医療の安全に関する研究会
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「医療の安全に関する研究会」ニュース
Newsletter No.10 

巻頭言 第3回研究大会によせて

医療の安全に関する研究会 理事長 島田康弘

今年で本研究会も3回目を数えることになりました。例年12月の第2週目の土曜日に名古屋で開催してまいりましたが、本年は東京に会場を移すことになりました。名古屋で誕生した子供が成人して東京に上京するのを見守るような気持ちで、新たな発展に向けての期待と同時に一抹の不安を持って準備をいたしております。

医療の現場では人と人との関わり、人と機器との関わり、人と薬剤との関わり等の過程で、時に予想を超えた危機的な出来事が発生することがあります。このような状況下で、医療を担当する人たちがどのように行動するべきかはこれまでわが国ではあまり真剣に考えられ教育されてこなかった問題です。しかしこのことは、対応を誤ればただちに患者さんの命に関わる大きな問題です。まさに、3年前に突然発生した阪神大震災の折りに問われた危機管理の問題が、毎日の医療の現場にも当てはまるのです。

このような観点から、第3回研究大会は大会実行委員長、帝京大学市原病院薬剤部長の土屋文人先生のお世話で、「今、医療の安全とは―安全へのアプローチ」という主題で開催することになりました。そして特別講演では前早稲田大学教授の黒田勲先生の「医療におけるリスクマネージメント」の話を伺うことになりました。

これに加えて、例年のように午前中は3つの分科会討論の場を設けます。また午後からは11の分科会の活動状況と総合討論会が催されます。会員の皆様の積極的なご参加をお願い申し上げます。

12月12日の土曜日に、東京でお会いできることを楽しみにいたしております。

 
特別講演 「医療におけるリスクマネージメント
元早稲田大学教 黒田 勲

19世紀後半から20世紀にかけての科学技術の急速な発展は人類に多大な恩恵をもたらし、特に医療面の進歩によって多くの疾病が克服され、生活環境の整備等と共に、高い健康状態を保ち、安全な生活を営めるようになった。しかし、すべての科学技術は多大な恩恵をもたらすとともに常に危険性を潜在していることは、科学技術の歴史の示すところである。

わが国においては度重なる薬害が発生し、医療システムのあり方全般に対する社会的擬念と不信が高まっている。安全科学上、あるシステムがこのように同種事故を再発するのは、そのシステムの基本哲学、構造、運用方式、情報の流れ、サブ・システム間の連携、システム全体を硬直化させている背後阻害要因などのリスク管理システムの不具合が存在することの証左である。

リスク管理とは、対象事象あるいは対象物の持つリスクを軽減させたり、排除させたりするために意思決定者が用いるプロセスである。そのプロセスにおいて、事前にリスクのすべての要素を考慮して、最適行動の方針を明らかにし、かつ選択するための体系的メカニズムを提供する方法である。さらにその対象事象あるいは対象物の有効牲、有害性に関する責任の所在はリスク決定のプロセスに含まれなくてはならない。

リスク管理システムには大別して、「リスクの未然防止」、「リスク発生後の対応〕、「被害者の救済」の3つの側面がある。

リスク管理システムの評価水準は自然科学的であるとと共に、その国の文化、慣習、生活水準等の社会科学的要因も加味されて評価されなければならない。

このような視点から解析を行うと、スモン、クロロキンにおいては、審査規定の不備とともに、開発目的と異なる領域へ、十分な有効牲の確認もなく適応を拡大し、薬剤の販路拡大と生産増加が行われ、医療現場においては大量の、しかも長期にわたる投与が続けられてきた結果発生している。また副作用情報が国内外で発表されているにも関わらず、リスク管理システムには有効に生かされていない。専門医学委員会が対応のため設置されたが、医療現場の知見が生かされず、無効であったり、原因究明に長期間を要している。

 サリドマイドは副作用検定項目の不備が存在したが、短期間の審査により承認され、さらにその適応拡大が図られている。海外、国内での副作用情報があったにも関わらず、緊急措置が取られず、多数の奇形児を発生させた。

抗血友病因子濃縮製剤によるエイズ感染は、既にその危険性が国外で報じられていたにも関わらず、厚生省、専門医学者、製薬会社の、いわゆる癒着と考えられる関連性と、誤れる医学の権威牲のため、対応が歪められ、血友病治療を重視して本製剤の使用が継続された。製薬会社ではリスクを認知しているにも関わらず、在庫一掃のため虚偽の回収終了報告をした後も販売を続けていた。

ソリブジンは、治験中の抗癌剤との併用による死亡事例が注目されず、併用の危険性が軽視され製造承認に至った。また医療現場においては注意事項が看過され、抗癌剤との併用により死亡例を発生させた。

いかなる立派なリスク管理システムを構築しても、それを動かしているのは各セクションの人間であり、そのシステムを患者中心の基本原則に向かって有効に運用しようとする感度と意欲とエネルギーとが必要である。

しかしそのシステム運用の中核である厚生省は、長い期間にわたる官僚システムの因習、厚生省内部における部局間の障壁、職種間の軋轢、製薬会社ー医学界ー医療機関間の相互依存や癒着と外圧、責任所在の曖昧化、自己保身などにより、いつの間にか組織の硬直化、制度疲労を生じ、リスク管理システムの運用が故意あるいは不作為によって、軽視あるいは無視された結果、薬害が発生している。言い換えれば厚生省全体として取り組むべき、国民の健康と安全と福祉のリスク管理システム運用こついての動的対応を欠いたと言わざるを得ない。

一方、過剰な利益追求に陥った医薬品製造会社とそのために忘却された医療倫理、護送船団方式の日本特有の企業体質と規制側との強固な癒着、不具合情報の秘匿などが薬害を繰り返した原因の一つであると言えよう。

さらに薬害発生に最も近い医療現場においては、保険医療システムの硬直化と医療経済との関連牲、それに伴う医療機関の薬剤依存による利潤追求体質、厚生行政への過剰な依存、医学界権威への盲目的追従と無批判な信頼、医師の旧弊としてのパターナリズムと自主思考の低下、医学界の自浄能力の低下、賢い患者育成の不足等が相まって、患者中心の医療の基本倫理の低下が、度重なる薬害の発生を促進したと言えよう。

薬害エイズをきっかけとして、薬害防止のシステムが大きく前進した事について、担当機関の努力を多とするが、そのシステムが恒久的に有効牲を継続し得るためには、厚生省を中心とし、医の基本倫理である患者中心の医療を目的とするリスク管理システムの原点に立ち戻って健康リスクの防止を主体とした医療システム関係者の意識改革、システム運用の活性化、民間活力を生かした新しい医療システム、国際的レベルを念頭においた医療界を挙げての医療安全文化の根本的再構築への早急な努力が必要である。

われわれの「薬害等再発防止システムに関する研究会」は、中立的立場から薬害の構造分析、恒久的再発防止策について検討し、平成9年4月には薬害エイズを中心とし、平成10年7月には従来の薬害を総合的に追究して最終報告を提出した。その報告書には、患者を中心とした医療システムのリスク管理のあり方、そのための厚生省の役割、厳格な医薬品審査制度の実現、医学・医療の世界的水準への進展、患者の自己選択と自己責任原則、医療被害の早期救済等の具体的対策について9項目の提言を行った。

 
分科会討論レジュメ
「医療の質の評価に関する分科会」
担当理事  福間誠之

 医療の質とはアメリカの医療経済学者ドナベディアンによると、医療サービスとリスクおよび効用のバランスで表されるとされている。医療サービスとは検査、薬の処方、処置、手術、看護など個々の医療にまつわる仕事と考え、リスクはそれらを実施する時に伴う危険性で、効用はそれらの結果から得られた利益、効果である。そして、医療の質を評価する方法として「構造」、「過程」、「結果」の3つを挙げている。「構造」は医療サービスの提供に際して投入される資源の量や組織体制を示し、「過程」は、実際の医療提供状況の過程を、「結果」は医療が提供された後の患者の状態(健康快復度など)を示される。

 高柳は社会のニーズとしての質の良い医療とは、効率の良い、リスクの少ない、患者が満足する医療であるとして患者満足度調査を実施して報告している。

医療の質を具体的に評価する場合の問題点を列挙すると次のようになる。

(1)何を評価するか

@病院 A診療科 B医師個人 C診療行為別

(2)目的は何か

@医療の質の維持、向上

Aより良い医療の提供

(3)誰が評価するか(評価者)

  @医療を受ける患者 A管理者 B開設者

  C第三者 D国、自治体

(4)どのように評価するか

@ガイドライン、スタンダード、マニュアルによる

Aアンケート B面接調査 C自己評価

  D結果評価(死亡率、生存率、合併症率、副作用率など) 

(5)結果の利用

@公表 A個人への通知(改善勧告)

  B指定の取り消し

以上のことを踏まえて分科会ではワークショップ形式で、参加者からの意見をまとめて、提言にしたいと考えているので、多数の方々の積極的参加を期待しております。 

ワークショップ「医療の質の評価」

司会 福間誠之・中野夕香里

(目的)

参加者が医療の質とは何であるかを理解し、医療の質の評価に対して何を期待しているかを明らかにする。

(方法)

参加者を小グループ(8〜10人)に分けて、グループ毎に司会者、記録係を決めて、参加者の意見を集約する。できるだけ色々な意見が出るように司会者は配慮する。記録係は意見をまとめて全体会議の時に発表する。

 

(スケジュール)

10:20〜10:50 (PL)    オリエンテーション(福間)

      (解説) 医療の質と医療機能評価 (中野夕香里)

10:50〜11:30 (SG) 患者・家族の求める医療に関する情報

世間の評判と医療の質 医療環境と医療の質

病院機能と医療の質 医療の質の評価と情報公開

11:30〜12:00 (PL) 発表 (グループごとに) 質疑応答

PL:全体会議 SG:グループ討議


 
「安全教育に関する分科会」
「ユニバーサルプレコーション実践マニュアル・新しい感染予防対策」(南江堂)を材料にして、院内感染防止対策を考えましょう。

オーガナイザー 担当理事   堤 寛

「ユニバーサルプレコーション実践マニュアル.新しい感染予防対策」と題した文字通りの実践マニュアル(A4版、2色刷、138ページ、定価3,800円)が7月20日に南江堂から発刊されて、はや3月が過ぎました。おかげさまで、10月1日には一部修正を加えた第2刷が発行されています。計算上は、計4000部が世に出回ったことになり、嬉しい限りです。研究会会員の皆さまでまだご覧になっていない方がいらっしやいましたら、ぜひ一度書店でお目通し下さいませ。10月付けの研究会レターにパンフレットが同封されました。

12月12日(土)に昭和大学(旗の台、東京)で開催される第3回研究大会では、午前中に「安全教育」分科会担当の討論会を開催します。討論対象は、上記「実践マニュアル」の内容とします。マニュアルには、現実に行われていることと解離した内容(こうあるべきだという姿)も含まれております。皆さま、どうぞ批判的にご検討いただき、次期改訂の際の参考にさせていただきたく存じます。

独断と偏見をもって、以下の点を、主なディスカッシヨンの対象としたいと思います。

1)消毒剤の使い方

@ 低リスクである病室の床や壁の消毒は無用(p.13)まさか、消毒剤の噴霧などしてませんよね。(p.69)。

A 「消毒」とは有害徹生物の数を少なくすること。つまり、十分な洗浄は高い消毒効果を有している。(p.53)院内で無用な消毒剤の使い方をしていないだろうか。たとえば、外来や病室で不必要にグルタラール溶液(コストもかかり、人体に有害性が高い)を使用していませんか?有効な中央材料室システムがあれば、一次消毒は無用です(p.61)

B 感染リネン類は熱湯を用いた洗濯をしてますか?原則として消毒剤は無用です(p.68)

C 消毒剤の抗微生物スペクトルや適用対象を正しく理解してますか?(p.56)

D 消毒が先か、洗浄が先か、考えてますか?(p.61)

2)手洗いの実践

@ 「一処理一手洗い」の原則(p.25)と「手荒れの防止」(p.82)の両立は難しい課題です。病室に流しがない場合、速乾性すり込み式手指消毒剤を利用します(p.27)が、その前に流水で手洗いをしてますか?

A 手洗いミスの生じやすい指先、指と指の間、親指の付け根(p.23)を入念に洗ってますか?手首も洗ってますか?

B 石けんと流水による手洗いでよい場合と、消毒剤を用いた手洗いを要する場合を区別してますか?(p.25)

C 手袋を使用すべき場合と、手袋が不要の場合を区別してますか?(p.31)手袋をはずした後、手洗いしてますか?(p.35)

D MRSAは鼻前庭部に定着します。病棟では「首から上を決してさわらない」ことを実践してますか?(p.11,p.90)

3)衣服について

@ 半袖の白衣をつけてますか?(p.38) 

A 医局、談話室、会議室、食堂や院外に出るとき白衣を脱いでますか?(p.38)

B 病室では指輪や腕時計ははずしてますか?ナースウォッチ持ってますか?(p.23)病室で腕時計をつけている医療者は「私はきちんと手洗いしてません」と宣言していると感じてますか?

C ナースキャップまだつけてますか?(p.39)

D プラスチックエプロンは袖なしを使ってますか?(p.38)

E 欧米の病院では隔離室・lCUに入室する際に通常マスクをつけません。「重症の患者にとってマスク以上に大切なのは医療者の笑顔である」が考え方の基本です。(p.81)どう思いますか?

F 排菌性結核症患者のケアに際しては、N95 微粒子用マスクを利用してますか?(p.37)

4)感染性廃棄物の適正処理、針刺し事故防止

@ バイオハザードマーク知ってますか?(p.111)マニフェストシステムを知ってますか?(p.47)

A 感染性廃棄物を正しく分別してますか?(p.46)院外でもゴミ処理に際して針刺し事故が生じうることを意識してますか?(p.46)

B 針捨てボックスを使ってますか?(p.98)

C どうしてもリキャップが必要な場合、片手すくい上げ法や固定式リキャップスタンドを利用してますか?(p.100)

D 不慮の針刺し事故が生じた場合、事故直後の対処法を正しく理解してますか?(p.105)感染リスクの度合いを正しく理解してますか?

5)安全教育の実施

@ 感染経路別に適切な予防策がとれるよう教育がなされてますか?(p.15)

A ユニバーサルプレコーシヨンの考え方を理解してますか?(p.17)

B 手洗いの基本や消毒技法を実習訓練するシステムがありますか?(p.11)

C 院内感染対策チーム(lCT)は機能してますか?リンクナースの必要性を理解してますか?(p.8)

D 医療者が健康であることはよい医療サービスの基本です。定期健康診断をきちんと受けてますか?(p.10)

分科会当日のホットなディスカッションを楽しみにしております。
以下、白衣の着方に対する問題提起です。どうぞご批判ください。

 
「医療用具、ME機器の安全に関する分科会」

オーガナイザー 担当理事 池田卓也

第4回「医療用具,ME機器の安全に関する分科会」報告

平成10年8月22日(土)午後1〜3時    

場 所:名大病院4階大会義室

出席者:池田卓也、大久保憲、北野達也、酒井順哉、寺町教詞、井村睦明、森本洋

 まず、分科会世話人より、簡単な経過報告および、6月13日の理事会で当分科会の酒井順哉氏が新理事に推薦されたことなどの報告に続き、予定の通り討議に移った。

「安全装置付き注射器(針)の評価表をもとにしたアンケート調査について」

NTT東海総合病院外科 大久保 憲 ほか

針刺し事故防止には、使用後の針をリキャップせずに安全な容器に廃棄する事が堆奨されているが、廃棄段階での事故が増えており、安全にリキャップできる安全装置付きの器具の開発が求められている。しかし、使用者にとって便利で安全な器具を開発するためには、試作段階から製品に至るまでの各時点で、評価を受けて改良してゆく必要がある。今回、作成した評価法をもとに、従来から使用されている製品および改良された製品について実施した結果についての報告があった。

I.対象

従来の器材を評価した対象グループは、安全装置付き注射器を全面的に採用して使用している病院の医師44名(配布枚数69枚、回収率63.8%)、および看護婦274名 (同278枚、98.6%)である。

2.結果およぴ考察

安全装置付き翼状針に対する評価は、その安全性において「非常に良い」17.0%、「良い」24.9%、「普通」33.2%などであり、75.1%の者が「普通」以上の良い評価をしていた。同様にシリンジでは「非常に良い」13.9%、「良い」27.4%、「普通」31.5%であり、「普通」以上の評価は72.8%であった。

従来の器材を全面的に廃止して、安全装置付きの器材を導入している病院では、多くの職員に受け入れられている様子が伺える。看護婦の経験年数別に見た集計では、翼状針を例にあげてみると、「普通」以上の良い評価をした者の割合は、経験年数2年末満では78.4%、経験年数20年以上では72.7%とほぼ同様であり、各年代層においても大きな問題もなく受け入れられているようである。日常的に使用している病院では、器材の使用方法にも慣れて、これらの器材を高く評価している事が明らかとなった。   

また、今回作成した調査表によるアンケート結果が、新しい製品の開発に有用であった事例がある。前回の調査で、翼状針に対する評価において「器材の持ちやすさ」が10点満点で3.1点、「血液の逆流の確認ができる」に対しては1.5点であった。この結果を踏まえてメーカーは器材の改良に努力して新しい製品を作り上げた。その新製品に対する評価は「器材の持ちやすさは5.4点、「血液の逆流の確認ができる]は6.2点へと有効な評価を受ける事ができた。新しい製品開発においてもこの調査表が有効に利用できる事が明らかになった。

3.資料

今回作り上げた新しい評価表を使用して、数回にわたる大掛かりな調査を行い、その時に得られた、器具そのものに対する貴重な意見を以下にまとめてみる。

◇安全装置付きの注射器(針)には、初めは不慣れであったが、次第に慣れてきて現在では問題なくなった。

◇慣れれば従来の一般留置針と同様に使用できるようになる。

◇安全装置を作動させた後に針先から血液が滴れる事がある。

◇慣れないと、抜針と同時に安全装置を作動させる事が難しい。

◇他社製品との接合がうまく行かないものがある。

◇装置がかさばるのが欠点である。装置が邪魔になる事がある。

◇安全装置の作動がはっきりと確認できない事がある。

◇どんな安全器材でも使用するものが正しい操作法を守らなければ導入しても何ともならない。

◇使用法が面倒なために、その装置を使わずに誤刺したことがある。それ以後は装置を使うようにしている。

 

調査表に対する意見も以下のごとくに寄せられている。

◇質問の意味が理解しがたい。

◇器材別(翼状針とシリンジを分けて)に質問表を作るべきである。

◇質問の仕方が、返事の項目に合わないものがある。

4.まとめ

現在使用されている安全装置付きの注射器(針)の性能は、比較的良好な評価を受けている事が明らかとなった。しかし、安全装置の使用の意義を良く理解し、使いこなす事が事故防止につながるものと思われる。また、今回作成した調査表は、新しい製品の開発にも有用なものであり、それらの結果を踏まえて改良した製品を開発してゆくメーカーの姿勢は高く評価されるべきであろう。

 
ME機器添付文書ガイド案作成の検討
名城大学 酒井順哉 ほか

第73回日本医科器械学会大会に昨年の第一報に続き「ME機器添付文書のあり方に関する研究」の演題を発表した。その概要は当分科会の研究の目的と経過を紹介し、今回、我々は使用者側が添付文書を読む際に見逃してはならない要点を明確にするとともに、未記載事項に関する製造/輸入業者への安全内容確認の手助けになることを目的に、

「ユーザーによるME機器添付文書の評価ガイド(案)」を策定した。さらに、この評価ガイド(案)の有用性を確認するため、愛知県臨床工学技士会を対象に添付文書の利用現状と記載方法の意織を調査し、47施設79件の回答を得た結果、添付文書の見直しの重要性を再認識するものであった。また酒井らが提案している「ユーザーによるME機器添付文書の評価ガイド(案)」の重みづけについてもほぼ適正な評価基準であることが裏付けられ、さらにME機器の種類によっては、添付文書の記載に特別な内容を加える必要も感じられた。

JIS T lOO5 の制定後すでに15年を経過し、PL法や改正薬事法など医療機器の安全確保への環境の変化に対応するため、「ユーザーによるME機器添付文書の評価ガイド(案)」が、JIS規格改正や、関係業界における添付文書記述要領の討議の材料となることを期待されると報告した。

さらに、この程、厚生省から現在行っている研究の重要性が認められ、平成10年度厚生科学研究「医療用具の添付文書の記載要領に関する研究」(分担研究代表者:酒井順哉)を実施することになった。これに伴って、医療の安全に関する研究会・医療用具・ME機器の分科会のユーザー委員と、医療用具関連18団体を統括する日本医療機器関係団体協議会の製造側委員で構成される研究班を組織し、研究の進め方、対象優先機器、国際的整合性などについて議論を進めている。本研究の成果の一部を、12月12日に開催される医療の安全に関する研究会の分科会討論において報告し討議する予定である。

    
 
第3回研究大会の準備ほか

針刺し事故防止器具」の研究に関してほ、研究担当者が同日名古屋で関連テーマのセミナーを主催するめ、今回はこの分科会報告(及び用意した資料)について参加者の意見を聞くに止める。

「ME機器添付文書ガイド案」の研究は、愛知県臨床工学技士会の調査およぴ厚生科学研究班の経過報告を受けて、よりユーザーの立場に立った討論に時間を取る予定であるが、これまで2回の大会に参加していない東京地区の、ことに関連業界から新参加者の活発な意見を期待する。

 「医療機器の安全Q&A」構想については未だ本格化しないが、かって厚生省に提案された「医療用具110番?」も実現していないようなので、民間ベースのより穏やかな活動をを定着するには、根気よく地道な呼びかけが必要と思われる。今回は「OPEナーシング」11月号に下記のお知らせを掲載したが、さらに他誌への案内や在宅看護ステーションヘのアンケートなども検討する。   (文責、池田卓也)

 
研究大会当日分科会を開催しない他の分科会報告>
「在宅医療・看護の安全に関する分科会」報告
担当理事   村松静子

当分科会では、3月21日の公開討論会でのまとめをもとに「在宅医療・看護に携わる組織の管理・実践機能の標準案の作成」をテーマに、5名の協力者を得て、月1回の割合で検討会を開催してきました。メンバーは、看護学校教員、福祉総合施設の管理者、訪問看護ステーションのスタッフ、病院からの訪問看護のコーディネーター、在宅看護会社のチーフナースと、所属機関はそれぞれ異なりますが、それだけに違った立場からの問題提起があり、活発な意見交換が続いております。

作業手順としては、それぞれの現場でどんなことが起こっているのか実例を出し合う、次にそこに潜んでいる問題を明らかにする、と進めていましたが、この時点で、所属する部署によって看護だけではなく、在宅に関わっている様々な関係者の対応がまちまちであることが改めて浮き彫りになってきました。

これまで検討し整理されてきた事項としては、教育に関すること、実践する側の質の確保、連携に関すること、医療廃棄物や薬剤に関することですが、引き続き幅広く検討していく必要があります。

今後も今年度のテーマである『在宅医療・看護に携わる組織の管理・実践機能の標準案』の作成作業を進めるわけですが、メンバーだけではなく、他分科会の皆様からのアドバイスも頂きながら、検討を進めていきたいと考えておりますので、ご協力の程宜しくお願い致します。

 
「薬剤の安全に関する分科会」報告
担当理事   木村 繁

担当理事の個人的な都合で、今年に入ってから一度も分科会を開けないでいまして恐縮です。その間にも、薬の安全に関係のあるニューズが次々にマスコミに報道されています。

まず、4月15日号のJAMA(米医師会雑誌)には、アメリカにおける薬剤による死亡者は、いろいろなデーターの分析から推定すると、年間では約

106,000人(76,000〜137,000)になるのではないかという記事がでました。私がこの夏に読んだ“Prescriptionfor Disaatre”の著者(Thomas J. Moore)も、同じ様な数字をあげています。数字だけではピンときませんが、ムアーは毎日アメリカの空でジャンボジェット機が一機づつ落ちていることになるという分かり易い説明をしています。人口比率からいうと、日本の空でも二日に一機の民間航空機が落ちていることになります。

5月の中旬には、かねて“Fortune”誌なども効かない日本の薬として取り上げたことのある(1991年7月29日号)アバンに代表される痴呆症治療薬が再評価の結果、許可を取り消され市場から回収されました。これらは副作用や安全性の問題はなかったわけですが、プラシーボと比較して有意差のない薬が、年間何百億も使われてきたということに、薬剤師・医師・厚生省などの関係者は大いに反省しなければいけません。

3番目にマスコミを賑わせた薬の問題として、新薬開発を巡ってのメーカー研究員と、国立大医学部薬理学教授との関係です。薬価基準の圧縮などもあり、メーカーは新薬の開発に躍起になっているさまが、この事件からは読み取れます。

このように、患者への情報提供だけでは解決できない、いろいろな問題を抱えた医薬品業界ですが、薬を飲むか飲まないかの最終決定が下せる患者として、これからの日本の薬がどうあるべきかを十分に検討し、その上で問題解決に向かって発言していかなければいけません。

今後、「薬の安全に関する分科会」で、どのようなテーマを取り上げていったらいいかについての、ご提案をお待ちしています。

 
「麻酔の安全に関する分科会」報告
担当理事     芦澤直文

最近、癌研病院元麻酔科医長の浅山健先生が、「患者はこうして殺される」という本を出版されました。また、本の出版に関連して、週刊文春に『患者は「麻酔」で殺される!』という記事が載っていました。タイトルがいささか衝撃的なので、びっくりしたり、麻酔や手術を受けるのが怖くなってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか?。浅山先生は本研究会の麻酔分科会の会合にも出席して頂いたことがあるベテラン痲酔科医で以前より麻酔の安全性とマンパワーとの関連性などについて研究されている先生です。一般市民の方々の麻酔に対する認識というのは、@麻酔は手術の附属物、A誰がやっても同じ、Bうまくいって当たり前、Cチョット注射すれば何時間でもスヤスヤ寝ている、等々のようで、麻酔科医の仕事の内容や、麻酔の重要性、危険性などが十分に認識されていないようです。本邦においては麻酔科医の絶対数が非常に不足しており、理想的な麻酔医療からは程遠いのが実状です。本分科会では、これまでに、「脊椎麻酔の安全指針」と、患者さんに読んで頂くパンフレット「脊椎麻酔で手術を受ける患者さんへ」を作成・公表し、それなりの成果をあげることができたと思っております。これから先、本分科会では一般市民の方々に、もう少し麻酔という医療行為について知って頂きたく、そのためのパンフレットのようなものを作成したく考えております。未だ他の委員の方々には相談しておりませんが、何かよいアイディア等ありましたら、ご教示下さい。ちょっと図1をご覧下さい。この図は私が書いた麻酔の安全性に関する論文に掲載したものですが、麻酔の安全性(換言すれば危険性)には多くの因子が関与していることがおわかりになって頂けると思います。また、この図で全てを網羅することはできませんが、麻酔だけに限っても、病院中のあらゆる科・部門との協力関係がいかに重要かがご理解頂けますか?安全な医療を実施するためには、結局は各々の施設に於ける「安全な医療を遂行するためのシステムの構築」と「ムード作り」が大切だと思います。

 
「医療廃棄物の安全に関する分科会」報告
担当理事  渡辺 昇

医療廃棄物の安全に関する分科会は、先に発表した「医療廃棄物の安全に関する提言」を、あらゆる機会を通じて訴えるとともに、提言の実現への一環として、今年も「一般公開シンポジウム」を、安全教育に関する分科会と合同で、下記の通り東京で開催することになった。

医療廃棄物の安全に関する分科会と安全教育に関する分科会は、かねてより院内感染防止対策と医療廃棄物の適正処理は、不可分の関係として教育の在り方を中心に検討を重ねて来ましたが、本年度も昨年に引き続き共同で一般公開シンポジウムを開催し、この問題について現場サイドから訴えることにしました。また、医療廃棄物処理法が再度改正されたことや感染症予防法の制定によって、安全の確保は前進するのか、十分検証する必要があるため、シンポジウムの中でも取り上げます。

第3回一般公開シンポジウム

統合的な安全システムの構築

―医療現場・処理現場からの訴え―

日 時 ・ 平成10年11月14日(土)午後1時〜午後4時

会 場 ・慶応大学医学部東校舎2階講堂(東京都新宿区信濃町35)

会 費 ・ 2,000円(テキスト代含む・当日会場で)

参加申し込み ・ 別紙参加申込書に記入のうえ下記宛郵送又はFAXにて

お申し込みください。

申込先  〒111−0053 東京都台東区浅草橋 3−20−12ニュー蔵前ビル

(株) 医療廃棄物研究所

TEL 03−3865−2353   FAX 03−5687−6030

プログラム

1:00 開会挨拶    安全教育に関する分科会 担当理事 堤 寛

(東海大学医学部助教授)

1:15 特別報告      日報・廃棄物新聞 記者 加藤文男

     (医療廃棄物処理の現場を取材して)

1:55 休憩

2:00 シンポジウム   

「統合的な安全システムの構築」ー医療・処理現場からの訴えー

司会・基調講演医療廃棄物の安全に関する分科会  

担当理事 渡辺 昇 (医療廃棄物研究所所長)

演者  住  勝美(兵庫医科大学病院中検科長)

佐藤 比三臣(市川東病院事務長)

鈴木 三好(コスモ理研M社長)

製薬または医療機器メーカー関係者

※都合により一部演者に変更がある場合もあります。

4:00 閉会





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