医療の安全に関する研究会
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「医療の安全に関する研究会」ニュース
Newsletter No.13

巻頭言
第4回研究大会によせて
医療の安全に関する研究会 理事長  島田 康弘

会員の皆様、お元気でご活躍のこととお慶び申し上げます。12月11日(土)の第4回研究大会を、池田卓也理事のお世話で、大阪で開<ことになりました。

今年は「在宅での医療・看護・介護の安全を目指して」をテーマに、今変わりつつある医療の中でももっとも注目される在宅医療を取り上げることになりました。この問題はいろいろな切り口があります。法医学者からみた在宅での孤独死、在宅での看護、そして在宅医療の安全と経済についてそれぞれ専門家の方々にまず講演をしていただきます。その後に、在宅の現場で起こりつつある具体的な事例を取り上げて、シンポジウムの中で議論したいと考えています。このシンポジウムは在宅看護をすでに長く経験し、かつその問題点についても詳しく研究されておられる村松静子理事に司会をお願いしてあります。

このように研究大会のテーマを決めて、それについて深く討論する形を取るのは今年の大会がはじめての試みです。どうか会員の皆様の積極的なご参加をお願い申しあげます。

 
医療の安全に関する研究会 第4回研究大会

日 時 1999年12月11日(土)午前11時から

場 所 大阪大学コンベンションセンター (8頁参照)
      吹田市山田丘1番1号
      TEL 06−6877−5111(内線7171)

参加費 一般 2,000円  学生 1,000円

    どなたでも自由に参加できます。

郵便振替(口座番号00870 7−104540名義 医療の安全に関する研究会)にて、参加費をお振り込み下さい。追って参加証をお送りします。当日参加も可能です。
視点を変えたシンポジウムに 乞うご期待!

 
シンポジウム「在宅医療・看護・介護の安全と課題」のお知らせ
在宅医療・看護に関する分科会 担当理事  村松 静子

本研究会のシンポジウムのテーマについては、理事会で大いに議論し合ったところです。その結果、『在宅医療・看護・介護の安全と課題』に落ち着きました。当日の司会を仰せつかった私は、お引き受けした以上、責任をもって努めさせていただく覚悟です。会が目指している方向性を見失わずに、当会に所属している人材の中から人選させていただきました。また、「在宅医療看護に関する分科会」で発足当初から蓄積してきた情報がございますので、それらを無駄にすることなく、さらに充実させていけるような方法論を編み出せたなら、一石二鳥とばかり欲ばってみました。けれども、いざとなると、そう簡単には決まりません。在宅医療・看護・介護については、すでに各地で数多く取り上げられて来ていることだけに、どうしてもありきたりの構成になってしまいがちだからです。そこで、まず、当シンポジウムの視点を明らかにする必要がありました。もちろんその視点は、安全にほかならないのですが、医療・看護・介護のそれぞれの現場で共通して起こっている問題となると、絞り出すのが結構難しいのです。進め方にこだわった私は、私なりにいろいろな案を練ってみました。そして、その方法論を編みだしつつあります。

今回は、医療・看護に興味のある医療関係者だけではなく、介護に興味のある介護関係者や一般市民の方々にも数多くご参加いただき、白熱した討論をたたかわせて実りあるものになればと、司会者なりに願望を抱いているのです。欲ばったあまり、うまく進行できるかどうかやや不安なのですが、これも行ってみなければわかりません。シンポジストの皆さんや会場の皆さんのご協力・ご理解を得ながら精一杯進めて参りたいと思っております。大勢の方々のご参加を期待致しております。

<シンポジウムの進め方とシンポジストの発言意図>

テーマ『在宅医療・看護・介護の安全と課題』

 15:10−17:30              

 15:10        開始

 15:15−15:35   問題提起 

  在宅看護システムの構築を続ける  立場から  中村義美

 15:36−16:20  発言(I人10分)

  1)人権擁護の立場から            加藤良夫

  2)教育の重要性を推奨する立場から      堤 寛

  3)安仝な薬剤管理を推奨する立場から     串田一樹

  4)サービスの質評価を推奨する立場から    福間誠之

 16:20―16:30  追加発言

 16:30−16:50  討論・その1   問題提起者とシンポジストの間で

 16:60−17:25  討論・その2

 17:30        終了

 
特別講演1:在宅での孤独死ー法医学から見た医療の安全
大阪大学医学部法医学講座  的場 梁次

法医学の扱う分野は広く、犯罪、刑事に関することばかりではなく、医療との関わりも深い。中でも、医事法や医療事故等は有名であるが、社会医学の一分野としての法医学も重要な領域である。これは主として監察医制度下での検案、解剖(行政解剖)で、伝染病、中毒、突然死等が含まれている。 この中で、最近目立って増加傾向にあるのが、高齢者の独居変死である。監察医の扱う事例は大阪市内だけであるが、検案数は1998年3,558体で、これは10年前の約1.5倍にもなる。

この変死体の年齢層をみると、50代以上の中高年層が増加し、死因別では病死、特に急性心臓死が増えている。又、同年の大阪府全体の変死体数は9,133体で、このうち独居者は2,473体である。この様に、監察医で検案対象となる高齢者は多くの場合独居或いは老夫婦のみで生活しており、充分な医療の恩恵を受けていないものが多いと推察される。今後の日本社会において、高齢者の一人住まいが増え、在宅医療の推進へ向かうと考えられるが、最近の監察医の検案事例からみると、この様な独居高齢者をどのように医療、福祉面においてケアーするかということは大きな問題である。実際症例を交えて、大阪府監察医事務所での高齢者の独居死亡を紹介し、その背景にある社会問題を考えたい。

 
特別講演2:在宅看護・介護と安全性
大阪大学医学部保健学科 阿曽 洋子

 人が生活することには安全性が大いにかかわっています。安全性が阻害された場合には、生活も心豊かなものにはなりません。在宅で看護・介護を受けている生活においても同様のことが言えます。そこで、在宅での看護・介護を家族が受け入れてくれたことを前提に、在宅看護・介護に潜んでいる安全性について考えていきたいと思います。

 1.在宅看護・介護における安全性とは

 在宅看護・介護における安全性は、看護や介護を受ける本人(要介護者)および家族(家族介護者)の側からと看護職者や介護職者の側から考える必要があると思います。通常、看護職者や介護職者は専門職者としての教育を受けているので、当然のこととして自分の安全は自身で確保していると考えられがちです。しかし、実際のところは腰痛症を起こすなど、安全の確保が十分にできていない現状をよくみます。

 在宅看護・介護における安全性とは、要介護者にとっては、ゆっくりと療養に専念でき、QOLの高い生活を送ることができることであり、家族介護者にとっては今までの生活リズムをあまり変化させることなく、介護に当たることができることであると私は考えています。また、看護職者や介護職者にとっての安全性とは、専門職として受けた教育を十分に活用して、自信を持って対象者に働きかけることができることであると考えます。

 2.在宅看護・介護における安全性を阻害するもの

 1)要介護者および家族介護者に対して:要介護者の場合は、療養している原疾患の悪化や新たな疾患の発症などの身体的要因が安全性を阻害する最も大きな原因であり、そして二次的に発生した祷瘡やADLの後退などが拍車をかけます。これに対して、疾患に対する不適切な医療や看護・介護も安全性を左右すると考えられます。このような身体的な要因は、病気に対する不安と医療従事者への不信感となり、精神的なストレスが生じてきます。病気の悪化は社会参加の機会を減らし、また経済的にも医療費の増加を招くことになります。これらは、QOLの高い生活から遠ざける原因になるので、安全性は阻害されていくと思われます。

 家族介護者の場合では、要介護者の疾患の悪化やADLの後退により介護量が増加するため身体的な負担は大きくなり、それとともに精神的にも負荷がかかってきます。また社会的にも経済的にも支障がおこり、今までの家族介護者の生活リズムはくずれる結果になります。ここでも家族介護者の安全性は阻害されていくことになります。

 2)看護職者・介護職者に対して:不適切なボディメカニクスによるケアで腰痛を起こしたり、実践や判断の未熟さにより十分な感染予防ができなかったりすることなどが、自分に対する安全性を阻害することになります。

 3.在宅看護・介護に対する安全性の確保と課題

 以上のような安全性を阻害する要因を、それぞれの状況に応じて対処することが、在宅看護・介護において安全性を確保するために非常に大切であると考えます。

 在宅看護・介護に対する安全性の課題としては、専門職者に卒後教育の機会を作って自己研鑽を行ってもらうことや、医療および看護・介護の質の評価を要介護者と家族介護者を含めて縦続的に行うことであると考えます。

 
特別講濱3:在宅医療の経済分析ー効果と効率の考え方
日本福祉大学教授 二木 立 

1.医療の効果と効率を考えるための基礎知識
1)医療の効率の定義
*厚生行政での「効率」の意味≒医療費抑制。
*経済学での「効率」の定義:限られた「資源」で最大の「効果」を引き出すこと。
*医療効率の向上で医療費が増加する具体例

2)医療効率を考える上での三つの留意点
*公平への配慮:効率の「前提」として公平を保証。
*「資源」を公的医療費に限定せず、広く社会的資源で把握する。
 ー個人負担の医療費、金銭表示されない社会的資源(家族介護やボランティア)。
*「効果」を総合的に評価:死亡率→ADK→QOL(含・満足度)。

3)二種類の効率、二種類の技術革新の区別
*生産効率(技術的効率、生産性)VS配分効率(社会的効率)。
*プロダクト・イノベーション VS プロセス・イノベーション。

4)効率の測定方法
*伝統的な二つの手法:費用効果分析(CEA)と費用便益分析(CBA)。
*ニューフェイス:費用効用分析(CUA)一QALY(質を調整した生存年)。
*実用的なのは、CEA。

2.在宅「ケア」の経済分析の到達点
1)一般の常識の否定:在宅ケアは施設ケアよりも安上がりではない。

2)その理由:家族の無償の介護労働を無視。
 欧米の研究では、公的費用に限定しても、在宅ケアの方が費用が高い。
   ー「在宅ケアが効率的ではない7つの理由」(ワイサート)。

3)この分野の経済分析の二つのフロンティア(未解決の研究テーマ):
  医師が在宅ケアチームに参加し、「門番」機能を果たせば、費用は低下?
  訪問リハは通所リハ(デイケア、デイホスピタル等)より、費用効果的?

文献:二木立『日本の医療費』医学書院,1999.第4章医療効率と費用効果分析

[お断り]
 学会事務局から依頼されたテーマは「在宅での医療の安全と経済」です。しかし、私にはこのテーマを論じる能力はなく、新たに文献を収集・検討する時間的・精神的余裕もありません。また、在宅医療の安全を正面から論じた邦語文献はほとんどないとも聞きました。ある方から「在宅医療の安全性と資格制度と経済」について論じたら?との助言も頂きましたが、この問題はまず技術と医事法の視点から検討すべきであり、現時点では経済的分析は控えるべきと判断しました。以上より、講演では「在宅医療の安全」には触れ(られ)ませんので、御了承下さい。ただし、質疑応答でこの点についての具体的質問が出されれば、医療経済学的にどう考えるべきか、分かる範囲でお答えします(私は現在も「古巣」の東京・代々木病院で週1日、往診・在宅医療に携わっています)。

 
分科会報告
安全教育に関する分科会 担当理事 堤  寛

去る11月13日(土)午後に日本大学験河台病院講堂(東京都千代田区)において、安全教育分科会・医療廃棄物分科会の共同主催で下記の一般公開シンポジウムが開催された。参加費 ¥3000にもかかわらず、約60名の参加を得て、活発な討論が行われた。

  シンポジウム「集団感染防止対策の確立
  〜院内感染防止対策→医療廃棄物適正処理〜」

 日時:1999年11月13目(土) 午後1時〜4時半

 会場:日本大学医学部駿河台病院講堂

 内容・演者:

 @医療者と結核症.高いリスクと低い問題意識
    堤  寛(東海大学医学部病態診断系病理学部門)

 A医療現場からみた結核症の動向
    本多 正(結核予防会複十字病院臨床検査科長)

 B医療廃棄物処理現場における安全対策
     波辺 昇(医療廃棄物研究所所長)

 C感染防止対策・医療廃棄物適正処理を巡って
     講師と参加者によるディスカッション

堤と本多氏は主として病院の立場から結核菌感染の危険を示し、適切な対策とは何かを論じた。検査室・病室の空調整備、結核菌検査における安全キャビネットの整備と医療現場におけるN95微粒子用マスク着用が空気感染防止策として最も有効である。定期健康診断による健康管理の必要性はいうまでもない。しかし、もっとも重要な点は、業務感染・職務感染防止に対する医療者自身による問題意識の醸成であろう。

一方、渡辺は廃棄物適正処理の立場から、現行の法制度・廃棄物処理技術・処理コストといった問題点を提示した。「感染性医療廃棄物」として取り扱われる廃棄物の感染性については不明な点が多い。

実際、廃棄物に付着した結核菌がいつまでどの程度の感染力を保持するかという点に関するデータは少ない。現実的対応としては、ユニバーサルプレコーシヨンの考え方を守り、定期健康診断による健康管理を行うことが求められる。廃棄物処理問題では、適正処理のためのシステム作り・法整備が何より大切なのだが、残念ながらこの点でわが国がたいへん遅れをとっていることは否めない事実である。ドイツの循環経済廃棄物法の考え方・運用法に見習うべき点は少なくない。

 
Newsletter発行の予定

 平成12年3月15日  No14号 発行予定(研究大会報告号)

 平成12年6月30日  No15号 発行予定





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