機器を安全に使うためのシステムとは」が行われ、パネラーとして平井政己先生(東京都健康局食品医薬品安全部薬事監視課・課長補佐)、土屋文人先生(東京医科歯科大学歯学部付属病院・薬剤部長)、武澤純先生(名古屋大学大学院医学研究科・教授)、小野哲章先生(神奈川県立衛生短期大学・教授)、齋藤悦子先生(藤田保健衛生大学看護専門学校・校長)から医療機器の安全のあり方について各立場で発表があり、集まった参加者は熱心に聞き入っていました(写真5)。
 平井先生から東京都が取り組んでいる医療機器安全性情報ネットワークについてご説明され、都立病院への行政の新たな監視体制について発表されました。土屋先生は、職種別に医薬品誤投与の発生しやすい場面を具体的に説明され、患者確認の徹底や病棟単位でチェックできるシステム開発の必要性が述べられました。また、武澤先生は人工呼吸器の医療事故防止を中心に、日本が報告面・正義・柔軟性・学習面において文化が立ち遅れており、医療の中で改善する必要性が強調されました。小野先生は臨床工学技士を養成している立場から今後の医療機器の安全管理に臨床工学技士の果たす役割が大きく、単に生命維持管理装置の運転だけの診療業務に留まっているのではなく、医療機器全体の保守管理や医療スタッフへの教育の重要性も指摘されました。また、齋藤先生は日常の看護師における診療補助行為の中に医療事故の危険が多く、その対策として、事故防止のための教育体制の整備が強調されました。
 各パネラーからの発表後、総合討論が行われ、参加者からの質問などの受け答えを通し、医療機器を安全に使う考え方として、医療スタッフの安全体制だけに留まるのではなく、患者が安心・納得できる社会システムを医療に根付かすことの必要性を司会の加藤先生からまとめられました(写真6)。
 シンポジウム後、平成15年11月29日(土)に開始される第8回研究大会の大会長となった齋藤悦子先生から、看護の教育をテーマに名城大学天白キャンパスで開催されるとの挨拶がありました。
今年も研究大会で皆様方とお会いできることを楽しみにしております。

もくじ
      
巻頭言
問題提起 堤  寛
投稿     花冷えの偶感 宮治 眞
どのように死ぬか 高齢者終末医療の問題 吉田嘉宏
第7回研究大会チラシ
第7回研究大会のポスター展示の公募

 
医療事故の防止のために患者の立場からも気をつけましょう。
「医療ミスを防ぐ方策」の日本版を作ろう

医療の安全に関する研究会常任理事
名城大学薬学部教授
松葉和久

 医療は人の知識と技能によって担われます。人が関与するということは、人は必ずミスを犯す生き物ですから、医療にはミスが必ず起きることが前提となります。したがって、医療事故を抑制するためには必然的に発生するミスを発見するための多くの関門をシステムとして作る必要があるとされています。いわゆるファイル・セーフという考え方です。医療事故を最小限に食い止めることが医療従事者に求められている使命であります。しかし、例えば「患者さんがくすりを服用する」という行為は、薬物療法という医療の最後のステップであります。医療従事者が常に患者さんの名前を確認して処置することが求められていますように、患者さんも、「いつもそのくすりが自分あるいは家族の療養に使われるくすりであるかどうか」、「使い方は正しいかどうか」、服用の際に確認する必要があります。患者さんは自らがそれを正すことができる立場におり、その局面が医療の安全をチェックする最後の砦といえます。そのためには、患者さん自身がくすりの正しい情報をできる限り知る必要があります。
 過去3年に新聞報道された薬剤事故に関する記事を入手できる範囲で収集して、調べた結果では(2000年から2002年の3年間で報道された記事のうちで発見者が記載された55例)、患者さん自身が投与ミスを直接発見したり、症状の変化を訴えたり、また付添い家族が発見して、重大な医療事故に至らなかった例は、55例のうち26%もありました。この事実は患者さん自身も努力することの大切さを物語っています。
 アメリカ合衆国政府内にある医療の質に関する部門調整の委員会(QuIC)の特別委員会(AHRQ)は、患者の権利法をベースとした医療事故防止のための患者へ5段階の医療の質向上のための提言(Patient Fact Sheet. January 2001: .及びwww.ahrq.gov/consume www. ahrq.gov/consumer/5stepsr/20tips.)をしています。この提言では、第一に「自分の療養に関し疑問・関心があるなら、きちんとたずねて確認すること。もしその説明が理解できなければ理解できる親類か友人を同席させて聞くこと」としています。第二に、「薬を服用している場合はそのくすりのリストを保持し、OTC(一般薬)、ハーブ(薬草・生薬)、ビタミン剤の併用をしているならそれらを含めて、アレルギー・副作用、くすりの効果や副作用への食事の影響や、その他、そのくすりの服用に関する注意事項・警告について確認すること、また手にしたくすりが自分のものと違っているようならばすぐに確認すること」を推奨しています。このように米国政府AHRQは患者が医療ミスを避けるための下記に示す(20 Tips 医療ミスを防ぐための20項目の提言to Help Prevent Medical Errors)を発表しています。この提言は医療全般における注意事項を述べていますが、そのうちの大部分は薬剤関連の助言であります。
 「くすりを理解するた一方、アメリカの医薬品の品質基準書である米国薬局方USPを編纂する会議はをインターネットで公表しています。自分が服用するくすりを充分理解するためめに有用な12の質問」に、これらの質問は極めて有用であります。もちろん、これらの疑問点に対する質問は、薬局でくすりをもらうときに、薬剤師が当然用意しているはずですが、もし彼らが説明をうかつに忘れているようでしたら、遠慮しないで聞くことが肝心です。

提言1 「医療ミスを防ぐ20か条」
20 Tips to Help Prevent Medical Errors
あなたには何ができるか?自分の健康管理に関心を持ちましょう
ミスを防ぐ最も良い方法は、あなた自身が医療チームの一員となることです。
1. くすりについて
2. 医師が全員あなたの今飲んでいるすべての薬を知っているかどうか確認しましょう。
3. あなたがアレルギーや副作用を起こしたことのある薬を医師が知っているか確認しましょう。
4. 医師の書いた処方せんをあなたも読めるかどうか確認しましょう。
5. 処方せんや薬を受け取ったとき、あなたが理解できる言葉で薬の説明を聞きましょう。
6. 薬局で薬をもらうときは「それが確かに自分の医師の処方箋によるくすりかどうか?」を訊ねましょう。
7. 指示された用法・用量に疑問を感じたら、率直に訊ねましょう。
8. 液剤の場合はその量を量るよい方法を薬剤師に訊ねましょう。また用法が分からないときも併せて訊ねましょう。
9. あなたのくすりの副作用については文書で情報を求めましょう。

入院について
10. できれば、あなたと同じ治療や手術を受けた患者さんの多い病院を選びましょう。
11. 入院中は、あなたに直接触れるすべての医療関係者に手を洗ったかどうか訊ねてもいいでしょう。
12. 退院時には、在宅治療計画について医師に説明を求めましょう。

手術について
13. 手術の場合は、あなた自身が、あなたの手術について担当医、手術医が全員同意していることを確認し、明確に理解するようにしましょう。

その他
14. 疑問・質問があれば率直に聞きましょう。
15. 誰かあなたの健康について責任を持って全体的に管理できるホームドクターなどを持ちましょう。
16. あなたの治療に携わる医療者全員があなたの病状についての情報を知っているか確認しましょう。
17. 家族や友人などあなたと一緒に、あなたの症状について訴え、また、あなたを励ましてくれる人を持ちましょう。
18. 「もっと」知るということは必ずしもよいことではない。
19. 検査を受けたとき、「便りがないのはよい便り」だとは思わないほうがいい。
20. あなたの病状や治療について、医師や看護婦にたずねたり、また信頼できるところから情報を得たりして学びましょう。

提言2 「くすりの理解に役立つ12の質問」
A Dozen Questions to Help You Understand Your Medicines
医療機関を訪れるときに、この質問事項をコピーして持っていくと、医師や薬剤師へ質問するときに役立つでしょう。
1. 商品名とくすりの薬効分類(消化薬?降圧薬?)は何でしょうか?
2. このくすりはどんな働きをしますか?
3. どのように使うのですか?
     内服するのか?
     目に入れるか、耳に入れるのか?
     皮膚へ塗ったり、貼ったりするのか?
     またはその他の方法なのか?
     その量は?
     使う回数は?
     使う期間は?
     食事と一緒に服用できるか?
4. 服用を忘れた場合はどうしたらよいでしょうか?
5. 効果が現れる時期は何時ごろでしょうか?
6. 効果の現れをどうして確認したらよいでしょうか?
7. 効果がないようなときはどうしたよいでしょうか?
8. 副作用はどのように見張ったらよいでしょうか?
     副作用が出た場合はどれほど続くでしょうか?
     副作用が起きたときはどうしたらよいでしょうか?
     副作用をどうやって感知するのでしょうか?
9. どうしたら副作用を避けることができるでしょうか?
     服用中の車の運転を避けたほうがよいでしょうか?
     飲酒は?
     だめな食物は?
     併用していけない薬は?
     他に用心すべきことは?
10. くすりの保存方法は?
11. くすりがなくなった場合は?次回はいつきたらよいでしょうか?
12. くすりの使い方で特別な指示はありますか?
    

さらに、下記の提言は、本会常任理事の吉田嘉宏さんから寄せられた「危ない医療から身を守るための20のアドバイス」です。この20項目の提言は、4つの市民団体、イデアフォー、医療消費者ネットワ−クMECON、たんぽぽ、医療を良くする会が検討を重ねてきたもので、2000年2月11日に、東京で開催された公開座談会で、主催者提言としてまとめたものです。言葉遣いや表現は、患者(市民)サイドからの色合いを意識的に強調されている点が特徴的ですが、これも参考とすべき資料です。この座談会の記録集は冊子にまとめられ、各団体で販売されました。

提言3 危ない医療から身を守るための20のアドバイス
市民団体:イデアフォー、医療消費者ネットワ−クMECON、たんぽぽ、医療を良くする会(2000年2月11日)
@ 治療をしたら必ずよくなるという幻想を捨てよう。
A 診断基準や治療法は病院や医師によって違うことを知っておこう。
B 医師のうでまえは、ピンからキリ
C 情報収集には、医大図書館、インターネットなども利用しよう。
D 医療情報は玉石混淆
E 名医の評判、ランキング本はあてにならない。
F 患者会や市民団体は情報の宝庫。積極的に活用しよう。
G 医師に聞きたいことはあらかじめメモしておこう。
H 複数の治療法の説明を医師に求めよう。
I 薬の副作用、手術の後遺症をしっかり聞こう。
J 質問をうるさがる医師は見限ろう。
K 説明を鵜呑みにしないで。医師の誘導に気をつけよう。
L セカンド・オピニオンは、今日の常識
M 検査データやレントゲン写真は患者のもの。臆することなく借りだそう。
N 患者としての自分の直感を大事にしよう。
O 不要と思う検査、手術から逃れよう。
P いきなり5種類以上の薬を出す医師は、要注意
Q 挨拶しない医師、患者の顔を見ない医師、患者を見下す医師はやめよう。
R 入院後、転院するのも『患者の権利』
S お任せ医療よ、さようなら。自分で治療法を選ぼう。
www.mhlw.go.jp/t 日本では、厚生省医療安全対策会議が「安全な医療を提供するための10の要点」
を医療従事者向けに策定しています。その趣旨は医療機関が、患者に安opics/2001/0110/tp1030-1f
全な医療サービスを提供することが医療の最も基本的な要件の一つであるとして、医療の安全に関する
病院などの職員の意識啓発をすすめるとともに、医療安全を推進する組織体制を構築することにあり、
職員の啓発がその目的となっています。

提言4 「安全な医療を提供するための10の要点」
(1) 根づかせよう安全文化みんなの努力と活かすシステム
(2) 安全高める患者の参加対話が深める互いの理解
(3) 共有しよう私の経験活用しようあなたの教訓
(4) 規則と手順決めて守って見直して
(5) 部門の壁を乗り越えて意見かわせる職場を作ろう
(6) 先の危険を考えて要点おさえてしっかり確認
(7) 自分自身の健康管理医療人の第一歩
(8) 事故予防技術と工夫も取り入れて
(9) 患者と薬を再確認用法・用量気をつけて
(10) 整えよう療養環境つくりあげよう作業環境

第9項目に「患者と薬を再確認用法・用量気をつけて」という言葉があります。
この要点の解説として次のような説明がついています。
? 医薬品に関するミスは、医療事故の中で最も多いと言われています。
? 誤薬を防ぐために、医薬品に関する「5つのR」に注意することが必要です。
5つのR Right=正しいとは「正しい患者」「正しい薬剤名」「正しい量」「正しい投与経路」「正しい時間」を指します。
その具体的な取組として
○ 処方せんや伝票などは読みやすい字で書き、疑問や不明な点があれば必ず確認しましょう。
○ 患者誤認防止のため、与薬時の患者確認は特に注意して行いましょう。
○ 類似した名称や形態の薬には特に注意しましょう

この上記の厚生省の医療従事者向け提言と米国における患者側への医療事故を避けるための注意事項を合わせて考えた場合、医療従事者も患者側も、医療の安全のために注意すべきポイントは同じであることを示しています。
ここに提示した資料のそれぞれが、日本では余り考えられなかった患者さん自身が医療に参加する方法とその重要性を示しています。私たちとともに、医療の安全を高めるための提言(日本版)を策定してみませんか。


 
医療の安全に関する研究会
第8回研究大会の予告ご案内
 
本年度の研究大会は日程と会場、大会テーマが決まり、
大会長のもとで内容の具体化が進められています。
追って詳細をお知らせ致します。

日時2003年11月29日(土) 10:00〜17:40
場所名城大学天白キャンパス
大会テーマ「医療の安全に関する教育・研修」
ー安全教育の現状とあり方ー

大会長齋藤悦子(藤田保健衛生大学看護学校・校長)





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