医療の安全に関する研究会
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「医療の安全に関する研究会」ニュース
Newsletter No.16
(2000.11.20 発行)

巻頭言
理事長  島田康弘

立冬とは思えない暖かな日和が続いています。今年も暖冬でしょうか。
本年の研究大会は12月の第2土曜日、9日に名古屋市立大学で開催させていただきます。昨年大阪で行いました研究大会のテーマ「在宅における医療・看護・介護の安全をめざして」を本年も引き続きメイン・テーマにして、多方面の専門家の方々を交えて議論していきたいと考えています。

多くの一般市民の方々にとって、在宅で医療や介護を受けて生活できることはすばらしいことのように思われるでしょう。しかし現実は、現在の制度のもとで様々な問題が未解決のままで医療や介護が行われ、それを受けるもの、行うもの、両者の安全面において大木の問題点を残したままで進行しています。また一方で、我が国はすばらしいスピードで世界一の老人国へと向かっております。
このことから考えますと、在宅における医療・看護・介護はまさに進むべき方向でありましょう。

この研究大会ですべての問題に結論が出るとは考えてはおりません。むしろ、多方面の方々の意見をお聞きして、問題点を整理することにより何か社会に対して提言ができればと考えております。皆様方の積極的なご参加をお願いいたします。

この研究大会の企画は、大会長であられる宮治眞先生の絶大なるご尽力によるものであります。
この場をお借りして謝辞を述べさせていただきます。

それでは12月にお目にかかれるのを楽しみにいたしております。 

 
医療の安全に関する研究会 第5回研究大会 分科会活動報告
在宅医療・看護に関する分科会 活動報告
担当理事:村松静子

当分科会では、第4回研究大会のシンポジウム「在宅医療・看護・介護の安全と課題」の中で浮き出てきた事項に視点を当て、活動の方向性を再検討してみました。当分科会は、あくまで療養者・家族が主役となる在宅、そこでの安全な医療を永遠のテーマとして出発しました。ですから、最終的には在宅医療・看護を実施する上に不可欠な最小限のルールを打ち出すことをそのねらいとしながらも、新たに次のような作業に取り組んでおります。
1. 在宅医療及び在宅看護の実状に加えて, さまざまな情報から今後の方向性を予測し、関連言語 について、分科会としての定義づけを行う。
2. 分科会で検討してきた複数のケースを類似分類し、それらについて、自己選択・連携・チーム マネージメント・柔軟な対応・危機対応・システム・地域性・心・満足度に視点を当て、安全を 核とした本来あるべき理想像を描く。
3, 2で描かれた理想像と現実のギャップ及び問題点について整理する。
4, 在宅医療・看護を推進する上で、それぞれの職種に求められる技術はどのようなことか、それ に関連して起こり得る事故はどのようなものか、等について整理する。
 分科会としては、当初予定の標準案作成を中断し、以上の4点についての作業に切り替え、進めているところです。今後は、これまで作業を続けてきたメンバーで、なるべく早い時期に会合を開き、まとめる方向で進めていきたいと考えております。また、その経過については、随時、ニューズレターで報告させていただくつもりです。
 活用できる確かな標準案を作成するためには、回り道もやむを得ません。しかし実際のところ、本業の傍らで作業時間を確保することの難しさを感じています。

 
安全教育に関する分科会
「医療施設のリスクマネジメント(MRM)」検討会報告
担当理事:堤  寛

1. 本検討会の主旨
 医療事故報道が相次いでおり、各医療施設におけるリスクマネジメント体制の早急な確立が求められています。MRM検討会では、医療施設のリスクマネジメントについてのマニュアルまたはハンドブックを作成して、今後の啓蒙活動に結びつけることをめざしています。業種を越えた情報交換と幅広い視野に立った討論を行いつつ、オリジナリティがありかつ実用的な情報発信をすべく検討を行っています。
2. 活動報告
9月、10月にそれぞれ1回ずつ、計2回の検討会を行いました。参加者はそれぞれ10名あまりで、医師、看護婦に加え、マスコミや検査会社の方にも参加していただいています。検討会の合間に、5名の幹事による情報交換が密に行われており、本検討会の円滑な推進に向けて努力しています。
(1) リスクマネジメントとは
 「危機管理計画」が事故や危害が生じたあとの活動に対する準備を意味するのに対して、「リスクマネジメント」とはこれに予防安全計画を加えたものを示します。手順としては、マネジメントの対象選定を行い、リスクの算定・評価をした上で(Plan)、それに対する対応を検討・実施し(Do)、対応結果を評価(Check)、さらに次の行動を加えていく(Action)、すなわち、PDCAサイクルを回転させていくことが必要です。また、効果的・実践的なスタッフ教育、さらには利害関係者の理解を高めるためのリスク・コミュニケーションが要求されます。
(2) ディスカッション
 現在の日本の医療現場ではスタッフは多忙を極めており、リスクマネジメントに対して充分な時間をさくことができず、まして専任のスタッフを設置できる状況ではありません。海外と比較したときに、日本は医療費・マンパワーともに乏しいのが現状です。日本では、合理的なシステム構築がとくに遅れているために、質より量の医療が行われていることが否定できません。例えば、高度機能病院の代表である大学病院においてもプライマリケア的な治療まで行われている。そして、毎日のように生じるインシデント報告。量に押しつぶされ、質を評価するまでに至っていない。
 病理診断業務にしても然り。現在、病理診断の約40%は民間の検査所にて行われていますが、精度管理が不充分で、誤りが多い。もともとは、病理医の不足から自然発生した分業化なのですが、これにより責任の不明瞭化を生じてしまっています。加えて、衛生検査所における診断料金のダンピング問題。対策として「医療法」の中に医療提供施設として新たに「病理診断施設」を規定することが提案されました。病理診断の質の向上と医療費の削減がその効果として期待されます。また、これを例として、アウトソーシングにおけるリスクマネジメントについても考えていく必要があると思われます。
 医療用具は、リスクを考える上で重要な事項のひとつであり、そのマネジメントについての対策も進められています。例として、医療用具の添付文書の整備、医療用具による医療事故の分析、不具合実態調査、各種感染症の責任内訳など。これまでに、病院内リスク管理委員会の有無によって事故発生率に差があることを示すデータも得られており、医薬品等安全性情報報告制度の見直しなどが提言されています。

以上のように、リスクマネジメントを考えることは、医療の質そのものを再評価することに直結すると考えられます。こうした意見交換が、毎回活発に行われています。

3. 今後の活動について
 来年秋のマニュアル出版を目指して、さらに薬剤・輸血・臨床検査部門などからの参加も求めていこうとしてい ます。現在、各方面で一斉にリスクマネジメント問題に取り組んでいると考えられるので、オリジナリティと実用性の 高い書物をタイミングよく出版する必要があります。

 
「医療廃棄物の安全に関する分科会」活動報告
担当理事:渡辺 昇

 医療廃棄物の安全に関する分科会では、例年通り今年も安全教育に関する分科会と協同で、「研修会」を開催いたしました。
 今年の研修会は、高齢社会の到来・介護保険の実施等によって、今後問題が起こることを予想し(現在でもいろいろ問題が起こっている)「在宅ケアからの廃棄物問題」を取り上げ、特に処理過程での安全対策を中心に討議を行いました。
 なお、開催要項・プログラムは次の通りでした。
医療の安全に関する研修会
  在宅ケア(医療・看護・介護)からの廃棄物
―従事者の安全教育と安全対策を考える―
 医療廃棄物の安全に関する分科会と安全教育に関する分科会は、一般公開シンポジウムや研修会を開催し、院内感染防止対策と医療廃棄物の適正処理について、安全教育の在り方を軸に討議を重ねてまいりましたが、今回は、今後問題になるであろう在宅ケア(医療・看護・介護)からの廃棄物を取り上げ、現状と今後の在り方について討議するため、研修会を開催することにいたしました。
 在宅ケアからの廃棄物は、原則として一般廃棄物として取り扱われることになっていますが、最近の情勢は必ずしも原則通りとはいえず、特に処理現場では苦慮しているようです。このような状態が続けば関係者の安全対策は、おろそかになる恐れがあります。
 研修会では、現状をあらゆる視点から検証して、安全の面から今後の対応を検討したいと考えています。


◇研修会開催要項◇

開催日時 ・ 平成12年11月11日(土)午後1時〜午後4時30分
開催場所 ・ 駿河台日本大学病院講堂 (東京都千代田区駿河台1−8−13)
参加費 ・ 2000円
研修会プログラム

午後1時 開会挨拶
午後1時10分    基調講演
          「従事者の安全教育と安全対策」   
堤  寛 (東海大学医学部助教授)
午後2時10分  「在宅ケア現場から見た医療廃棄物」
中村哲生 (医療法人社団黎明会・常務理事 大塚クリニック・事務長)
午後3時10分  「医療廃棄物処理はどうなっているのか」
(在宅ケア関係特に紙おむつ処理を中心に)
         渡辺 昇 (医療廃棄物研究所所長)
     午後4時 在宅ケアからの医療廃棄物処理を巡って
    講師と参加者によるディスカッション
     午後4時30分 閉会

 
会長講演「在宅療養における職能役割はどうあるべきか」
名古屋市立大学病院 医療情報部  宮治 眞

はじめに
 在宅療養は介護保険が始まって以来、それ以前とは量的にも質的にも異なった局面を迎えている。
介護保険以前は家族介護が主であり、専門職としての職能分担は医師、看護婦が中心であったが、介護保険により日常的な担い手は、ホームヘルパーに移ってきている。つまり介護に係わる部分が多くなってきている。このような経緯のなかで、安全な医療・看護・介護を提供するには、あるいは受けるにはどのような役割と分担が必要であるかは大きな課題である。私見を交えて論じてみたい。

T. 職能役割の面から
1. 介護行為・看護行為・医療行為とはなにか
2. 在宅療養に関わる職種
3. チーム医療のあり方とその連携

U. 現状把握の面から
1. 介護保健法における問題の所在
2. 利用の側における問題の所在
3. 提供の側における問題の所在

V. ターミナル・ケアとしての在宅療養
1. 事例を通して
2. 生活者の視点
3. 死への不可避性とリスク

W. 医療従事者の教育の面から
1. 医師とコメディカル・スタッフの育成の考え方
2. あるべき論
3. 教育制度の1本化

おわりに
 介護保険に的を絞ってみても、現況は種々の面において混乱している。第1点には在宅療養の現場において、ホームヘルパーはどこまで、なにをやって良くて、なにをやってはいけないのか、それらが現状においては明確に示されていない為に曖昧さを残している。第2点は看護行為と介護行為の峻別が本当に現場において可能なのか、吟味が必要である。人間をパーツに分解して対応する、その方法論は本当に妥当であるのか、を検討すべきである。第3点はコメディカル・スタッフの育成を1本化して、たとえば医師が医師免許を取得すれば何科でも専攻できるように、その上で専門性を堅持できるような体制の準備にいまからとりかかるべきではないか、新たな視点を提示したい。

 
特別講演「在宅療養(医療・看護・介護)における海外の実態」
―ドイツ在宅療養の実態と若干の検証―
健康保険組合連合会医療部次長 高智 英太郎

 ドイツでは一般市民の医療(療養)に対する関心は総じて高いように思われる。ファジーな表現であるため、その一端を補強する話として「クスリ好き」の例を挙げてみたい。
 この国では西ドイツにおいて1989年から「薬剤参照価格(Festbetrag)」制が導入され、公的医療保険から給付される薬剤について保険開業医(Kassenarzte)は「経済的な処方ビヘイビア」が今まで以上に強く求められることとなった。「GRG(医療改革法)」と称される。「公的医療保険(GKV)制度100年のオーバーホール」の一環として導入された法規命令に基づくものであるが、同法が施行されて間もない頃、決して少数ではない慢性疾患患者が自分に処方された「参照価格適用薬剤」(従来から服用してきた製品とは異なる)について、担当医師に対してクレームをつけたという。「自分自身のからだにフィットしてきたクスリの効能・成分など、詳細に関心を持っている患者がすくなくない」(保険開業医)ためと思われる。
 さて、ドイツの街路をこまめに歩いてみると歴然とするが、殊の外立派な造りの店構えを誇っているのが薬局である。昔から、薬局経営者は羨望の眼で見られているようでもある。物の値段が高いことを驚愕して「まるで、薬局みたいなお値段ネ!」などというお決まりの言い回しがあるほど、薬局経営は儲かるらしい。そのドイツの薬局では古くから漢方薬やらハーブ系の薬草などを店頭に並べ、クスリ好き市民の関心を持っているようで、書店の「健康・医療コーナー」には実に様々な関連図書が書棚に所狭しと並んでいる。本当にドイツ人の健康志向は相当なもので、疾病金庫(Krankenkasse)が独自に契約を結んでいるフィットネスクラブや高級感に満ちたプールに対する一般市民の関心はすこぶる高い。
 事実、市町村長選の際に候補者の誰もが、一番多く公約に掲げるのが「当選の暁には、立派なプールをつくってみせるよ」といった健康増進施設の整備に関することだ。話題は若干それるが、ドイツでは1996年から自分(市民)が加入する疾病金庫(健保組合に相当する医療保険の保険者)を自由意志で選択できるようになった。もちろん、選択(移籍)の際にメルクマールとなるのが、第一に保険料である。現在加入している金庫よりも低率の適用保険料率のところに加入すれば、年間を通して相当額の節約となるからだ。最近では、疾病金庫のマネジャー級の中堅幹部が「優良被保険者」(@未婚の男性、A高給取り、B扶養家族が存在せず健康)の獲得に汗水流して奔走している。そして、健康な人(被保険者)はより健康増進が図られるように、また在宅で療養している人には、より長く自立生活ができるように、(検査・注射・投薬など)治療より、むしろリハビリを優先するように仕向ける活動に力を傾注している(介護保険の分野も同じ)。なお、これも巷間いわれているところの「保険者機能の強化」の一環と捉えてよいであろう。
 企業疾病金庫(BKK)では、最終的な目標を「脱入院医療」に据えて、これまでもパイロット・モデル事業を数多くこなしてきた実績がある。例えば、ベルリンにおいて1995年頃より地元保険医協会の理解と協力を得る中で「午後10時まで外来受診可」とした。これにより、勤め帰りのサラリーマンらが病状が軽い内に受診することができるため、専門医を重複受診したり入院の必要性を招致することなく、医療費も節減できたとして、保険者サイドや患者からも好評で、同種事業の有効性と推進を促す声が多く聞かれた。患者サイドから判断すれば、こうした事業こそ「保険者機能を発揮した有益なサービス」と、それぞれの目に映ったのかも知れない。とくに在宅医療のすそ野を広げ、入院シフト化を抑える方向に作用したとの検証も行われている。
 なにせ、ドイツにおいては公的医療保険の給付支出の約3分の1が「病院入院費」で占められており、これを抑えることが何よりも優先されてきた経緯がある。もちろん、ご多分に漏れずクスリや各種理学療法の分野においても、節約政策が展開されてきたが、やはり、一番は「入院費用抑制」の問題との認識で識者の見方が一致している。
 高齢者(年金受給者)や失業者、低賃金労働者など社会的弱者が多く加入していることで知られる「地区疾病金庫」(AOK)では、1995年4月から介護保険の給付が開始されたことに伴い、「適切さを著しく欠く」と思料される患者(加入者)については、金庫のマネジャーが直接病院と掛け合い、「入院療養生活をつづけていくよりも、在宅医療(外来受診=通院)や在宅(施設)介護で対応した方が、患者本人のADLやQOLを低下させないためにも有効では?」とした、日本の状況から見ると“随分進んだ方策手段”を講じている。こうした保険者の活動に対して病院経営筋からは冷ややかな目線を送る向きも少なくないと言われているが、「医療費の適正化」はもとより、「患者中心の医療」の大切さが、この国においても本格的に萌芽してきた証(あかし)を見て取れる。
 これを補強する見方として、「介護」の分野で見られる現象の一端を紹介しておこう。介護保険(Pflegeversidherung)は1995年1月1日から施行され、当初3ヶ月間は「給付なし」の保険料徴収(月収の1%。96年7月から1.7%。被用者は労使折半)のみであった。つまり、この期間に財源を積み立てておこうとした訳である。同保険の施行を前に、連邦労働社会省(介護保険の所管官庁。現在は医療保険と同じ連邦保健省所管)のN. ブリューム大臣らは、「(カネのかかる)施設介護の比重がどのくらい高目に出るか?」皆目、見当がつかなかったという経緯もあり、同省としては、前述の「3ヶ月分資金積み立て」を断行せざるをえなかったのである。
 ドイツの介護マンパワーは、専門職に委ねるほか、「良心的兵役忌避者(Zivi.)」(ツィヴィー)や友人・知人もその範疇に入る。最近の研究事例によれば、後者(素人)の手で一定期間介護されてきたお年寄りに重い褥創が出来るなどして、むしろ入院療養を選択した方がそぐわしい例も報告されている。また、良好なメンタルヘルスを保つための専門職の不足や介護保険の給付水準の低さが改めて問題となっている。ドイツの介護保険は、もともとそのかかった費用の全額若しくは大半を保障する体系にはなっておらず、そのため介護事業者はギリギリの経営に徹しているところが多い。「天井の低い給付体系」(部分保険)の異名をもつ同保険は、1999年度決算で初めて赤字(6千万マルク。1マルク約50円弱)を計上したが、これは同年8月から「デイ&ナイトケア」など、一部給付の改善を図ったこと、高齢化が進展した結果、在宅から施設介護に転じた要介護者が増加していることなどが背景にはあるものと考えられる。
 ドイツでは、従来、福祉関連分野の担い手としてドイツ赤十字ドイツカリタス、ディアコニーなど民間六福祉団体を中心に活動が繰り広げられてきたが、今日では民間の営利会社も数多く見受けられ、市場に参入。在宅要介護者の市場選択の幅も大きく広がった。

 講師紹介
 高 智 英太郎 (こうち えいたろう) 健康保険組合連合会 医療部次長
【略歴】
1949年 神奈川県横浜市生まれ(51歳)
1972年 中央大学卒。同年健康保険組合連合会採用
1995年7月〜独企業疾病金庫連邦連合会(BKK−BV)駐在研究員
1996年2月〜独地区疾病金庫連邦連合会附属医療科学研究所(AOK−WId0)駐在研究員
1996年7月〜健康保険組合連合会へ復帰。社会保障研究室長
2000年5月から現職 

主要著書・訳書
【専門書】
医療保障の危機 (頸草書房・共著)1984
西ドイツの社会保障 (社会保障研究所編/東京大学出版会・共著)1989
先進諸国の社会保障C「ドイツ」 (古瀬・塩野谷編/東京大学出版会・共著)1999
世界の社会福祉G ドイツ・オランダ (鰹{報社/仲村・一番ケ瀬編・共著)2000 

【年鑑等】
ドイツ統計(社会保障年鑑・健保連社会保障研究室編/東洋経済新報社刊)1985−2000
社会保障 (少年朝日年鑑のちに「ジュニア朝日年鑑」と改称)(朝日新聞社)1987−1992
社会保障(日本国政図会/矢野恒太記念会編・国勢社刊)1987−2000/01
ドイツ医療関連データ集 ((財)医療経済研究・社会保険福祉協会編・共著)19995−1999
西ドイツの医療・福祉の動向(鞄本医療企画編/ 医療・保健・福祉の総合年鑑 WIBA)1990
ドイツの保健・医療の動向(鞄本医療企画編/医療・保健・福祉の総合年鑑WIBA)1993,1996,2000[近刊]

【専門誌・月刊誌】
西独の医療保障―制度改革1年の足跡と若干の検証(健康保健/第44巻4号)1990
特集―統一ドイツと社会保障―「社会保障制度における課題と展望」
(社会保障研究所編《海外社会保障情報bX6》・共著)1991
新生ドイツの医療事情に拾う((財)厚生統計協会「厚生の指標」第38巻15号)1991
ドイツ医療保障制度の改革―「構造改革」による21世紀への対応 (社会保障研究所編《海外社会保障情報109》)1994
船出したドイツの介護保険 (鞄本医療企画編/月刊「ばんぶう」5月号)1995
ドイツ「保険者選択の自由化」から3年の軌跡をたどる (健康保険 第53巻9号)1999
ドイツ介護保険5年の軌跡(鞄本医療企画編/月刊「ばんぶう」4月号)2000
ドイツ介護保険の理想と現実(産業科学発行・新医療 第27巻第9号)2000
ドイツ―公的医療保険と病院の関係に関する一考察(けんぽれん海外情報bT2)2000
コラム「ドイツ通信」(鞄本医療企画編/月刊「ばんぶう」)1995〜連載中

【訳書】
ドイツ社会保障総覧(独連邦共和国連邦労働社会省編/鰍ャょうせい刊・共訳)1994 

 
シンポジウム「在宅における医療行為と看護行為と介護行為を巡って」
介護事故の中の医療行為
ーホームヘルパーが業務上?過失致死罪で問われないためにー
民間病院問題研究所 研究員 篠崎良勝

1. はじめに
 介護保険制度の施行により、介護サービスも措置から契約へサービス提供の形態が変化し、サービス提供者側の意識改革が求められています。しかしながら、訪問介護員(以下、ヘルパー)がケアプラン以外のことを行っている実態やヘルパーとして就労している者自身の職務理解が十分でないことなどから、ヘルパー自らが知らず知らずのうちにトラブルや事故に巻き込まれる可能性が考えられます。このような状態が続けば、介護中の事故によるトラブルは介護保険制度を機に飛躍的に増加していくものと考えられます。

2. ヘルパーの医療行為の実態
 昨年、民間病院問題研究所はヘルパーの医療行為の経験および医療行為を行った理由に関して調査を実施しました。
 その結果、医療行為経験者は95.9%となっており、ほとんどのヘルパーは医療行為経験者であると言えます。医療行為を行った理由をみると、「依頼型」32.9%、「不可避型」21.5%、「組込み型」21.4%、「指示型」17.9%、「自主型」5.5%の順でした。この結果から、自主的に医療行為を行っているヘルパーは少ないと言えます。医療行為を行っている最大の要因は、介護者や利用者本人からの依頼なのです。
 また、「ホームヘルパーへのイメージ調査」(日本医療企画発行)ではヘルパーの約6人に1人および一般の人の3人に1人は「ヘルパーは医師や看護婦の指導を受ければ、利用者に座薬や浣腸を行ってもよい」という認識をもっていることが明らかになりました。この結果はヘルパー自身が自分の職業に対して誤った知識のまま就労している実態および利用者をはじめとした一般の人がヘルパーに対して誤った知識を抱いた状態でサービスを受けている実態を示しているものと考えられます。
今後はまず、ヘルパー自身が正しい情報を持ち利用者に伝えていくことが必要です。あわせて利用者も与えられた情報を聞き流すのではなく、受け止めて理解することが必要です。

3. ヘルパー「さまさま」
 医療事故とは医師や看護婦が自分の職務の範囲内で起こした事故ですが、介護事故はヘルパーをはじめとした介護職の職務である家事援助、身体介護中の事故以外に、医療行為(たんの吸引、軟膏の塗布、点眼など)や理容行為(髪を切る、髭を剃る)、美容行為(化粧をする、髪を結う)をはじめとしたホームヘルプサービスとして法的解釈が曖昧な職務遂行中の事故も含まれているのです。
 つまり介護保険制度は、ヘルパーが常に職務外の行為を行うことを前提として運営されているのです。まさにヘルパー「さまさま」です。
 もし、全国のヘルパーが「法的解釈が曖昧な部分は一切行わない」と宣言したら介護保険制度は簡単にそれも一瞬に破綻してしまうでしょう。 

4. 医者気取り、看護婦気取りのヘルパー
 もちろんヘルパー側にも問題はあります。例えば、訪問看護婦や介護者から「たんの吸引」の方法や「薬の効用」など表面的な医学・看護学的部分を教えてもらうと、「自分は医療行為ができるんだ」と思い込み、日常業務の一環として自ら医療行為を行い、まるで医者や看護婦にでもなった気でいるヘルパーもいます。
 加えて、このようなヘルパーの問題は自分たちは「利用者の味方だ」と誤った認識を抱いている点です。このように誤った認識を抱いているヘルパーからは「なんで医療行為をやってはいけないのかがわからない。」「いいじゃない、やってあげれば!」という声が出てきます。
 私はヘルパー自身が医長行為を行なう場合、ヘルパーはある覚悟が必要だと思います。それは「禁止されている医療行為をヘルパーが行うことによって利用者に不利益をもたらした場合の責任は、ヘルパー自らが負う」という覚悟です。知識も技術も見よう見まねのヘルパーがここまでの覚悟で医療行為を行っているとは思えません。
 今の状態は利用者、ヘルパーの双方にとって「不幸」としか言いようがありません。厚生省や利益重視の事業主にはそんなことはどうでもよいことなのかもしれませんが…。
 利用者とヘルパー双方にとって今一番望まれることはヘルパーの職務内容の確立なのです。何が頼めて何が頼めないのか。また、何が職務でないのか。ある一定レベルまでは国が明確にすべきだと考えます。
“介護の専門職”、“介護のプロ”と持ち上げられて、本人もその気になって自ら学ぶことをせず、ふと下を見たら誰も支えてくれていない…。これが今のヘルパーの置かれた現状ではないでしょうか。

 
在宅療養における医療行為と看護行為と介護行為を巡って
医療法人あいち診療所 畑恒士

 『受け手になったときの安心できる医療システムの構築』が私が診療所での在宅医療に取り組み始めた時からの目標である。そして、安心できることと、自己決定権が保証されることは表裏一体である。
 自分の残された人生を家族とともに家で送りたいと願ったとき、『あなたには複雑な医療処置が必要なので病院から外に出ていただくわけには行きません』といわれたらどうだろうか。私たちが在宅医療に取り組み始めたころ、某大学病院の外科に入院している患者の家族から相談を受けた。「父は主治医から『もう時間の問題だ。どうすることも出来ない』といわれた。家につれて帰りたいが許可がのらえない。何とか連れ帰りたい」というものだった。許可が出ない理由は『こんな状態で無理につれて帰ると死んでしまうかもしれない』ということである。私たちが間に入って退院が許可されるまで2日間を必要とした。
 私たちの在宅医療の条件は患者が家での生活を希望する、家族が家で看てあげたいと希望する。の2点である。これが満たされるとき家でそれをサポートする体制をつくることが求められている。それと同時に、この条件が満たされないときに家族に在宅介護を押しつけず、本人に次善の環境を提供する体制が求められている。残念ながらこのどちらも現在満たされているとは言えない。
 そもそも在宅医療は病院の中で看護婦(無資格看護補助員を含む)が独占してきた医療行為を家族の手に委ねる事によって成立してきた。訪問看護が週2回しか認められない頃より褥創のある患者、吸引の必要な患者、経管栄養の患者が在宅で暮らしている。これらの医療行為が週2回ですまないことは誰にでも想像がつくであろう。それを家族が担ったからこそ成立して来たのである。
 この家族が担ってきた医療行為を誰かに委ねなければ、医療依存度の高い障害老人を抱える家族にとって、介護の社会化など絵空事である。
 現実には充分な介護力がなくても気管内吸引を必要とする患者が退院させられ、痰を詰まらせそうになるのを目の前で見たヘルパーが見よう見まねで吸引をしているのである。ヘルパーの医療行為は認められないという厚生省の公式見解のもと、善意で窒息しそうな利用者の喀痰吸引をしても法的な制裁を受けるのではないかとびくびくしているヘルパーも少なくない。今現場で求められているのは如何したらいいのかという具体的なルールである。
 ここで刑法37条〔緊急避難〕をもって良しとするのは、患者の安全を考える立場ではない。
 この問題は介護保険が待ったなしだといわれた以上に危急の問題であり、早急な方向性の明示が必要である。建前とか、職種の利益とかをいうのではなく、早急に実現可能なシステムが求められている。
 あいち診療所では以下の条件でヘルパーが医療行為を行うことを認めており、この考え方を国として採用することを提案している。
ヘルパーに委ねる医療行為とその条件 
 ヘルパーごとに本人・家族の同意をえる。
 個別の患者ごとに必要な医療行為の指導を受け、 指揮者(主治医、責任看護婦)の許可をえる。
 家族や同僚への指導は行わない。
 臨機の対応を必要とする処置に限る。
このシンポジウムでは、この提案の基となっている、私たちの『資格と能力』『責任をとる』ということについての考え方をお話し、皆さんからのご意見を伺いたいと考えている。
私たちに求められているのは理想と比較して否定することではなく、よりよい方法を提案することである。

 
在宅での医療行為・看護行為を誰が担うべきか
弁護士 増田聖子

1. はじめに  厳しい現実、緊急時・事後的問題とは離れて、あるべき姿(制度論)を考えたい。
@厳しい現実
訪問介護員(ホームヘルパー)が、在宅における医療行為、看護行為を担っている現実がある。
現段階で、訪問介護員がこれをやめてしまえば、家族は、いったい誰に頼めるのか。十分な数の訪問看護婦がいないのではないか。そもそも、訪問看護婦を依頼する経済的負担に耐えられないのではないか。結局、家族が担うのか。家族が担うことと訪問介護員が担うことはどこが違うのか。
A緊急時の問題
目の前で急変し、苦しむ要介護者に対し、訪問介護員は、何もできないのか。何もしなくてよいのか。
B事後的問題
もし訪問看護員の行った医療行為、看護行為によって、要介護者の生命・身体に損害を与えたとき、誰が責任を負うのか。
※@〜Bの現在の問題状況は踏まえながらも、要介護者の安全を守るために、在宅における医療行為、  看護行為を誰が担うべきかというあるべき姿を考えたい。
2. 法は、誰が、医療行為・看護行為をできると規定しているのか
医師法17条       医師でなければ、医業をしてはならない 
保健婦助産婦看護婦法 看護婦でなければ、第5条に規定する業をしてはならない
31条 傷病者若しくは褥婦に対する療養上の世話、
又は診療の補助
     例外規定…  医師法、歯科医師法、保健婦助産婦看護婦法(看護士、保健婦(士)、助産婦、
           准看護婦(士)、歯科衛生士法、診療放射線技師法、臨床検査技師・衛生検査技師に関             する法律、理学療法士及び作業療法士法、視能訓練士法、言語聴覚士法、臨床工学技             士法、義肢装具士法、救急救命士法)
※法で認められた資格を有する者だけが、法の明文規定の下に、業として医療行為、看護行為ができる。患者の同意では、この法は潜脱できない。
3. 資格(免許)制度のもつ意味
なぜ、法が、厳格な資格(免許)制度を定め、他の者には医療行為、看護行為を認めていないのか。
良質かつ適切な医療を提供するため 〜 患者の安全の確保
資格制度は、いささかも揺るがせてはならない。
4. 訪問介護員の資格、資質の現状
・義務づけられているのは、研修の終了のみ(試験などによる資質・能力の検証はない)
・必要な看護行為を、十分に安全に実施できるだけの能力・技能を身につけるにはほど遠いシステムではないのか。
・現行法上は、医療行為、看護行為を担えないのは明白である。
5. 要介護者の安全のために何を考えるべきか
@ 現状の違法性(訪問介護員に許される介護行為の範囲)、危険性を訪問介護にかかわる全ての人が認識すること.
A 訪問介護制度の整備
a) 看護婦の量・質を確保する
b) 訪問介護員に新たな資格制度を創設して、一定の看護行為を認めるのか
c) 介護福祉士制度を充実させて、一定の看護行為を認めるのか。

b),c)→看護婦との職能分担をどうするか(どこまでの看護行為を認めるのか)
B 在宅医療の限界
・ 在宅で安全な医療行為が可能かどうかについては、十分な検証が必要。
・ 必要以上に、在宅医療におしこまれないための歯止めが必要なのではないか。
主治医のみに、在宅か在院かの判断を任せてもよいのか。
 
〔参考〕
介護保健法の規定
介護保健法
   第7条3項6号 「訪問介護」とは
要介護者、要支援者に対し、居宅において
介護福祉士、その他政令で定める者により行われる
→ 所定の訪問介護員養成研修を終了した者(施行令)
入浴、排泄、食事等の介護、その他日常生活上の世話せあって、
厚生省令で定めるもの
→入浴、排泄、食事等の介護、調理、洗濯、掃除等の家事、生活等に
 関する相談、助言等
同  8号  「訪問看護」とは
居宅要介護者等(主治の医師が、その治療の必要の程度につき
厚生省令で定める基準に適合していると認めた者に限る)に対し、
   →症状が安定期にあり、居宅において、看護婦等が行う療養上の世話
    又は必要な診療上の補助を要すること      (施行規則)
その居宅において
看護婦その他厚生省令で定める者により行われる
→保健婦(士)、看護士、准看護婦(士)、作業療法士
療養上の世話又は必要な診療の補助 (施行規則)

 
看護行為として何が委ねられるか
在宅看護研究センター 村松静子

 本年4月より介護保険が導入され、改めて検討しなければならない事項が山積みされた。
介護行為と看護行為はどこが違うのか、看護行為とは何を指しているのか、日時を問わず継続して必要な吸引等の医療行為は誰がすべきか、医療行為の本来の範疇はどこまでを指しているのか、それぞれの役務を担う医師・看護婦・介護ヘルパーの関係性及び責任はどうあるべきか、等々。
 理想的な在宅ケアシステムの構築に向けて、システム構成要素を少しでも充実させ「安心」を実現させるために立ち上げたはずの介護保険。高齢化の進行に伴い、介護期間の長期化、介護者の高齢化、高齢者世帯の増加、さらには少子化、女性の社会進出などにより、家庭の介護機能が低下することは避けられない。そこで、介護を社会的に支える仕組みが必要となり、種々の未解決問題を抱えながらも、慌ただしく導入された。しかし、予測どおり、次々に浮上してくる問題。それらの問題をどう解決するのかが介護保険を生かす鍵になっているのが実状だ。
 病院看護の場で、看護教育の場で、さらに在宅看護の場で、32年間看護の道を歩み続けてきた私は、自らの現場体験・研究結果に重きを置き、あくまで一在宅ナースとして実状において考え、感じ取ってきた事柄について発言させていただく。
 1. 在宅看護とは何か
 2. 在宅での看護行為として何が委ねられているか
 3. 在宅での看護行為と医行為の関係はどのように行われているか
 4. 在宅での看護行為と介護行為の関係はどのように行われているか
 5. 在宅で起こっている看護過誤にはどのようなものがあるか
 6. 職種間の連携上で不可欠なことは何か
 今後、さらに在宅ケアが推進される中で、私たちナースに求められる姿勢、看護として委ねられる行為、
要検討事項についてまとめると次のようになる。
〈在宅ナースに求められる姿勢〉
@プロとしての自己責任と自覚及び常識的な態度
A療養状態の適切な判断と時期を逸しない関連職種との連携プレー
B看護技法を駆使した症状のコントロールと適切な説明・助言
C在宅療養から生ずる家族不安への対応
〈看護として委ねられる行為〉
@その時々の容態変化の見極めと看護技法の駆使
A療養者・家族がその時々の気持ちを素直に表出できるような人間関係づくり
B相手がイメージできるような状況別の説明
〈要検討事項〉
@医療行為と看護行為の線引きと責任委譲内容の明確化
C感染防止及び看護過誤対策の確立





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