医療の安全に関する研究会
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「医療の安全に関する研究会」ニュース
Newsletter No.12
(1999.8.31発行)

もくじ

  巻頭言  ─────────────────────── 1
  常任理事会議事録 ─────────────────── 2
  理事会議事録 ───────────────────── 3
  平成10年度会計報告・予算案 ───────────── 5
  総会議事録 ────────────────────── 6
  ホームページを作りました 島田康弘 ────────── 7
  第4回研究大会のお知らせ ─────────────── 8
  研究会の活動方針について 市村公正 ────────── 10
  病理医の目  堤  寛 ──────────────── 11
  すべての病院でホスピスケアを! 吉田嘉宏 ─────── 12

 
巻頭言
編集委員会 常任理事 増田聖子

残暑お見舞い申し上げます。NewsLetter 第12号をお届けします。本号は、6月に開催された総会、理事会のご報告、12月11日に予定されている研究大会のご案内、ご投稿などを掲載しています。研究大会は、「在宅での医療・看護・介護の安全を目指して」というとてもタイムリーなテーマで開催されます。是非ともご参加いただきますようご予定ください。私ごとになりますが、先日、分娩事故のため重度の脳性麻痺で入院中の3歳の女の子のお見舞いに伺いました。出生直後から人工呼吸器を接続したままで意識もなく、手足は硬直したよう、まばたきすら出来ません。けれど、毎日お見舞いに来ているお母さんが、髪をキティちゃんの飾りの付いたゴムでむすんであげておしゃれをしていました。とても可愛いピンクのパジャマをきていました。その子のほっぺを軽く指でつついて私が来たことを話しかけているご両親の姿に、私は、嗚咽しそうになる自分を押さえるのに必死でした。私は弁護士で、せめて、この訴訟に精一杯の努力をすることしかできません。しかし訴訟には数年はかかるでしょうし、勝訴しても得られるのは金銭でしかありません。もちろん、もっと早く金銭賠償が得られるようにすべきことは、われわれ法曹(弁護士や裁判官)に課せられた重大な責務であることは、十分自戒せねばなりません。只、市民が本当に求めているのは、赤ちゃんをこんな目にあわせない安全な医療であることは自明です。そのために、何をすべきでしょうか。この研究会は、どんな役割を果たせるでしょうか。
そんなことを考えながら歩く帰り道、空は抜けるように青く、太陽が叱りつけるように強く強く輝いていました。

 
医療の安全に関する研究会 第18回常任理事会議事録

日 時  1999年6月12日(土)午前11時〜午後12時15分
場 所  名古屋市立大学医学部本部棟4階講堂
出席者  島田康弘、加藤良夫、松葉和久、斎藤悦子、吉田嘉宏、増田聖子
1 平成10年度決算、平成11年度予算案について
斎藤理事から報告、検討の結果、次の点を修正したうえ、理事会、総会に報告、提案し、承認を求めることとする。決算書月次報告書のうち、収入計欄を3,466,923円と訂正する。予算案のうち、研究大会費を30万円に、人件費を10万円に、予備費を171万6172円に各訂正する。人件費の摘要欄に、「旅費」を追加する。
加藤事務局長から、監査について報告、西監事のコメントについて報告、検討。

2 役員選任などについて
以下の人事を提案、承認を求めることとする。
   市村公正理事         退任 (病気のため)
   山内隆久氏 (北九州大学)  選任
   鈴木俊夫氏 (歯科医師)   選任
 
3 会費滞納者の取り扱いについて
98年会費までに2年以上の会費の未納者(6月11日現在58名)に対し、期限を定め納入の督促をし、未納のまま期限を経過した場合には、退会と見なす旨の連結の上、これに沿った処理をする。       

4 会議の定足数について
今年度の総会の委任状は、比較的スムースに提出された。そこで、上記3の取り扱いの後、状況を睨んで、定足数の変更の必要性を考慮する。現在の問題状況は、理事会で報告し、理事の意見を求めることとする。

5 分科会の活性化について
分娩の安全に関する分科会について、検討中である。

6 第4回研究大会について
池田理事作成のレジメにもとづいてA案B案を検討し、常任理事会としては、午前中に、分科会報告のみを行い、後は、おおむねB案に添うような折衷案を提案することとする。
7 次回常任理事会
1999年7月21日(水)午後7時から、於 増田法律事務所
(議事録作成者 増田聖子)

 
医療の安全に関する研究会 理事会議事録

日 時  1999年6月12日(土)午後1時〜午後3時
場 所  名古屋市立大学医学部本部棟4階講堂
出席者  島田康弘、加藤良夫、松葉和久、斎藤悦子、増田聖子、吉田嘉宏、
     福間誠之、的場梁次、村松静子、渡辺昇、堤寛、木村繁、酒井順哉
委任状出席 芦沢直文、市村公正、高島妙子、土屋文人、出元明美、宮治眞
   規約規定の定足数を満たしていることを確認した。

1 平成10年度(1998.4.1〜1999.3.31)決算
斎藤常任理事より、決算報告および加藤事務局長から、監事報告およびコメント代続により承認。
尚、分科会費については、逐次事務局に請求の手続きをおとりいただくよう連絡。
  (※承認された決算の内容は5頁に掲載しています。編集委員会)

2 平成11年度(1999.4.1〜2000.3.31)予算案
斎藤常任理事より、予算案提示。       
村松理事から、事務局の日常業務の人件費を支出したほうが良い旨提案。
 検討の結果、支出に事務委託費として、10万円を計上し、予備費を、161万6152円と修正して、承認。
(※承認された予算案は5頁に掲載しています。 編集委員会)

3 役員退任、選任案承認
病気のため、市村公正理事の退任、山内隆久氏、鈴木俊夫氏の選任について、総会に提案することを承認。

4 会費未納者の処理と定足数について
加藤事務局長から、2年分以上の未納者58名についての会則にそった処理について説明。
今後の会員増に併せて、各会議の規約上の定足数の改定の必要性について議論。
村松理事、福間理事らから、今後の規約改定(定足数緩和)の必要性について指摘。

5 分科会報告
 (1) 分娩の安全に関する分科会(加藤事務局長)
   活性化について検討中。
 (2) 在宅医療・看護に関する分科会(村松理事報告)
   3月以降活動していない。標準化はなかなか容易ではない。
   安全の視点からケース分析を中心とした冊子作成を計画中。
 (3) 麻酔の安全に関する分科会(島田理事長報告)
   今後の課題について検討中。
 (4) 薬剤の安全に関する分科会(木村理事報告)
   在宅医療の場での薬剤の安全の視点で活動を検討する。
 (5) 医療器具、ME機器の安全に関する分科会(酒井理事報告)
   ME機器の添付文書のガイドラインを作成中、冊子(医療用具の
   添付文書の記載要領に 関する研究)に基づいて説明。
   針刺し事故についても検討中。
 (6) 医療の質の評価に関する分科会(福間理事報告)
   研究大会以後の活動について検討中。
 (7) 医療廃棄物の安全に関する分科会(渡辺理事報告)
   本年10月末か11月に研修会方式でイベントの予定。
 (8) 安全教育に関する分科会(堤理事報告)
   出版した本は、昨日現在6632部販売。
   患者の立場からの院内感染、感染防止に関するQ&A作成について検討
 (9) 歯科の安全に関する分科会(中垣理事報告)
   在宅の歯科の安全を課題とする方向で検討。
 (10) 救急医療の安全に関する分科会(加藤事務局長報告)
   今後の課題について検討中。

6 第4回研究大会について
的場理事から報告。検討の結果、次の通り案を作成し、世話人の池田理事にご検討を願うこととする。
 日時    1999年12月11日(土)午前11時から
 場所    大阪大学コンベンションセンター
 大会テーマ 在宅での医療・看護・介護の安全を目指して
 
 プログラム
 11:00〜11:05 開会の挨拶
 11:05〜12:00 分科会報告(合同討議)
(12:00〜13:00 理事会)
 13:00〜13:40 特別講演1   的場梁次先生
          『在宅での孤独死一法医学から見た医療の安全』
 13:40〜14:10 特別講演2   阿曽洋子先生
          (演題は斉藤常任理事において確認)
 14:10〜15:00 特別講演3   二木 立先生
                     『在宅での医療の安全と経済』
 15:00〜15:10 休態
 15:10〜17:30 シンポジウム
         テーマ 在宅での医療・看護・介護の安全を目指して
                    司会  村松理事
 .    シンボジストの人選、シンポのスケジュールなど村松理事に一任
 17:30〜17:35 閉会の挨拶
   (※その後検討の結果、確定しましたプログラムは、8頁に
     掲載しています。編集委員会)
 
7 ホームペイジの紹介              
 島田理事長から、本会のホームペイジを作成したこととアドレスの紹介
   http://www.med.nagoya-u.ac.jp/anesth/safety/index.html
    (議事録作成者 増田聖子)

 
医療の安全に関する研究会 総会議事録

日時  1999年6月12日(土)午後3時〜午後4時
場所  名古屋市立大学医学部本部棟4階講堂
出席者 島田康弘、加藤良夫、松葉和久、斎藤悦子、増田聖子、吉田嘉宏
    福間誠之、的場梁次、村松静子、渡辺 昇、堤 寛、木村 繁、酒井順哉、
    土屋逸子、稲留佳子
委任状出席 110名
規約規定の定足数を満たしていることを確認した。
1 平成10年度(1998.4.1〜1999.3.31)決算

2 平成11年度(1999.4.1〜2000.3.31)予算案
  理事会議事録記載のとおり。

3 役員退任、選任案承認
  病気のため、市川公正理事の退任、山内隆久氏、鈴木俊夫氏の選任について、承認。

4 会費未納者の処理と定足数について

5 分科会報告
理事会議事録記載のとおり。

(議事録作成者 増田聖子)

 
ホームページを作りました
医療の安全に関する研究会 理事長 島田康弘

「この情報化時代に、ホームページもない会なんて、遅れてますよ。」さすがに面と向かって言われたことはなかったけれど、いつもそういう視線を感じてきました。決定的なきっかけは、医療事故調査会の見事なホームページを見たことです。しかし、私も、事務局長の加藤良夫さんもコンピューターに強いとは決して言えない人種です。また、会にはホームページを委託して作ってもらう資金もありません。そこで、おそるおそる、「なあ、ホームページを作りたいやけんど。」と手近な人を捕まえて聞きました。彼はもちろんホームページ作成経験者です。「え、簡単ですよ。」という答えがただちに返ってきました。また、「ホームページ・プロ」というソフトも教えてもらいました。これを「あけて」、指示通りに行えば、「先生でも」できますよ。それが私の苦難と屈辱の満ちた日々の始まりでした。彼も何度か「ばか」という言葉を飲み込んだことでしょう。しかし、ついに完成しました。今や私は「ホームページ・プロ」のプロです。あまりできばえは良くなく、絵や動画などを挿入する技術はまだ試してはいませんが、一応必要な情報は入れたつもりです。また、増田聖子さん、吉田嘉宏さんが中心になって作られているNewsletterも、絵の部分は除いてすべてみることができます。ぜひご覧下さい?ご意見などは私のメール・アドレスまでお願いします。長たらしいアドレスは、私の教室のサイトをお借りしているためです。会のますますの発展を祈念しています。

医療の安全に関する研究会ホームページ・アドレス
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/anesth/safety/index.html
私のメール・アドレス;yshimada@med.nagoya‐u.ac.jp

 
病理医の目
東海大学助教授 堤 寛

本稿は堤先生のご承認を得て、本年2月〜3月、朝日新聞夕刊に掲載された記事をまとめて、掲載するものです。(編集委員会)

料理医
「こちら、病理学教室ですが・・・・・」と、電話で小さなモーターを注文した。一週間後に届いた荷物のあて名には何と「料理学教室様」とあった。
 病理医という医者は、患者さんの目の前には登場しないので、日本では「料理医」と聞き間違われるほどなじみが薄い。ある調査では、その存在を知る人は半数以下、仕事内容については八割以上の人が知らなかった。
 病院で医カメラをのむと内視鏡医が胃の病変部の粘膜を摘み取る。外科医は乳房のしこりに針を刺して細胞の塊を吸い取る。婦人科医は子宮の出口から綿棒で細胞をこすり取る。こうした細胞や組織を顕微鏡で見て最終診断を下すのが病理医だ。医療の最終目的、つまり治療における「病理診断」の重要性に口をはさむ医師はいない。しかし、診断結果は臨床医から聞くので、患者さんにとって病理医は黒衣的な存在だ。
 確かに病理医は多くの素材を取り扱うコックに似ている。皮膚を見たと思ったら次は脳しゅよう。大腸ポリープの後は肝臓。料理を熟知した調理人のように、ありとあらゆる病気を知っているプロの診断士が、病理医なのだ。実際、見やすく染めるため、顕微鏡標本に塩や酸を加え、電子レンジや蒸し器、圧力なべで加熱処理することもある。

検体取り違え
 中年の男性が東京都内の病院の胃カメラ検査で胃ガンと病理診断され、私たちの病院を紹介されてきた。ところが、病理検査は何度やっても陰性。困ったのは手術予定を組んだ外科医だ。「がん細胞がいったん確認されたのだからやはり手術」と患者さんに説明した。
「待った」をかけたのは病理医だ。最初の病院から病理標本を取り寄せた。顕微鏡下に現れたのは高度に浸潤する胃ガンで、胃カメラで見つからないとは思えない。私たちは検体の取り違えを疑った。
 病理標本ができるまでには、手作業による多くの段階がある。胃カメラ室で患者名を記したホルマリンびんに生検標本を入れ、申込伝票とともに病理検査室へ送る。そこで受付番号をつけ、パラフィン(ろう)に組織を埋め込み、薄く切ってからスライドグラスにはりつけて染色する。病理医は受付番号と患者名を確認しながら診断する。これらのどこかで標本を入れ違うと―。
結局、この検体はすでに進行胃ガンで手術された女性のものと判明した。決め手は組織切片上で行った血液型鑑定。中年男性はO型なのに標本はB型だった。一週間ほど待ってはもらったが、患者さんの胃は今でも無事だ。

解剖の意義
 病理解剖は病理医の重要な仕事だ。亡くなった患者さんの病気の診断、進行度、治療効果を判断し、死因を追求し、次の診療に生かす。医学生や研修医への教育的な意義は大きい。思いもよらない重大病変が見つかることもある。
 五十代の男性が末期胃がんで亡くなった。背骨への転移で下半身まひとなり、看護婦や家族がおむつの世話を続けていた。病理解剖で分かったのは、がん細胞の全身への転移だけではなかった。伝染病のアメーバー赤痢が見つかったのだ。聞けば血の混じった下痢がひどかったそうだ。幸いにも感染者はいなかった。
 脳死臓器移植でも、ドナーの病理解剖ができないだろうか。脳死に相当する所見が科学的に証明できるからだ。
 病理解剖率や数は、厚生省や日本内科学が指定する研修・教育病院の基準の一つだ。しかし、最近は数より内容を重視すべきだとの声が、臨床医側だけでなく病理医側からもあがっている。本当に患者や遺族のために還元できる解剖になっているか、見直す時期かもしれない。
 メメント・モリ(ラテン語で、死を忘れるな)は、死と日常的に接する私たち医療者が忘れがちな格言である。年に一度の解剖慰霊祭ではこの言葉を噛みしめたい。

 
研究会の活動方針に就いて
元理事 市村公正(内科医)

 昨今医療現場での事故が増えている様に思う。色々原因が追及されているが、高度化する医療を限られた人員に依って処理せざるを得ない現場の悩み、心のゆとりを失っているのかも知れない。
 病気を治す為に入院した病院の中で、間違った薬品や血液を注射されたり、手術するべき人間を取り違えたりすれば、国民の医療不信は昂まるばかりである。些細なうっかりミスに依って重大事故になり、時には死を招くに至る事は何としても避けなければならない。その為に私は何が出来るか、医療過誤原告と共に運動を進めてきた経験を踏まえて、その経験を生かすべく、医療の安全に関する研究会の理事に就任した。私が関心のある感染事故、在宅医療について、多くの問題に取り組んでみた。しかし、この数年間分科会の活動に限界があるのか、具体的な提言をまとめる事もなく、今日に至ってしまった。研究大会や総会の場でそれなりに多くの方々から発言や意見を頂いて、地域に持ち帰っても、地域分科会は限られた担当スタッフの集まりとなり、多くの会員の参加が得られなかった。
各理事はそれぞれ忙しい日々の仕事を持っているので、安全研究に専念出来ぬ事情もあった。一部の分科会で立派な提言やマニュアルを作られたが、休眠中の分科会も多いと聞く。折角予算配分を受けながら活用もされず、今日に至っている。
 多くの学識経験者を分科会の会合に集めることは困難なことは分かるが、医療の安全のためにどうすればよいか、担当理事だけに任せずに、各々の経験を結集させなければならない。
 余りにも多くの分野に拡げた為かも知れないので、必要性の高いものから各年度のテーマを絞って、2乃至3のテーマに就いて、研究を重ねる事が効果を挙げる事になるとも考えている。
 私はこの度、病を得て病床に伏し、入院もした為、当分対外活動が困難となったので、理事職を辞した。今後関東地区で医療と事故について活動してゆくつもりである。

 
投稿 すべての病院でホスピスケアを!
「あいちホスピス研究会」吉田 嘉宏

 全国の緩和ケア(ホスピス)病棟の数は、昨年の12月現在で49施設。ホスピスが1カ所もない県が17県あり、愛知県もホスピスのない県の1つであった。、半年経ったこの6月末現在では更に13施設増加し、全国のホスピス病棟は62カ所になっている。そして愛知県にも2カ所のホスピスがオープンした。
 6年前の1993年の夏、愛知県がんセンターは改築工事がほぼ完成に近づき、最後の工事である国際医学交流センターの建設が進められていた。この段階で新築なった病棟を見学する機会を得た私たち数人の市民グループは、がんの専門病院である「がんセンター」の、400億をかけて増床された500床の新病棟に、緩和ケア(ホスピス)病棟がないことを知った。 
 愛知県がんセンターは、名古屋市の東部丘陵地にある平和公園に隣接し、緑と水辺と眺望に恵まれた素晴らしい環境に立地している。この敷地はホスピス病棟の立地としてまさに理想的。私たちは是非ここに、38億円の国際会議場より愛知県初めての、末期がん患者の苦痛を緩和し不安や苦悩の心をケアするホスピス病棟を造ってほしいと切望した。
  最期まで「ホスピスがほしい」と訴えながら逝った友との約束を果たしたいと、決意の固かった主婦のNさんを中心に、この年の11月、私たちは「あいちホスピス研究会」という市民運動のグループを発足し、「あいちにホスピスを! すべての病院でホスピス・ケアを!」を会の目標とした。発足の記念講演会には300人を超える患者・家族、市民が会場に溢れた。会ではまず県議会にホスピス建設の請願をすることを決め、8ヶ月の準備をして秋に署名
活動を全会員で行った。師走の日曜日には繁華街の街頭にも立って道行く人にホスピス建設を訴えた。結果5ヶ月で46, 513名の署名を集め、1995年2月の県議会に請願書と共に提出、全会派の賛成で採択された。が、折しも県の財政事情は悪化、ガンセンターでのホスピス建設は難しく、民間病院で建設が進められるときは県が助成を行うということになった。私たちは落胆したが、「その時」の来るのを待って、ホスピスボランティアの養成講座や学習会・講演会を開催し、私たちの望むホスピスのイメージを深めて行った。会員の数も500名を超えていた。その半数は患者・家族や普通の市民、後の半分は県下多くの病院の看護婦さんなど医療従事者で、20人を超える医師も参加して頂けた。 
 私たちが期待した「その時」は意外に早く訪れた。名古屋市の東部に隣接する日進市に愛知牧場がある。名神高速道路の東郷パーキングエリアに立つと、すぐ目の前に広々と一面に緑の牧草地が広がり、背後には愛知池の水面がキラキラと輝いて見渡せる。この広大な牧場の一角にこじんまりとした愛知国際病院が建っている。創設以来18年、在宅医療にも力を入れて取り組んで来られた川原院長が、地域の皆さんと一緒に、ホスピスを造りましょうと声を掛けて下さったのだ。呼びかけに応えて参加した[YWCA」「豊田ボランティア協会」などの地域の市民団体と一緒に私たち「あいちホスピス研究会」も参加して、1995年10月「愛知国際病院にホスピスをつくる会」が結成され、設計、ボランティア、広報、募金の各委員会に別れて計画を練り、土地は[YWCA」が所有していた病院東側の隣接地1000坪を譲り受け、2階建て全個室20床とする基本計画で、総額4億8000万円、募金の目標は1億円、毎月1回の全体会議を開いて建設計画を進めることになった。
あれから3年、ホスピス建設の目標が具体化したことで、会の活動にも弾みがつき、春秋2回の定例化したホスピス講演会は既に10回を数え、6回シリーズのボランティア養成講座も3年連続で開催した。医療問題の学習会は30回を超え、毎月開かれる「悲嘆の分かち合い、心の癒しグループ」の集いも3年を経過。全員で取り組んだ建設募金活動も目標の1億円を突破した。幾つかの難問も乗り越え、愛知国際病院のホスピス病棟建設は順調に進んで完成し、今年4月1日、51番目のホスピスとして正式にスタートした。
 「あいちにホスピスを!」の目標はひとまず達成された。が、しかし、会発足以来、事務局に寄せられた患者さんやご家族からの電話や手紙による相談は、様々に深刻な問題を提起していた。「副作用がつらくて抗癌剤を拒否したら、もう治療することは何もないから退院してほしい」と言われて困っている。どこか受け入れてもらえる病院を教えてほしい」とか「名古屋の病院に入院している父親が、痛みを訴えても癌なんだから仕方がないと言われて苦しんでいる。どこか疼痛コントロールができる病院を紹介して欲しい」という電話が、東京で医師をしている息子さんから掛かってきたりした。
 もしあなたやあなたの家族が癌と診断され告知を受けたらどうするか? それもすでに終末期だったら……。患者本人はもとより、寄り添い支えるその家族の不安は計り知れない。だが、現在の医療には家族の心のケアにまで配慮する気配も余裕もない。患者のQOLすら無視されがちである。その証拠にこうした患者・家族へのサポートのための手だてがあまりにも少なすぎる。アメリカでは国立がん研究所が患者のために様々な手引き書を発行し、患者の求めに応じて無料で配布しているし、電話やFAXによる相談に応じている。自ら乳がん患者の苦しい闘病体験の中で、このアメリカの冊子の1つ「一日一日を大切に生きる〜進行がん療養の手引き〜」を入手して勇気づけられ癒された会員の一主婦が、ぜひ多くの方々にも読んでほしいと翻訳を引き受けられたので、会で小冊子を昨年の秋、手作りで発行した。
 新年早々の1月11日、朝日新聞夕刊の論説委員のコラム「窓」に「主婦の訳書」と題してこの小冊子を紹介する記事が掲載された。名古屋市内に夕刊が配達される数時間も前の午後1時頃、会長自宅に置かれた事務局の電話が鳴った。「新聞で読んだ。冊子を送ってほしい」という奈良県の方からの電話だった。喜んでお引き受けして電話を切った。が、切るや否やすぐまた鳴り、この後深夜まで100本以上の電話が切れ目なく鳴り続くことになった。翌日は朝の6時頃からご飯を食べる間もないほど電話は続いた。やむなく3日目には留守番電話に切り替え、申込みは300円分の切手同封の封書でお願いしますというメッセージを流して対応することにし、新聞社にその旨をもう1度掲載してほしいとお願いした。前例のないことだそうだが14日の夕刊に「訳書の反響」の記事が再度掲載された。有り難いことと感謝したが、18日の月曜日、今度は郵便局が小型トラックで段ボール箱いっぱいの封書を配達してきた。一体何通あるのか見当も付かない。手作りで印刷製本していた冊子だが、もはや手作りでは間に合わないと考え、急いで印刷屋さんに頼み、製本が待ちきれず出来上がった分づつ運んで発送した。増刷を繰り返し一ヶ月経って結局8000部を作った。毎日ほぼ300通以上の申込みが続いたのだ。
 封書には切手と共に手紙が添えられ、患者さんご本人から詳しい闘病の経過と不安な心中や悩み、どうしていいかわからないといった家族の迷いや心情が綿々と綴られている。「主治医と心が通じない」「これからどうなるのかの説明がない」心の通う医療を求めている多くの末期がん患者とその家族が、不安と不満を誰かに聞いてもらいたいと望んでいるのだと思われる。こうした患者・家族の精神的ケアや相談に応じる公的で専門的な機関を是非とも設けてほしいと痛感させられた。同時に癌治療に当たられている全国の医師に、この埋もれた患者家族の悲痛な声を是非聞いてほしいと思った。現在の医学ではどうすることも出来ず、終末を迎えた患者さんに対して、残された選択肢をどのように提供するか。できる限り苦痛を緩和し平安な一日一日を過ごすことが出来るようサポートするケアと場所を用意することが望まれている。在宅ホスピス、施設ホスピス、患者さんの希望と選択が最大限尊重され、状況に応じて入退院がいつでも出来るよう協力体制が保証されることが、不安を少しでも取り除く一つの要件だと思う。しかし、ホスピスが幾つ出来ても、利用できる人の数は限られている。結局はすべての病院でホスピス・ケアを目指して頂かなくては、末期患者の尊厳ある平安な日々は実現しない。WHOは、すべてのステージのがん患者と家族に対して、積極的に全人的にQOLを高めるよう行うケアを緩和医療と定義している。がん治療には緩和医療が必須だと思う。
昨年末、一緒にホスピス運動を続けてきたお仲間2人が、ホスピスへ移れないまま病院で亡くなった。長年世話になって来た主治医への遠慮から、最期の場所をホスピスでとかねてから決めていながら言い出せず、移るタイミングを失う人が意外に多い。医師もまた、「私が最期まで診てあげるから」と熱心のあまりか患者の本意を尊重しようとしない人が少なくない。終末に至る間の治療には、医師それぞれに見識を持った治療法があり、患者にとってはどの治療法が自分のこれからのQOLにとって最善なのか、どの医師が自分の希望する治療法を取ってくれるのか、全く情報がない中で手術を含めて様々な苦しい治療を受けて来ている。せめて自分の最期の場所くらいは自分で決めたいと願っても、それすらままならないのでは人間の尊厳という言葉は死語になるだろう。ホスピスはもとより選択肢の1つである。患者の尊厳を大切にするならば、人間らしく人生を終えたいという「最後の希望」は叶えて欲しい。「すべての病院でホスピスケアを!」が会のこれからの目標である。

 
医療の安全に関する研究会 第4回研究大会のお知らせ

大会テーマ「在宅での医療・看護・介護の安全を目指して」
日時  1999年12月11日(土)午前11時から
場所  大阪大学コンベンションセンター(裏面参照)
    吹田市山田丘1番1号
    TEL06−6877−5111(内線7171 センター事務室)
参加費  一般 2,000円  学生 1,000円
    どなたでも自由に参加出来ます。
郵便振替(口座番号00870 7−104540 名義 医療の安全に関する研究会)にて、参加費をお払い込み下さい。追って参加証をお送りします。なお、当日参加も可能です。
 主催  医療の安全に関する研究会
 〒461-0001 名古屋市東区泉1丁目1番35号
         ハイエスト久屋6F センター気付
 TEL 052−951−3931 FAX 052−951−3932

       プログラム
 11:00〜11:05 開会の挨拶  島田康弘理事長(名古屋大学)
 11:05〜12:00 分科会報告  (合同討議)
 13:00〜13:40 特別講演1 的場梁次(大阪大学医学部法医学教室
         『在宅での弧独死―法医学から見た医療の安全』
 13:40〜14:10 特別講演2 阿曽洋子(大阪大学医学部保健学科)
         『在宅看護・介護と安全性』
 14:10〜15:00 特別講演3 二木 立(日本福祉大学社会福祉学部)
         『在宅での医療の安全と経済』
 15:00〜15:10 休憩
 15:10〜17:30 シンポジウム
      テーマ  在宅医療・看護・介護の安全と課題
      司会   村松静子 (在宅看護研究センター)
      問題提起 中村義美 (在宅看護研究センターおおさか)
      シンポジスト
           加藤良夫 (名古屋弁護士会)
            堤  寛   (東海大学)
           串田一樹 (昭和薬科大学)
            福間誠之  (明石市民病院) 
      17:30〜17:35 閉会の挨拶
           池田卓也大会実行委員長(成長会 府中病院)

 
Newsletter発行の予定

第13号   11/15 発行予定 (研究大会特集号)
第14号   2/15 発行予定 (研究大会報告号) 
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